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論文の構成について

先の記事では槌田氏論文を改善するためにそのタイトルについて検討してきたのである。

それでは早速論文の内容を改善する方法について考えてみよう。できれば槌田氏論文の pdf ファイルを開いて参照しながら読んでいただきたい。

はじめに論文の構成を考えるのであるが、ここは是非とも普通に、いわゆる IMRD 型、つまり、序論(Introduction)、方法(Method)、結果(Result)、考察(Discussion)、という形にしたいもので、今回の槌田氏論文の内容には、まさにこの IMRD 型がぴったりはまるのである。
(あと、当然要旨が必要だが、面倒くさいからここでは取り上げないことにするのだけれども内容が固まれば他の部分ほど考えることは少ないだろう)

翻るに槌田氏論文の構成は特殊で、[1 はじめに] [2 気温変化率と大気中 CO2 濃度変化率の因果関係] [3 気温と大気中 CO2 濃度変化率の因果関係]となっていて、でよくよく読んでみると 1 と 2 が序論、3 が手法と結果と議論に対応しており、多くの人が引っかかる 2 は実は序論なのであって、それなのに温度の変化率と CO2 の変化率を並べて書いた第 4 図という、どんな査読者でも絶対につっこみを入れたくなるような、それでいて結論にはあまりつながりのない困ったちゃんが、私がこの論文の中心です、みたいにでんと陣取っていて訳がわからないのであって、つっこみどころを多くして査読者を困らせる作戦なのかもしれないがそれでは受理は難しいのだ。

大事な序論

で、IMRD 型の構成で書き直すとして構成要素を一つ一つ見ていくとまず序論となるのだが、私が思うにここが槌田氏論文の最大の問題なのである。いや、まあ、そこかしこに最大級の問題があるのではあるが…。
槌田氏論文で対応するところを探すとすれば先に述べたとおり[1.はじめに]と[2.気温変化率と大気中濃度変化率の因果関係]という節になると思うのだけど、これをそのまま序論に移植するのは無理なのである。Keeling がやったことを述べるまではよい。しかしながらそこから根本順吉氏の著書や河宮氏の「天気」の Q&A などを引用するのは大変まずいのであって、なぜなら根本氏のものも河宮氏のものもそこから引用している内容は両氏のオリジナルの成果でないからであって、本来なら孫引きなどせずに元の論文から直接引くべきなのだ。

それに、ここに書かれているのはあくまで槌田さんの問題意識でとらえた研究史でしかなく、この論文を査読者として読むであろうと考えられるのは炭素循環の研究者であるはずで、本当は彼らが読んで槌田氏論文をこれまでの炭素循環の研究史の中に位置づけられるようにしなければならないのである。ここで研究史というのは世界における研究史であって、さらに近年における動向が重要な要素であって、日本というコップの中での大気中 CO2 起源論争史を前世紀に書かれた論文を中心に引用しながら書いている場合ではないのである。

さて、まともな序論を書くには大量の論文を読まなければならないのである。だが、これは決して無駄にならないのであって、後でも述べるが、槌田氏の最大の欠点は (いっぱいあるのだがあえて言うとそれは) 敵、つまり現在の温暖化論を知らなさすぎることであって、ここで大量の論文を読むことによって、すこしはそれを補えるはずなのであった。

序論のためにどの論文を読むべきかであるかは私は専門家ではないので知らないのだが、 "carbon cycle" とかでググることは言わずもがななのでおいておくとして、まずは IPCC のレポートから入ると良さそうで、膨大な IPCC レポート全部読めとは言わないので少なくとも第一作業部会 (Working Group 1、通常 WG1 と略される)のレポートの第七章 Couplings Between Changes in the Climate System and Biogeochemistry (onkimo適当訳: 気候システムと生物化学システムとの相互作用)は読んでほしいし、あと第九章 Understanding and Attributing Climate Change (onkimo 適当訳: 気候変動を理解と原因の探求)あたりも読んでおくと良いかも知れないのである。

これで 2007 年時点での炭素循環に関するそれなりの情報が得られたことになり、そこから論文を芋づる式にたどっていけば、そんなに恥ずかしくない程度の序論が書けるようになるはずであって、日進月歩の研究分野だからそれでは多少古くさくなるのだけれど、そこは投稿後査読者がある程度指摘してくれるはずだからそれで補完すればもっと良いものができあがるはずだ。

さらに、いまざっと上に書いた IPCC レポートを見てみたが、数年規模の変動についてはあんまり触れられていなかったので、それについての論文を読んでおく必要があって、たとえば「天気」の河宮さんの Q&A に紹介されていた論文を中心に、その論文のレファレンスから他の論文をたどるとか、その論文を引用している論文をグーグルスカラーなど(そのほか、Web of Scienceなどでも)で調べるとかして関連論文を探し、多数読んでおく、くらいの、まともな研究者ならだれでも思いつく程度のアドバイスしかできなくて申し訳ないのである。

たぶん 100 本以上の英語の論文を読まないといけないし、数冊教科書も読む必要がありそうで大変ではあるが、サイエンスに興味があればそれだけ読みこなす頃には論文を読むこと自体が楽しくなってくる、ということは槌田さんもご存じだと思うのである。いや、そうでもないかな?

そして、その論文の中から厳選して序論できちんとこれまでの研究史を説明するのである。

きちんとした序論を書いておけば、査読者に槌田氏に対しての「ああ、この人はちゃんと勉強してきたんだな」という印象が生まれ、それは査読をする際、議論を追っていく過程での安心感につながるわけで、それによって槌田氏論文は誤読されるされる可能性が下がり、不必要な批判を免れやすくなるはずなのだ。

このように書くと、査読者におもねる必要があるのか、という文句が出そうな気がするが、それは違って、決して媚びを売れ、と言うのではない。研究史をきちんとふまえた上での批判なら全く問題なく、うまくやれば逆に、お、この人、できるな、と思わせることが可能なのだ。同じ批判をするにしても、著者の思いこみに基づくグダグダの序論を書いていた場合は、わかってないな、と思われて終わりであり、その後の査読が厳しくなってしまうのだ。

手法、結果、議論

序論の後は、手法、結果であって、今回に関しては図 6 の散布図が大変きれいに描けているのであまり語ることはないのであるが、くれぐれも言いたいのは先ほどもちらっと言ったように図 4 は全く必要が無いのであって、y=2.39x+1.47 を導くのには関係のないこの図を書くのは混乱の元であるし、当然気象学会とのこれまでの論争史を書くのもよろしくなくて、もしそのようなことを書いてしまうと CO2 濃度(CO2 濃度変化率ではなく)の長期変動を消している疑惑(以前の記事を参照)が再燃して、査読者としてはけちをつけたくなってしまうのである。

もう一つ言いたいことは、手法の説明をもっと丁寧にすることで、どうしてそのデータを選んだのか、とか、何のためにこの図を書いたのか、とか、なぜ年増分をとる必要があったのか、とか、どういう理由でデータを除外する期間を決めたのか、みたいなところはきちんと書かなければならない。CO2 濃度変化の年増分を取るのに、「長期の変動を取り除かないため」なんていうのはダメダメなのであって、「~しないため」などという消極的なものではなく「~するため」、たとえば、「大気中の CO2 収支を議論するため」などの積極的な理由が必要なのであり、所詮は言い方の問題ではあるので科学的にはあまり本質的ではないのだが、自分の考えをきちんと伝えるという観点からはとても重要なのであって、槌田氏はこの点をおろそかにしすぎだと思うのである。

あと、言うまでもないことではあるが、結果の節ではできるだけ解釈を語ることを避け淡々と結果について述べるのが望ましい。わざわざこのような注意書きを書いたのは、槌田氏なら結果を述べながら気象学会への恨みつらみまでも盛り込んでしまいそうだからで、そんなことしたら結局何が言いたいのか訳がわからなくなってわやなのである。

論文の最後にくるのは議論であるが、もし CO2 の起源について触れたければここで書けばよく、しかしながら間違っても「CO2 の増加は自然起源である」なんて書き方をしてはダメで、「CO2 の増加が自然起源である可能性があることが示唆された」ぐらいの、かなり弱い書き方ですませるべきなのであって、それはこの論文中での証拠からダイレクトに CO2 の起源について導くのは難しいからである。弱い書き方をしても査読者からチェックが入りそうだが、そこはうまく折り合いをつけて、自然起源であるという示唆程度は残せるように努力したい。

そして、議論の中で CO2 の起源について言及しておくことは重要だが、あまり強調するのはまずくて、それはこの論文の情報からだけでは決められるものではなく、観測など他の情報を援用しないといけないがちょっとそれがむりだからであり、それならば CO2 の起源などよりも y=2.39x+1.47 がいかに重要な式かを、その応用範囲の広さとかこの式を見てはじめてわかることであるとか今まで把握されていた CO2 濃度と温度との相関関係よりもこんなに精密になったとか、とにかくこの式がどれだけすばらしいかをばばーんと説明できれば良いだろう。

また、槌田氏論文では「エルニーニョ」とか「赤道海域などの湧昇海域の問題」とかの言葉で自分の考えを説明しているみたいに見えるが、説明するのは大切であるのでそのこと自体は悪くないのだが、あまりつっこまれないような書き方をすべきで、エルニーニョについて言及するなら「エルニーニョについてちゃんと知っていますよ、ほら、こんなに」ということを文章の中でさりげなく表現しておく必要があって、数年年ぐらいの周期をもつ変動だからエルニーニョだろう、なんてものじゃダメなのである。

また、CO2 に富んだ深海の水があたためられて CO2 を出している、と言いたいように思われるのだが、それを言いたいのなら深いところにある海水がどこでわき上がってきているかもきちんとおさえて話さなければならないのであって、なにせ相手はエルニーニョや海洋の循環について耳にたこができるほど普段から聞かされている気象学者なのであって、こいつわかってないなと思われないように書くのは難しいと思うのである。

なにがしかの説明を加えるのは好ましいのだけど、とにかくぼろが出ないように最大限の注意を払ってほしいのであった。

という感じでざっと槌田氏論文の改善策を考えてきたのであるが、次の記事では論文の中身以外の点について、思うことを述べたい
タグ 記事:槌田氏の裁判 はてなブックマーク - とほほ、提訴って (6) 論文受理のための作戦 (中)
2009.07.22 Wed l 懐疑論(研究者アホアホ系) l COM(0) TB(0) | top ▲

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