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槌田氏の戦争

暑い夏がやってきたのである。まだ梅雨が明けきった気がしないのでそう言ってしまうのは気が早い気もするのだが。

日本の夏は、敗戦の夏でもあって、昭和の初期に行われた大きな戦争に日本がぼろぼろになってやっと負けを認めた日が 8 月 15 日なのであり、終戦記念日と呼ばれるこの日の前後には、日本国民の多くは、その戦争と被害、犠牲者などについて思いいたすことになるのであるが、先祖の霊を迎えるお盆の季節に終戦記念日が重なっており、否が応でも過去に思いをはせるような仕組みになっているのは、何の巡り合わせかと私はいつも不思議に思うのである。

でもこのブログはそんなことはどうでも良くて、戦争は戦争でも槌田さんと気象学会との戦争について考えることにするのであって、そうやって見てみると、両者の争いは、先の大戦、呼び名としては第二次世界大戦や大東亜戦争、十五年戦争といろいろあってそれぞれに思想的背景がぶら下がっているのでまことややこしいのであるが、ここでは太平洋戦争を用いるのであって、それは、槌田氏と気象学会との戦いがある意味日本とアメリカの間で戦われた太平洋戦争に似ているからである。
太平洋戦争はご存じの通りアメリカが日本を完膚無きまでにたたきのめした戦いで、個々の戦闘では日本が健闘したこともないではないが、後世にすむ私の目から見ると到底日本に勝ち目がない戦いではあったのだ。その理由は彼我の圧倒的な力の差であって、その兵力、工業力、科学力、技術力など多岐にわたってアメリカが日本を凌駕し、日本が勝てる可能性があるのは国民の大和魂くらいしかなく、しかしながらそれに頼り切った軍上層部の戦争指導のおかげで日本が進出した領域のそこかしこで徴兵された庶民であるところの兵卒、下士官が筆舌に尽くしがたい悲惨な目にあったのである。

というわけで、戦えば負けることがわかっていた戦争ではあるが、実際、日本の軍や政府でもわかっている人間はわかっていたわけで、それなのになぜか戦う羽目になってしまったのが悲劇の始まりで、とはいえ少なくとも戦争の初期にはいくつかの勝利を収めていたのだからそこでうまく講和に持ち込めればよかったものの、日本側の戦略の拙さからか、はたまたアメリカの側の戦略が数枚上手だったからか、ずるずると戦いは続き、時間がたてば立つほど戦況は絶望的になり、ついにはぼろぼろのずたずたになって日本は敗れたのであった。

太平洋戦争と槌田氏の戦争の類似点

もちろん槌田氏と気象学会との戦いが太平洋戦争をなぞっているわけではないわけだが、見ようによってはいくつかの類似点が見つかるのである。

その最初がその物量差であって、槌田氏はその味方を含めても研究者と仮にでもいえるのはどれだけ条件を甘くして多く見積もっても五人程度か、それに対して気象学会側は、気候学に関して言えば IPCC もバックについているから数千人、1 対 1000 位の違いがあり、これなど太平洋戦争時の日米の差よりも段違いに大きいものである。

もちろん槌田氏は数の違いなど問題ではなく、個々の能力が、つまり、槌田氏の能力が気象学会側の能力を凌駕しているから問題ない、との立場なのであろうが、これなどまるで大和魂のみを頼りに巨大な敵アメリカと戦った日本帝国陸海軍上層部の考え方と対して変わらないのである。

そして槌田氏の武器は紙と鉛筆であろうと推察されるが、気候学は巨大な学問であり、たとえばスーパーコンピュータによるシミュレーションなどが重要な位置を占めており、槌田氏にはそれは手が届かないのであって、シミュレーションなど当てにならん、と無視することにしたとして、次は毎日毎日何ギガバイトといった単位ではき出されてくる観測データの海をいかに泳ぎ切るかであって、まともに処理するのは多数の人員とそしてやはりコンピュータシステムが必要であり、観測データといえば、実際に現場観測を行おうとしても費用がかかりすぎて槌田氏には不可能であって、いくら槌田氏が自然の真実に迫ろうとしてもできることは限られているのであり、この状態で対等に戦おうとするのはまるで竹槍で B29 爆撃機を落とそうとするようなものなのである。

そして、このたび槌田氏は気象学会を訴えたのであるが、私の目にはそれがまるで太平洋戦争の端緒となった真珠湾攻撃に重なって仕方ないのである。その点について述べてみたい。

槌田氏の提訴と真珠湾攻撃

真珠湾攻撃がどのように行われたのかはこのブログを読むような最近の若い者は知らないので、私が知識をたたき込むことにするのであるが、私も最近の若い者なので、基本的に Wikipedia の知識で語るのであった。


1941 年 12 月 8 日払暁、連合艦隊の誇る 6 隻の空母から次々に艦載機が飛び立っていった。目標はハワイ、真珠湾。アメリカ太平洋艦隊の根拠地である。11 月 26 日に択捉島占冠湾を出港して以来、警戒網をかいくぐり、アメリカに気取られることなくハワイの近海に達していた攻撃部隊は、迷うことなく敵を殲滅することに全勢力を注いだ。

その時、真珠湾は眠っていた。いつもの朝を迎えていたのだ。そこへ突然日本軍機が襲いかかった。アメリカの艦船はなすすべもなく、ただ爆弾を全身に浴びるのみであった。戦艦八隻をはじめとする多くの船が沈没などの被害を受け、同時に多数の乗組員が艦と運命を共にした。

日本の完全勝利だった。

そのころ、アメリカでは、駐米大使が米国務長官に最後通牒を手交していた。このとき、真珠湾攻撃開始からすでに一時間が経過していた。本来、攻撃の 30 分前に渡されるはずのものであったが、翻訳などに手間取り、遅れてしまったのである。すなわち、真珠湾攻撃は宣戦布告前の「だまし討ち」となってしまったのだ。

日本は真珠湾攻撃成功の報を受け、その大戦果に沸き返った。しかし、一方のアメリカも、奇襲のショックから早々に立ち直り、長引くヨーロッパ戦線での戦いに発していたそれまでの厭戦気分が一転し、卑劣な Jap に対して一致団結した。戦艦を造る槌音がアメリカ全土に響き渡り、真珠湾での損害を早々に回復、すぐに圧倒的な物量で日本軍を凌駕することになるのである。



以上が真珠湾攻撃のあらましなのであって、詳しくはググるなりなにか本を読むなりして調べてほしい。

私にはこの真珠湾攻撃が槌田氏の気象学会提訴と重なって仕方がないのであって、なぜそう思うのか、この二つの共通点について述べるのである。

まず、作戦が成功したからと言ってどうなることでもないことであって、真珠湾攻撃で戦艦を沈めたのは大戦果ではあったのだが、アメリカはその強大な工業力を持ってその傷をすぐに癒し、日本との戦いに戦艦、空母数十隻をはじめ、何百隻もの戦闘艦を投入して、その後の戦いを圧倒的な優位のもとに勧めたのである。

槌田さんに関しても、もしこの提訴で 1 本の炭素循環に関連して地球温暖化を否定する論文が気象学会の日本語の雑誌「天気」に出たとして、そんなもの研究者はすぐ忘れるのであって、それは世界中の研究者が読む Nature や Science、気候学者が読んでいる Journal of Climate, Journal of Geophysical Researchs、Geophysical Research Letters そのほかのあまたの雑誌に毎年何十本もの地球温暖化説と矛盾することのない炭素循環の論文が掲載され、地球温暖化を支持している論文となると毎年何百本というレベルになるからであり、さらに日本の気象学会や、世界のたとえば American Geophysical Union、European Gophysical Geosciences Union などの大きな学会、世界中のそこかしこでひらかれるワークショップなどで、温暖化を支持する発表が常に繰り返されているのであって、槌田さんがいかに声を張り上げようとも、この物量の違いはいかんともしがたいのである。

次に、気象学会提訴が奇襲であることであって、まともに科学論文を掲載するプロセスで戦えば槌田氏には全く勝ち目がないところ、山本五十六張りに気象学会の、そして、普通の研究者の全く想像もつかないことをやってのけたのであって、これには多くの人が目を見張ったのであるのである。

そしてなにより、奇襲をすることで副作用が発生したことも共通であって、ここは大変重要な点なのである。

真珠湾攻撃の場合、宣戦布告が遅れてしまったことから、アメリカは日本人のことを卑怯な Jap と非難し国内をまとめるのに使ったのだが、戦前の日本人も私たちと同じくアメリカ人と比べて特に卑劣であったわけではないのに、真珠湾のおかげでアメリカにおける日本の評判は地に落ちてしまい、日本の戦いにある種の悪影響を与えたのである。

槌田氏の場合も同じことが起きていて、多くの研究者が槌田氏に冷笑と侮蔑の視線を注いでおり、なぜこのようなことになってしまうのかはいろいろな理由があるのだろうが、私が思うにその一つは科学の論争に科学の外の勢力、しかも国家権力を引きずり込んだことである。

国歌権力が科学の論争に介入した場合は往々にして悲惨なことになるのは、たとえばソ連の生物学におけるルイセンコ事件(Wikipedia のページはこちら)のことを考えるとわかるのであって、たとえ司法であっても国家権力であるには変わりなく、槌田氏が万が一勝訴しようものなら、裁判によって科学の価値が決められる前例となって、日本の科学の未来に大変暗い影を落とすことになるのである。

もちろん、多くの科学者は槌田氏が勝つことはないだろうと予想し、つまり日本の司法を信頼しており、そのためあまり司法の介入のようなことは議論されることはなく、ウェブ上の多くの場所では槌田氏の提訴に対して冷ややかな視線が注がれただけなのだが、その視線の裏には、科学に国家権力を引きずり込んだ槌田氏に対する嫌悪感があると私は思うのだ。

いずれにせよ、今回の奇襲攻撃で槌田氏が大変評判を落としたことは間違いないのであって、槌田氏がいかに気高い人物であっても、科学論争に勝てないために司法を引きずり込んだ卑怯な人物として多くの人の心に残ったのであった。

槌田氏と日本と戦略の欠如

最後にあげる共通点、そして私が思うに最大で最悪の共通点は、戦略の欠如である。

日本は真珠湾攻撃を生かすような戦略を持っていなかったのであって、攻撃自体は大勝利だったのだが、それを生かしてこれをする、という明確な意志がなく、あったのは「アメリカに勝つ」という、戦略というよりも願望のような目標しかなく、なんとなく「これでアメリカが折れてくれるのでは」と期待していただけなのであって、結局この戦果を生かすことなく無条件降伏に追い込まれていくのである。

槌田氏にも、私に見えている限りでは「気象学会に人為起源 CO2 温暖化説が間違いであるということを認めさせる」というとっても遠大な目標があるだけであって、もしかしたら「気象学会が折れてくれるのでは」という期待があるのかも知れないが、しかしながら科学の進歩を判決一個で止められるわけもなく、また後で見るが日本政府の温暖化に対するスタンスが変わるわけでもない。槌田氏が何をしても、先ほども書いたとおり CO2 温暖化説を支持する論文が次から次に量産されるわけであって、目標の達成には、この圧倒的な物量の差をなんとかしないといけないのだが、槌田氏の行動からはその点への対処法がまったく見えてこないわけで、やはり戦略を欠いていると思わざるを得ないのである。

ということで、私には槌田氏の提訴が結果的に無意味な大勝利に終わった真珠湾攻撃に重なって仕方ないのであり、それは主に槌田氏に明確な戦略が見えないところに帰着するのであって、次の記事以降では勝手に私が槌田氏が取るべき戦略を立案し、また、槌田氏に取ってはほしくないのだけど現状を見るとそうなっているように思える戦略について語るのであった。

なお、蛇足だが、槌田氏の提訴が真珠湾攻撃に重ならないところがあって、それは、成功した真珠湾攻撃に対し、槌田氏の勝算がないこと、敗訴するだろう、ということである。槌田氏の弁護士は本当に勝てると考えているのだろうか?弁護士費用目当ての悪徳弁護士でないことを祈るのみである。

まあ、裁判は最後までわからないので、槌田氏が大勝利を収めたばあい、上のパラグラフは撤回する。

8/4 追記: tune さまのコメントを受けて、本文を一部削除しました。コメント、ありがとうございました

タグ 記事:槌田氏の裁判 はてなブックマーク - とほほ、提訴って (8) 槌田氏の提訴と真珠湾攻撃
2009.08.01 Sat l 懐疑論(研究者アホアホ系) l COM(2) TB(0) | top ▲

コメント

槌田氏側の弁護士は悪徳になり得るか
初めまして、普段はROM専ですが蛇足の所が気になったのでコメントします。
 勝算の無い裁判を引き受ける弁護士は悪徳に成りうるかが一番の問題で
勝算の状況で引き受けるか判断する弁護士はいないのではと思います、
筋の悪い(勝目の無い)訴訟を断っていたら商売にならないわけだし、
民事の場合などは弁護士は「代書屋」さん的な事務的な仕事が中心と
なりますので、今回の例だとルーチン作業が少なく、依頼主がああせい
こうせいと言いそうだし、報酬をがっぽりとれる金持ちでもなさそうで
割に合わない可能性の方が高いと思います。
 もし悪徳の可能性があるすれば「絶対勝てますから裁判をしましょう」と弁護士が渋る槌田氏に持ちかけた場合だけに限定されるのでは?。
2009.08.04 Tue l tune EpSWInds. URL l 編集
Re: 槌田氏側の弁護士は悪徳になり得るか
tune さま、はじめまして。

コメントありがとうございました。まったくもっておっしゃるとおりで、
私が悪徳弁護士なら、決して槌田さんには近づかないと思います。
私の思慮が浅かったようです。

当該箇所を消しました。ご指摘、ありがとうございました。
2009.08.04 Tue l onkimo -. URL l 編集

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