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CLOUD と SKY

これまでに、述べてきましたスベンスマルクの説、語ってきたのはメカニズム、それと、観測事実だけでした。でも、観測だけじゃ心許ない、実験を通して確かなものにしてやろう、そんな動きがあるのです。

ここで取り上げるは二つの実験、一つはその名も CLOUD (クラウド )です。英語で雲と言う意味の、言葉を冠したこの実験、その舞台は欧州原子核研究機構、通称 CERN (セルン) です。

さらにもう一つの実験、その名は SKY (スカイ)、英語で空のことと思いきや、実はこいつはデンマーク語、なんでも雲のことらしい。その舞台はコペンハーゲン、スベンスマルクのお膝元。

さて、ここではこの二つの実験、ちょっと詳しく見ていきましょう。いえ、ちまたにあふれる言説で、スベンスマルク説が実験的に証明されたと言う人が少なからずいるのです。その人たちがベースにしているのがこれらの実験。実際どんなものなのか?

CLOUD の提案書

こちらをクリックしてください、 CLOUD のプロポーザルが出てきます、大きなファイルなので気をつけて。プロポーザルとは一体何か?日本語に訳すと提案書。CERN に、こんな実験がしたいんですけど、と提出された提案書です。
提案者を見てみましょう。筆頭に書かれている人は重要人物であるわけですが、B. Fastrup という方ですね。Aarhus 大学 (デンマークの地名だと思うのですが、発音の仕方がわからない (;_;)) の、Institute of Physics and Astronomy の方。どのような方か存じません、高エネルギー系の研究者だと思います。スベンスマルクと同郷の、デンマークの方みたいです。名前を追って行きますと、スベンスマルクも出てきます。著者の方々は北欧の方が多く、その他もほとんどがヨーロッパ。

提出先の CERN ですが、ここはヨーロッパにおける素粒子物理学研究の中心。詳しくは Wikipedia の CERN を見てください。CERN は加速器を持っています。これで宇宙線なみの高エネルギー粒子を発生させて、雲を作って実験しよう、それが CLOUD 実験です。

ちなみに、CERN で現在最大の加速器は LHC (Large Hadron Collider)。昨年稼働を始めたのですが、事故によって今現在は停止中。でもそろそろ再開されそうです。未発見のヒッグス粒子がこの加速器で見つかるか?など、まじめな興味も尽きないものの、ちまたで話題になったのは、なんといってもブラックホール!あまりに高いエネルギー、その実験で、瓢箪から駒、ちっちゃなブラックホールができちゃって、それが地球を飲み込むのでは、と一部で騒ぎになりました。

ちなみに CLOUD 実験で使うのは、もっと小さな加速器、その名も陽子シンクロトロンという装置です。人類の将来を調べるための CLOUD 実験、ブラックホールを生み出して、調べるべき将来が無くなった、なんて、そんなことにはなりません。ゆめゆめ心配なさらぬよう。

CLOUD 提案書の中身と実験

さて、取り上げましたるプロポーザル、大変長くなってます。100 ページを超える分量。全体をざっと眺めてみると、最初に要約がありまして、次にこのプロポーザルを出した動機が書いてあり、そして、CLOUD 実験のゴールが示してあります。実験装置の詳細な話が続き、最後には費用や役割分担など、科学的ではないけれど、プロポーザルとしては重要な話が書いてあります。もちろんそのあとには conclusion (結論) や補遺、参考文献などがあるのではありますが。

動機の部分を見てみましょう。書き出しは地球温暖化。人類社会の大問題を、最初に持ってきています。基本的にはスベンスマルク説、宇宙線と雲との話なのですが、それを太陽活動と地球の気候の関係に結びつけ、温暖化問題として論じている。お金のかかる実験計画なので、社会へのインパクトを強調しています。

次に、CLOUD で何が行われるのか、が書いてある。CLOUD の目的として、宇宙線と、エアロゾルや雲粒、雲氷の関係がどのようにつながっているかを解き明かす。原子、分子レベルでのメカニズムを理解し、そして、実際の大気の条件において宇宙線がエアロゾルや雲に与える影響を解明する、と述べてます。そのために、

1. エアロゾルおよび雲の性質のうち、宇宙線に影響されやすいものを突き止める
2. 自然の大気を意識しつつもコントロールされた条件下の実験で、宇宙線の影響を調べる
3. 実験結果からエアロゾルおよび雲のモデルを作る
4. モデルを用いた研究で、宇宙線の変化が実際の雲に与える影響を調べる、

と書かれています。

そのために、具体的にどのような実験をするのか?多くの実験が提案されているので、一部を詳しく見てみましょう。一つは気体からエアロゾルができて、それが成長していく過程を調べる実験です。エアロゾルの生成と成長、空気中のイオンがからんでいるはず。霧箱の中に硫酸をはじめとするエアロゾルの原料気体を放っておきます。すると凝結がおきまして、エアロゾルが発生するのですが、そこに加速器からの宇宙線代わりの陽子のビームを当るのです。陽子ビームのおかげで空気中にイオンができ、それがエアロゾルの成長を助けるはず。雲を作るに必要なのは、大きさがだいたい 100 nm くらい、つまり、 1/10000 mm くらいの大きさのエアロゾル粒子。その大きさに成長するまでに何が必要なのか、空気中に放つガスや水蒸気の濃度、そして、陽子ビームをあてたり当てなかったり、強さをかえたりして、いろいろと調べていくのです。

もう一つの実験では、エアロゾルから雲ができる、その部分に焦点を当てています。大気中にある凝結核、それを模したエアロゾル、霧箱の空気中に放っておきます。その大きさは 50 ~100 nm、硫酸や食塩、硫酸アンモニウムなどのエアロゾル、これらをあらかじめ空気中に放っておきます。そして、霧箱空気中の水蒸気量、これを自然界にみられるような、過飽和度 1 %くらいに設定します。 すると雲粒ができるわけですが、ここに宇宙線代わりの陽子のビームを当ててやる。ビームによってできたイオンが、雲のできるときにどのような働きをするのか?ビームを当てたり当てなかったりして比較すると、水蒸気が凝結するときの宇宙線の役割がわかるに違いありません。

CLOUD とモデル

さて、実験結果が得られても、それだけで気候における宇宙線の働きが、理解できるわけではありません。実験からわかるのは、とある条件の下でおこること。これを実際の自然界に応用するには、モデルが必要になるのです。そもそもモデルとはなんなのか、ということについては、いつか詳しく説明しますが、ここでは、エアロゾルや雲のでき方を、宇宙線の強さや温度、各種のガスの濃度などから導く式、もしくはコンピュータプログラムのことだと思ってください。

CLOUD で行うのは、温暖化理解の基礎となる実験。それを温暖化に結びつけるため、一段一段はしごを上がっていくように、論理を組み立てていきます。それに使われるのがモデルなのです。

いちばん最初のステップは、エアロゾルの成長を導くモデル。エアロゾルの原料となる気体の濃度、大気の温度や湿度、そして、宇宙線が作ったイオンの濃度。これらを与えるとどれだけのエアロゾル凝結核ができて、かつその後どんな風に成長していくか、を計算できるモデルをつくります。このようなモデルには、いろんな仮定や調節するべき変数が、たくさん含まれているのです。実験結果を参照しながら、仮定の妥当性を検討し、変数を調節いたします。

次に、雲のでき方を調べるモデル。かたやエアロゾル、かたや大気の状態 (温度や過飽和度など) を与えてやると、雲粒ができる。どのような大きさの雲粒が、一体どれだけできるか?それを計算できるモデルを作ります。これも実験と照らし合わせ、確かなものにしていきます。

どのような雲粒ができるのか、それががわかれば、今度は雲が気候にどんな影響を与えるかをしらべます。雲粒の大きさによって、太陽からの光 (可視光線) を反射する割合や、地球が放つ赤外線を吸収、再放射する様子が変わります。さらに、雲粒の大きさが変わることによって、雨のでき方が変わってきます。雨は雲を地球に戻す役割を持っている。雲粒の様子が変わって、たとえば小さい粒が増えたら、雨のでき方が遅くなり、雲が消えにくくなり、そのせいで太陽光を反射する割合が増えて、地球を冷やすように働くかも知れません。そのほかにも、雲の変化が大気に与えるいろいろな可能性があるのです。

宇宙線によってどのように地球の気候が変わるのか。それを調べるために、これだけの作業が必要なのです。

お金の話

雲の科学について述べてきたこのプロポーザル、でも、この計画の実現性を調べるために、欠かせないことがあります。それは、いくら予算がかかるのか。下世話な話ではありますが、どんなにすばらしい計画だって、かけられる費用というのは上限が。プロポーザルによりますと、費用はだいたい 2300000 スイスフラン。人件費はふくまれていなくて、そちらはだいたい 2400000 スイスフラン。スイスフランはいま 88 円くらい。とすると、CLOUD には 4 億円くらいの費用がかかるということになるわけです。

これは高いか安いのか?私にもよくわかりません。でも、そんなに高くはないのかな、と思います。もしこれで、地球温暖化が完全に否定されたなら、4 億円は安い支出です。社会への影響を度外視ししても、科学としてのおもしろさを考えたら、このくらいの支出はあり得るか。

一方今後述べますが、スベンスマルク説が気象学に貢献できるかどうかは、かなり疑問があるわけです。私がもしも、気象学のお金をどこに配るかを決める立場にあったなら、スベンスマルク説に 4 億円は払えない。もっとほかに研究すべきことが、気象学にはあるわけですから。

だから、気象学の研究機関ではない CERN が CLOUD にお金を出したことはいいことだと思います。ぜひ、良い結果を出してほしいもの。

とはいえ、CLOUD のこのプロポーザル、採択されるまでには、すったもんだあったよう。このプロポーザル、2000 年に書かれていますが、結果が出始めるのは 2010 年から、と言われています。計画が走り始めるまでにとても長い時間がかかってしまいました。

それを待ちきれない、とスベンスマルクは考えた。それで、SKY という実験をコペンハーゲンで始めます。その話については、次の記事で。
タグ 記事:みんな大好きスベンスマルク はてなブックマーク - みんな大好きスベンスマルク (9) クラウドでスカイ、スベンスマルク(上)
2009.11.08 Sun l 懐疑論(研究者アホアホ系) l COM(0) TB(0) | top ▲

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