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CO2 濃度変化率と温度の変化率

先の記事では槌田氏の論文をざっと見てきたが、このブログでは槌田氏の論文がどういう問題を抱えているのか見ていくのである。

まず最初に、準備運動として本論に関係ない枝葉の部分を取り上げてみよう。

もういちど槌田氏論文の pdf ファイルを開いて記事を読んでいく際に参照してほしいのだ。それで槌田氏論文の図 4 を見てほしいのである。

図 4 は槌田氏の遺恨を表現するために掲載されているだけで論理の流れとはほとんど関係のなく、だから枝葉とここでは言っているのであるが、一方でこれは非常にいやらしい図なのであって、あらためて何がいやらしいかというと、それは大気中 CO2 濃度ではなくその変化率をとることによって長期的な傾向が図上から消されているところなのである。

なぜ長期的傾向が消えるかというとそれは何度も引用しているように海の研究者さんが大変うまく説明されているのだけど、その記事のコメント欄を見ると全然納得できない人が多いようで、そのひとたちは「長期的傾向は取り除かれていない」と声高に主張しているのである。

考えてもらいたいのだが、それでは何のために濃度の変化率をとったのか?

そもそも図 1 にあらわれている長期的な濃度の増加こそが、人為起源 CO2 温暖化原因説支持派が述べている人間活動による増加なのだから、これをダイレクトに否定できるような説明を加えればよいのであるが、それだと温度と CO2 の濃度の間にある数年周期の関係が見えてこないわけで、それなぜかというならば、長期的に CO2 がずるずると上昇しているために数年の周期を持つ変動が埋もれてしまっているからなのである。

図 4 ではくっきりと気温と CO2 濃度のあいだの相関関係があらわれていて、それはCO2 濃度の数年スケールの変動が見やすかったからで、つまり長期的な変動が取り除かれてしまったからなのだが (正確に言うと、長期的な変動を一定値として数年の周期を持つ変動の図上での見え方に影響を及ぼさないように書き直されているから)、その点についてはあえて目をつぶっている人が多いらしい。

なぜこのような明らかなことにを無視する人が多いのかは、とても興味があるところなのである。

<7/8 追加>
だいたい、なぜ微分を取る、という操作をしたのかが問題なのである。先の記事にも書いたが、槌田氏はこの図を書いた理由として、

近藤は長期的傾向を除くことなくこの問題を検討する方法を考えた(近藤 2006, 2008)。


この第 4 図では、気温についても CO2 濃度についても、年変化率をそのまま比較しているから、大気中の CO2 濃度の長期的傾向を取り除くという恣意的操作は入っていない。


としているのである。

"長期的傾向を取り除くことなく"、"恣意的な操作"を入れないため、と、”~をしないため”微分操作を行った、としか書いていないのであって、もしその通りなら図 1 で直接議論すればよいのである。図 4 を何をするために書いたのかということは巧妙に隠されているのであって、そこには陰謀が渦巻いているのであり、誰も気づいてはいけないことなのであった。ふぉっふぉっふぉっ。
<7/8 追加、ここまで>

誤謬

さて、この図に関してはもう一つ言っておきたいことがあり、そちらが本題なのだが、その前に。

ネットをさまよっていると、wikipedia で「誤謬(ごびゅう)」というページを見つけたのである。このページは誤った議論の分類をしていて大変おもしろく、実はこの記事を書いているのは、槌田氏論文の問題点を指摘したいからではあるのだけれど、是非この知識を使いたくなってしまったからでもあるのだ。

槌田氏は図 4 から気温の変化が CO2 変化の原因になっているとしているのである。本文中に、

この図における気温と CO2 濃度の前後関係だけから気温が原因で CO2 濃度は結果であることがわかる

(強調は onkimo による)


などと書いてしまっているのだが、これは、前後即因果の誤謬と呼ばれるものであって、「誤謬」 記事においてそれは

前後即因果の誤謬 (羅:post hoc ergo propter hoc) - A が起きてから B が起きたという事実を捉えて、A が B の原因であると早合点すること。呪術と病気の治癒は因果関係ではなく前後関係である。


のように解説されている。確かにこのグラフからは CO2 濃度の変化は気温の変化が原因で起こっているということが感じ取れるのだが、一方で槌田氏の書くグラフの説明の方は大変まずくて、いくらそのように見えても即断してはだめなのであって、仮にも「論文」と称するものを書いている限り、まちがっても「前後関係だけから」などとおっちょこちょいなことを言ってはならないのである。

と、このような具合で、読んでいくと槌田氏論文は「誤謬」だらけであり、ちょっと論文としてはうかつすぎるのである。槌田氏のお仲間、ちゃんとチェックしてあげようね。

これから槌田氏論文のメインの議論とそこに含まれている誤謬を見ていくのだが、すごく長くなりそうなので次の記事に。
タグ 記事:槌田氏の裁判 はてなブックマーク - とほほ、提訴って (2) 槌田氏論文と誤謬(ごびゅう)
2009.07.06 Mon l 懐疑論(研究者アホアホ系) l COM(9) TB(0) | top ▲

コメント

誤謬(ごびゅう)
当ブログをご紹介いただきまして、ありがとうございます。
誤謬(ごびゅう)というのですね、初めて知りました。
2009.07.08 Wed l MANTA -. URL l 編集
Re: 誤謬(ごびゅう)
MANTA さん、

誤謬と言うらしいです。wikipedia の説明がとてもおもしろかったので、さっそく槌田さんの論文に使ってみました。いくつもあるので、次の記事で指摘してみます。
2009.07.08 Wed l onkimo -. URL l 編集
No title
こんにちは。初めに誤解のないように申し上げますが、私は気象学会の会員であって、槌田氏のシンパでも何でもありません。でも正しいものは正しい、間違いは間違いです。

>考えてもらいたいのだが、それでは何のために濃度の変化率をとったのか?

(1)時系列解析において微分操作を行うことはよくあることで、そのこと自体を問題視する貴殿の姿勢は理解不能。

(2)微分操作をとらない限り、結論である近似式y=2.39x+1.47 は得られない。

(3)グラフとは「振幅」のみを読み取るものではない。当該論文にはわざわざ
>この曲線と基軸との間の面積は、CO2濃度の長期的傾向を示す
という注釈が入っている。

(4)海の某氏の思考実験で、微分操作で長期変動が除かれるのは、y=atという線形関係を与えたから。見え透いたトリックであり、実際には線形ではないので図4でCO2増加率には増加トレンドが残っている。
2009.07.10 Fri l lanccet2 -. URL l 編集
Re: No title
lanccet2  さま

コメントありがとうございます。

> >考えてもらいたいのだが、それでは何のために濃度の変化率をとったのか?
>
> (1)時系列解析において微分操作を行うことはよくあることで、そのこと自体を問題視する貴殿の姿勢は理解不能。

問題視しているのは槌田氏の論文中での説明不足です。

> (2)微分操作をとらない限り、結論である近似式y=2.39x+1.47 は得られない。

これはそうでしょうね。ただ、図 4 はいらないと思います。

> (3)グラフとは「振幅」のみを読み取るものではない。当該論文にはわざわざ
> >この曲線と基軸との間の面積は、CO2濃度の長期的傾向を示す
> という注釈が入っている。

それはそのとおりなんですね。ただ、論文の結論との関係で非常に微妙なことに。

> (4)海の某氏の思考実験で、微分操作で長期変動が除かれるのは、y=atという線形関係を与えたから。見え透いたトリックであり、実際には線形ではないので図4でCO2増加率には増加トレンドが残っている。

MANTA さんが伝えたいことは僕にはよくわかりました。MANTA さんが何か誤解しているとして、そのような誤解を抱く人は私もはじめとても多いです(多分、気象学会の査読者も同じだと思います)。

大事なのはそんな誤解を抱かせることなくどうやって自分の考えていることを論文中で伝えるかだと思います、ってなことをこの一連の記事では書いていく予定です。

(先ほどのコメントに不備があったので消去して再掲載しました)
2009.07.10 Fri l onkimo -. URL l 編集
Re: Re: No title
lanccet2  さま

追記です。

> > (2)微分操作をとらない限り、結論である近似式y=2.39x+1.47 は得られない。
>
> これはそうでしょうね。ただ、図 4 はいらないと思います。

あと、本当はこれはもうちょっとメタな問題をはらんでます。つまり、なぜ「 CO2 増加が自然起源である」ことを示すのにこの近似式を使う必要があるのか、ということです。私なりの解釈を(明示的にではないですが)次の記事に書いています。
2009.07.10 Fri l onkimo -. URL l 編集
No title
推敲を重ねた珠玉のご回答をいただき恐縮です。
ブログは時々楽しませてもらっていました。
上記質問の対象に私も含まれていると考え、書き込みしてみた次第です。ご参考いただけたのであれば幸いです。

*「資源物理学入門」(NHKブックス)はお読みになられてますか。槌田氏がある年齢以上の研究者に一目おかれているのはこの本の影響が大きいです。

例えば国立環境研究所の・・・
http://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/29/04-09_1.html
2009.07.10 Fri l lanccet2 -. URL l 編集
Re: No title
lanccet2 さま

> 推敲を重ねた珠玉のご回答をいただき恐縮です。
> ブログは時々楽しませてもらっていました。
> 上記質問の対象に私も含まれていると考え、書き込みしてみた次第です。ご参考いただけたのであれば幸いです。

コメントありがとうございます。こんなバカブログを読んでいただいていた、とのこと、大切な時間をとらせてしまい、こちらこそ恐縮です。

MANTA さんのところのコメントを見て、たしかに私の質問対象に lanccet2 さんは含まれていました。こちらにコメントが来たのをみて、けっこう大量にアドレナリンを出していたので、いま、そのやり場に困っているところです(^^;)

> *「資源物理学入門」(NHKブックス)はお読みになられてますか。槌田氏がある年齢以上の研究者に一目おかれているのはこの本の影響が大きいです。

私は槌田さんの御著書を一冊だけ読んだことがあって、それが「資源物理学入門」でした。ですので、lanccet2 さんのおっしゃることはよくわかります。私自身は大きな影響を受けた、とは言えませんが、確かに感銘は受けました。また、温暖化研究者にも彼から影響を受けた人はすくなからずいると思います。たとえば、こちら http://www.cml-office.org/archive/?logid=378 のコメント欄で masudako のハンドルでコメントを書いている方。masudako さんは、温暖化関連の優れた論評をウェブ上で多数書かれておられ、また、「温暖化の<発見>とは何か」の翻訳者の一人です。

論文掲載拒否で気象学会を訴えるなど、私の目には、はっきり言って今の槌田さんは老いたピエロにしか見えません。著書などを読んで影響を受けた人に、今の槌田さんはどのように映っているのでしょうか?

私は、槌田さんの取り巻きが悪いのではないかと思っています。無責任に槌田さんを煽ることに終始していて、だれもいさめる人がいない。

槌田さんは、懐疑論勢力を結集できるだけのカリスマのある人のはずです。それなのに…

ということを、今後、いつもの調子でおばか記事に仕立てていきます。もし読まれるとご不快に思われるかも知れませんが、あしからず。
2009.07.10 Fri l onkimo -. URL l 編集
No title
masudakoさんのコメントをご紹介いただきありがとうございます。私は「エントロピー論争」をリアルタイムで体験していないので、masudako氏のように「尊敬」とまではいきませんが、槌田氏は過去に一定の業績を残している方だと思います。

最近の槌田氏は「第10章 天動説の復活」を実践されているのでしょう。裁判とは勝ち負けを争う場ではなく、紛争を解決する場所です。学会が話し合いのテーブルにつかない以上、提訴も致し方ないでしょう。(そもそも槌田氏が気象学会に入会したのは、某学会員から「気象学会で議論しよう」と誘いを受けたからだといいます。とするなら某氏は極めて無責任です)

私は近藤氏・槌田氏が導出した式、

y=2.39x+1.47 (y:CO2の濃度変化率(ppm/year)、x:全球平均気温の偏差(1969~2003))

を高く評価しています。34年間のCO2変動と気温変動の関係が、これほどシンプルな関係で表現できるのは驚きです。もちろんその物理的な解釈には異論はありますが、この式自体は間違いなく正しいので、読者はその意味をよく考えるべきだと思います。(CO2排出規制が、わずかな気温変動で相殺されてしまうなど)

地球科学の場合、物理的な因果関係を完全に説明するようなデータは通常得られないので、論文では「結果」と「解釈」を区別し、解釈の部分では著者の自由な議論が容認されています。その意味で近藤・槌田論文のプレゼンスタイルに特に違和感は覚えません。
2009.07.11 Sat l lanccet2 -. URL l 編集
Re: No title
lanccet2 さま

コメント、ありがとうございました。おっしゃることは理解できます。ただ、私の考えは違いまして…。

その点については、ブログ本体で述べていきたいと思います。すぐに返答できなくて申し訳ありません。
2009.07.11 Sat l onkimo -. URL l 編集

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