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エビちゃんに足りないもの

さて、先の記事ではエビちゃんというモデルを紹介した。太陽からの熱を赤外線として宇宙に返す、という、とてもシンプルなモデルだ。でも、赤外線の量から地球の温度を計算してやると、マイナス 18 ℃ぐらいになってしまう。

何がまずかったのか。

エビちゃんを作る時、いろいろ無視したことはあった。地球の軌道が楕円であることとか、地軸が傾いていることとか、昼と夜があることとか、いろいろ、ほんといろいろ。

でも、それをいっぺんにエビちゃんに付け加えても、決して良くならない。ぶくぶくと贅肉がついてしまって、醜いモデルができあがるだけだ。

そこで、エビちゃんをベースに、というより、エビちゃんで考えたことを基に、一つだけ付け加えてモデルを作ろうと思う。

でも、正確に言うと地表の気温を与えるというより、温室効果の説明をするモデルだね、これから作るのは。まあ、見ていてほしい。
先の記事で太陽定数は 1366 W m^{-2} だと説明した。つまり、地球の軌道あたりでは 1 平方メートルあたり 1366 W の熱がやってくる。地球は球形なので、赤道では平米あたり 1366 W の熱がやってくるけど、高緯度ではもっと少なく、地球の裏側、つまり夜の側では 0 となる。平均すると太陽定数の 1/4,つまり、平米あたり 342 Wの熱がやってくる。

このうち三割が宇宙に跳ね返されるので、地球に降り注ぐのは結局平米あたり 238 W。あ、返される割合のことをアルベド、日本語では反射能という。この場合、地球のアルベドは 0.3 ということだ。

一方、地表はこれに応じた熱を出しているとしよう。つまり、赤外線の形で 238 W の熱を宇宙に放っている。

地球が黒体だと思って計算してやると、地球の温度は -18 ℃になる。

おや、エビちゃんと同じだ。まあ当たり前。ちょっと見かけが違うだけで同じ計算をしているのだから。

薄着モデル

ところで、エビちゃんは素っ裸だった。むき出しの地表が宇宙と向き合っていたのだから。今説明したモデルも同様、素っ裸、ヌードモデルだ。

でも、地球には大気がある。

モデルに大気を取り入れてみよう。以降、このモデルを「薄着モデル」と呼ぼう。なぜ薄着なのか、というのは、今後の説明の都合上。

皆さんも知っての通り、大気は低緯度で温度が高く、高緯度で低い。また、地表に近いほど高温で、空に昇るにつれて温度が下がっていく。対流圏ではね。そして、地表と同じように昼には温度が上がって夜には下がる。

でも、そんなことざっくり無視して、大気の温度はいつでもどこでも一定だとする。黙れ、異論は受け付けないぞ。

薄着モデル

そして、太陽からの光、主に可視光線と呼ばれる電磁波なんだけど、雲などに反射されて一部は宇宙に還り、その他は大気をすかすかと通過してくるとする。図を見てほしい。赤い矢印が地表までとどいている。一方で、地球の放つ赤外線は大気が全部吸収してしまうとする。地表から出ている右端の太い矢印が地表の放つ赤外線。大気に注ぎ込まれている。ちょっと乱暴だけど、これは実際の大気とそれなりに近い仮定なんだ。

さらに、大気自身は自分の温度に応じた赤外線を放っているとする。実は、大気は赤外線で輝いているんだ。これについてはこちらのシリーズ記事で延々と述べた。気になる方は参照してほしい。

前にも述べたけど、黒体と同じようにシュテファン=ボルツマン定数と大気自身の温度の 4 乗の赤外線を宇宙と地表に向けてそれぞれ放っているとする。大気から上下に出ている矢印がそれにあたる。まあ、このモデルだと宇宙に放つ赤外線と地球に放つ赤外線の量は同じとなる。

あとは何かな?あ、そうそう、地表も大気も温度が変化しないと考える。だから、それぞれ出すエネルギーと受け取るエネルギーは同じだ。

ということで、薄着モデルは結局次のように書ける。

地表が太陽から受け取るエネルギー = (1-アルベド) * 太陽定数 /4
地表の出すエネルギー = シュテファン=ボルツマン定数 * 地表温度の 4 乗
地表の受け取るエネルギー =  地表の出すエネルギー

大気が受け取るエネルギー = 地表の出すエネルギー
大気が出すエネルギー = 2 * シュテファンボルツマン定数 * 大気温度の 4
大気が出すエネルギー = 大気の受け取るエネルギー

文字で書いたからよくわかんないけど、まあ図を見てちょうだい。

これから地表の温度を計算してやると、30 ℃という答えが出てきた!

暑っっ。地球はとっても暑くなってしまいました。

薄着モデルは良いモデル?

さて、再び言い訳の時間。

素っ裸のエビちゃんでは寒すぎたから、大気という服を一枚着せてあげた薄着モデルを考えた。今度は暑くなってしまった。大気の温室効果を考えると、地球の温度が上がりすぎるというわけ。

地球の温度を出せないこのモデル、役に立たないのか?

やっぱりそんなことはない。ここから読み取るべきは、温室効果が何をしでかすか、ということだ。

太陽からやってきた可視光線を吸収せず、すかすかと通す。一方で地球が放つ赤外線は受け止め、大気自身の温度を上げる。そして、赤外線として熱を出す。宇宙と地球に。

大気があると地球が暖まる、ということが、定性的にわかるわけだ。いろいろと数をくっつけて定量的な議論はしているのだけど、だからといって地球の温度がぴったり出てくるわけではない。つまり、結果は定量的にはあっていない。でも、定性的なことはよくわかる。

30 度という値にそれほど大きな意味はない。大気の温度が一定であるとか地表はすべて赤外線という形で熱を大気に渡しているとか、いろんな仮定が入っているからね。答えが合わないのは残念だけど、過度に悲観することはない。

これは言い訳に聞こえるだろうか?負け惜しみに聞こえるだろうか?

賛成してもらえないかも知れないけど、このモデルは良いモデルだと、僕は思う。理由は、実際の大気に存在するメカニズムをある程度模しているからだ。大気に温室効果があるのは確認されている。つまり、大気は地球が放つ赤外線を一部受け止めてエネルギー源にしていることと、一方で自ら赤外線を放っていることは確かだ。薄着モデルは、その結果何が起きるのかを僕たちに見せてくれる。

ほかにも薄着モデルから教えてもらえることがある。

地球に入ってくる太陽の熱と、大気が宇宙にはき出す熱は等しいということ。それなのに、温室効果が出てくると言うこと。

温室効果は地球から出る熱が CO2 によって遮られたことによって…、という説明がある。この説明を聞いただけだと、なんとなく地球から宇宙に出る熱が減ったことで、つまり、太陽からの熱が宇宙に捨てられている熱より少ないせいで、そしてそのせいで地球が加熱されるせいで、温室効果がもたらされている感じがしないだろうか?

そうではないんだ。宇宙から入ってくる熱と宇宙に出て行く熱が釣り合っていても、大気のせいで地表の温度は上がりうる。熱の出入りに関しては宇宙から見た地球は大気があろうが無かろうが変わらない。地球が太陽から受け取った熱と同じだけ、地球は宇宙に熱を放つ。でも、大気が存在するせいで地球の内部での熱のやりとりが変わって、地表の温度が上がるんだ。これが温室効果の本質。

薄着モデルは、こんなにいろんなことを教えてくれる。

薄着モデルへの批判

このモデルを批判するのは簡単だ。だって、そもそも温度が合わないのだから。

他にも批判があった。一つ紹介しよう。

MANTA さんという方のブログ「海の研究者」のコメント欄の記述だ。「海の研究者」は MANTA さんの研究活動がおもしろくわかりやすく書かれた、大変人気のあるブログ。その他にもいろいろなことが書かれてあり、わかりやすい温暖化の解説もされている。その一環で、この「薄着モデル」とほとんど同じモデルを用いて温室効果の説明をされていた。二つの記事、「地球には温室効果が不可欠だ」「資料:地球の放射平衡の計算式」がそうだ。

問題は、「資料:地球の放射平衡の計算式」についたコメントだ。おおげさのたぐいですと名乗られた方の、2010-03-08 12:21のコメント、および、2010-03-09 10:57のコメントを見てほしい

A=0.28というのは、雲の反射も含めているのだと思います。
雲は水滴径があまり小さいと自然蒸発するため、赤外領域でも白色(といっても長波長側までは無理ですが)
ですから、放射平衡としては地上温度に影響を与えません。

アルベドで雲を含めて、雲を含めて温室効果ガスとするのか
アルベドで雲を含めず、雲を無視するのか、どうすべきか難しい判断ですが、

前者だと気温が上がり水蒸気量が増えるとどんどん温室効果(放射強制力)が増えてしまうので、計算ミスがアチコチ起きそうで怖いですね。



ええと、
>T0は地表の温度(K)である。この式を解くと、T0=256.8K=-16.3℃である。
というように、MANTAさんも温室効果が無ければ-16℃であるかのように誘導されていませんか?
雲の太陽光を反射する効果を入れたアルベドで計算してる以上、-16.3℃という数字を表記する意味は無いと思います。 

この数字のトリックが、一般人に温室効果が過大であるかのように錯覚させる原因を作っていると私は思っています。
温室効果が無ければというなら、雲を排したアルベドで計算すべきです。



他の文章も読んでみると、おおげさのたぐいですさんはどうも懐疑論の方らしい。

そんなおおげさのたぐいですさんにとって、エビちゃんは憎たらしいようだ。マイナス 16.3 度 (エビちゃんの答えと違うけど、それは MANTA さんの計算とちょっとだけ係数とかが違うせい) なんていう低い温度を出したせいだ。

まあ、おっしゃりたいことはわかる。エビちゃんのアルベドを 0 にすると、地球の温度は 8 度くらいになる。-18 度なんかより地球の気温と近い値が得られる。そうすれば、温室効果なんてあまり地球には必要なくて、ということは、温暖化なんてたいしたことないと主張できるからだ。

あれ、よく考えたらおおげさのたぐいですさんの批判は薄着モデルへの批判と言うよりエビちゃんへの批判だな。まあいいや。

MANTA さんは、そして、僕も、アルベドに 0.3 を採用したのは温暖化の脅威を強調したいためではない。地球に近い値を使って、(温暖化ではなく)温室効果とはどのようなものかを説明するためだ。

まあ、大気がない場合、と書いたから誤解されるんだよね。大気がなければそりゃ雲はないはずだから。正確には温室効果がない場合と書けば良かったのかもしれない。

とはいえ、僕は、そしてたぶん MANTA さんも、そこが重要な点だとは考えていない。それよりも説明したいのは温室効果だ。現に地球のアルベドは 0.3 くらい、温室効果がなければ低い温度になるはずだよね、だけど、そんなことにはなっていない、その理由は…、というのが言いたいこと。

それにしても、アルベドとして 0.3 ぐらいの値を採用しない場合、一体どんな値を採用すべきだろうか?たとえばアルベド 0 にしたら、どうなる?一体、それは何のモデルなのか?

僕はアルベド 0 モデルが存在してはならないと主張する気はしない。ただ、そのモデルを立てる人には、それが何を説明するために存在しているのかを、そして、そこから何が読み取れるのかを、しっかりと述べてもらわないと困る。

さて、アルベド 0 モデルから出てきた結果はエビちゃんより地球の気温に近い。ということはそれはエビちゃんより地球のことを忠実に表していることになるのか?

このあたりのことについては、今後僕の考えを述べていくなかで触れてみたい。

ただ、おおげさのたぐいですさんの言うことは、このモデルの範囲を越えた批判であることは強調しておきたい。それはたとえば、このモデルが地球の公転軌道の円からのずれを考慮していないことを非難するのと同じであるわけだ。モデルはいろんなことを無視している。アルベドの変化も、その無視されたことの一つだ。

今回はこれで終わり。次回は薄着モデルにもっと服を着せてみよう。
タグ 記事:モデルとは はてなブックマーク - モデルとは何か (4) 薄着モデル
2010.06.10 Thu l 温暖化論概論 l COM(0) TB(0) | top ▲

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