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前回の記事はこちら

ということで、長らく見て参りました、スベンスマルク説。どうだったでしょうか?

さいごに、スベンスマルク説に対する考え、というか、感想を述べたいと思います。とはいえ、これは現時点の私の知識に基づくもので、将来変わる可能性がありますが。

スベンスマルク説に対する私の気持ち

スベンスマルク説は魅力的。でも、あまり見込みはないと思います。どうしてか。いろいろなことが思いつくのですが、ここでは一つだけ。

スベンスマルク説によると、雲の核になる物質は、硫酸エアロゾル以外にもあるわけです。たとえば、海塩核。海のしぶきが固まってできる核です。そのほかに、土ぼこりなども。
スベンスマルクの言うことが正しいなら、宇宙線が減るとエアロゾルが減ることにはなるでしょう。しかしながら、無くなってしまうわけではありません。

ということは、どういうことか?今、地球では、少しの過飽和状態で水蒸気が凝結します。ほんの 0.5 % くらい過飽和になったら、雲粒が発生するのです。まあ、過飽和になった瞬間に凝結すると思っていい。ですから、

雲のでき方は、エアロゾルにあまりよらず、ほぼ、水蒸気の分布だけで決まっている

のです。

それでは、エアロゾルの量が変わったらどうなるか?一つ考えられるのは、雲粒ができはじめる過飽和度が変化する、ということ。より過飽和度が高くなってから、雲粒ができはじめると言うことです。でも、今まで 0.5 % だったものが、数 10 % とか、数倍になるとは思えません。せいぜい、1, 2 % くらいなものでしょう。

雲がどのようにしてできるか?水蒸気を含んだ空気のかたまりが上昇していきます。上空に行くと気圧が低い。空気のかたまりが膨張してどんどん温度が下がっていく。温度が変化すると、急激に空気中の湿度が、そして、過飽和度が急激に変わっていく。過飽和度が 0.5 % でも 1 % でも、水滴ができはじめるタイミングは大して変わらないでしょう。やはり、

雲のでき方は、エアロゾルにあまりよらず、ほぼ、水蒸気の分布だけで決まっている

としか思えないのです。

宇宙線が弱まって、エアロゾルの数が減少したところで、雲の分布は変わりそうもない。なにせ、水蒸気の分布だけで決まってしまうのですから。もちろん、微妙に変わることはあり得ると思いますし、現にエアロゾルの性質の違いで雲がどう変わるかを研究している人はいるわけですが、でも、気候を変えてしまうほど変わってしまうとは思えません。

だから、硫酸エアロゾルで攻めるなら、もう少し別なことを考えないといけません。たとえば、エアロゾルが変化したせいで雲の性質が変わって太陽の光を反射しにくくなるとか、雨が降りやすくなって雲がきえてしまう、とか。

私は雲や放射の専門家ではありません。私のイメージは素朴すぎ、ナイーブすぎるのかも知れません。でも、言わせてもらいます。スベンスマルク説にはまだまだ足りないところが多い、と。

足りない、なんていうならお前が研究しろ、と言われそうですね…。でも、嫌です。おもしろいとは思いますが、見込みはなさそうなので。

IPCC の言うこと

懐疑論者はよくこのスベンスマルク説を取り上げます。彼らの言うことには、IPCC はスベンスマルク説を故意に無視している。スベンスマルク効果を取り入れると近年の温暖化は太陽活動で説明できるのだけど、それが知れ渡ると CO2 温暖化論者達は都合が悪い。だから無視しているのだ、と。

では、実際、IPCC はどう扱っているのでしょうか?

私、ざっと読んでみました。たとえば 2002 に出版された第三次報告書。第一作業部会報告書の第六章、"Radiative Forcing of Climate Change" (onkimo 適当訳: 放射と気候変動)。384 ページを見てください。約 1 ページを費やして宇宙線と雲について語られています。2007 に出た最新の第四次報告書。第一作業部会報告書の第二章 "Changes in Atmospheric Constituents and in Radiative Forcing" (onkimo 適当訳: 大気組成と放射強制力の変化) 192 ページに "Indirect Effects of Solar Variability" (onkimo 適当訳:太陽活動の間接効果) という項が立ててあって、やはり 1 ページくらい論じてあります。

無視する、なんてことはないのです。そこそこ丁寧に扱ってある。

では、IPCC はなんと言っているのか?たとえば AR4, WG1 の報告書第二章、192 ページの最後に、

Because of the difficulty in tracking the influence of one particular modification brought about by ions through the long chain of complex interacting processes, quantitative estimates of galactic cosmic-ray induced changes in aerosol and cloud formation have not been reached.



てな感じのことが書かれています。訳してみると、

イオンによる効果が最終的に何を引き起こすのかを複雑で長い過程の連鎖の中で追いかけるのはとても難しい。ですから、銀河宇宙線によるエアロゾルの、そして雲の形成の変化を定量的に見積もることができるまでには至っていません。



でしょうか。

つまり、IPCC はわからんと言っているのです。わからんものは予測に組み込みようがない。それが 今のところの結論です。

私は至極妥当な結論だと思います。スベンスマルク説、さらなる研究が待たれますね。

最後に

私がこのシリーズを書き始めようと思ったのは、とある先生 (とっても偉い、そして私の尊敬する先生です) との会話がきっかけでした。先生との会話の中で、スベンスマルク説は間違っている、宇宙線が雲を作ることを霧箱の原理で説明しているけれど、そんなのあり得ない、なぜなら、霧箱で宇宙線が検出されるのは、霧箱の中の空気から注意してエアロゾルを取り除いているからだ、現実の大気はそんなにきれいではない、ということを言われました。

そりゃそうだ、と思って調べることにしました。雲も宇宙線も専門外の私にとっては、なかなか大変な作業でしたが、いろんなことがわかってきました。もっとも驚いたのは、スベンスマルクが現在唱えている説は、霧箱版ではないぞ、ということ。詳しくはこちらの記事をお読みください。

勉強してから改めてウェブの議論を見てみると、スベンスマルク説をしっかりふまえた上で懐疑論を唱えている人は大変少ない。困ったことです。スベンスマルク説がちゃんと説明されていないおかげで、懐疑論者の人たちの頭の中には地球温暖化を否定できる魔法の説として受け入れられているみたい。ただ、どうしてそんな魔法の力を発揮しているのかはわからない。だから、せっかく(真偽はともかくとしてそれなりに)しっかりとした理論に基づいているのに、ふにゃふにゃの説明になってしまいます。一方で、批判する方は、そんなふにゃふにゃの説明しか聞いてないものだから反論もふにゃふにゃに。ふにゃふにゃ、ふにゃふにゃ、まるで入れ歯を入れ忘れた二人のおじいちゃんが論争しているみたいな感じになってしまいます。

スベンスマルク説について議論する人、すくなくとも、スベンスマルク説に基づいて温暖化懐疑論を展開している人は、せめて、スベンスマルクの言うことを理解してからものを言ってほしいものです。もちろん、宇宙線の雲への影響を、スベンスマルクの言うことに、つまり、硫酸エアロゾルを通しての効果に限定する必要はありません。だからといって、実際の大気ではあり得なさそうな霧箱による説明で議論するのはおかしいでしょう。

スベンスマルク説を支持する人、せっかくだからもうすこししっかり勉強してほしいものです。ちゃんと勉強すると意外におもしろいですよ、スベンスマルク説。そして、どれだけ信頼できるかも、わかるはずです。
タグ 記事:みんな大好きスベンスマルク はてなブックマーク - みんな大好きスベンスマルク (12) それでも大好きスベンスマルク
2009.12.18 Fri l 懐疑論(研究者アホアホ系) l COM(8) TB(0) | top ▲

コメント

No title
大作、お疲れ様でした。onkimoさんの熱意には頭が下がります。

>スベンスマルク説について議論する人

耳の痛い話です。私も良く調べたことがありませんでした。
2009.12.19 Sat l 綾波シンジ -. URL l 編集
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009.12.19 Sat l . l 編集
Re: No title
> 大作、お疲れ様でした。onkimoさんの熱意には頭が下がります。

過分なお褒めのお言葉、痛み入ります。

> >スベンスマルク説について議論する人
> 耳の痛い話です。私も良く調べたことがありませんでした。

これね、第一義的にはスベンスマルク説を主張する人が責任もって調べておくべきなのですよ。彼らが自分たちの主張を理解できていないから、私たち懐疑論批判側も困るんですよね…。
2009.12.19 Sat l onkimo -. URL l 編集
Re: No title
秘密コメさま

polar low には興味はありますが、詳しくありません。というより、全く知らないと言うべきか。

それにしても、こんな無駄な長文系おばかブログに興味を持っていただいたそうで、ありがたいものです。どうぞそのお知り合いによろしくお伝えください。
2009.12.19 Sat l onkimo -. URL l 編集
ありがとうございました
大変勉強になりました。
一部の懐疑論では、スベンスマルク説を強固なよりどころと考えているようですね。
こんなページもありました。
http://www.mission-k.net/globalwarming/protest-top.html
スベンスマルク説への批判の批判がのっているのですが、これがまた・・・
お暇なときの時間つぶしにでも閲覧してみてください。
2009.12.21 Mon l Morrison -. URL l 編集
Re: ありがとうございました
Morrison さま

下記のページ、見たことがありました。なんか、えもいわれぬド迫力ページでしたね。

日本語と直訳調の英語で書いてあるところに意味不明な力強さを感じました。また、いろいろな文献を読んでいらっしゃるようで、その情熱もびんびんと伝わってきます。

でも、スベンスマルクが唱えているメカニズムは理解できなかったようです。なんだ、水蒸気に宇宙線がぶつかって雲ができるって。観測の論文を努力して読み込んでいるだけに、残念さ倍増です。

記事でも書きましたが、スベンスマルク説は研究不足。今のところ人類はこの説を否定も肯定もできません。まあ、気候学者はあんまり信じていないのですが、かといって完全に否定することは不可能、だから、IPCC レポートではわからないと放ってあります。ですので、スベンスマルク説は温暖化に効いていない、ということを、あのウェブページの著者さんを納得させるのは無理でしょう。

スベンスマルク説支持者の側が定量的な話をする時が来たら、気候学者は本気になれるのではないでしょうか。宇宙線の変動でどの程度硫酸エアロゾルの生成量が変化するのか、それで雲核の数がどの程度変わるのか、そして、結果として雲のでき方がどのように変わるのか、それが地球の気候変化の何度分を説明するのか。

私はその時までのんびり待ちたいと思います。いえ、永遠にその時はやってこないのかも知れませんが。
2009.12.23 Wed l onkimo -. URL l 編集
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2010.03.02 Tue l . l 編集
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2013.05.01 Wed l . l 編集

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