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前回の記事では、丸山さんが江守さんから攻撃を受けているところを語って参りました。しかしながら、丸山さんはそれを見事に切り抜けられました。吉村さんを犠牲にすることによって。

丸山さんと江守さんの応酬

さて、今度は丸山さんが攻撃する番でございます。当然やられっぱなしではございません。地球温暖化シミュレーションの欠点を攻撃いたします。

攻撃を語る前に、言葉の紹介をば。以下の論戦で出て参ります、古気候、と申しますのは、遠い過去、地球上に観測ネットワークが整備されておらず、近代的な測器によるデータが使えるようになる前の気候のことを指しております。もとよりいつから古気候でいつから現在気候といったようなはっきりとした区切りなどございませんしが、この議論に関して言いますと、データの観点で区分されるのがいちばんわかりやすいかと思います。

丸山さんはモデルにめがけて批判を叩きつけられました。

「温暖化予測に使われる気候モデルは、古気候データを使ってチュウニングされている。IPCC の古気候の結果では、あのいかがわしい Mann のデータ(Mann については、いつか別なところで詳しくお話ししたく存じます)、つまり、近年の温度上昇が著しいデータを使っているから、温暖化するのは当たり前だ。」

「ちょwww。モデルのチュウニングって。チューニングに古気候のデータなんて使わないし。」

「古気候データとして、今は 5 年ごとの温度変化しか得られていないが、我々は 1 年ごとの温度変化を求めるつもりだ。この古気候データでチュウニングしたらどうだね?」

「ていうか、まじ、古気候データはモデルのチューニングに関係ないから。もうちょっと勉強したらw」

江守さんは取り合いません。残念ながら江守さんのおっしゃるとおりで、気候モデルのチュウニングに古気候データを用いる、というのは丸山さんの誤解なのでございます。ですから、丸山さんの攻撃は厳しさを欠いております。

次は、江守さんの番でございます。江守さんは、丸山さんの古気候データにも疑惑の目を向けました。

先ほども申しましたように、古気候が扱うのは昔の地球、気温を直接測定したデータなどございません。仕方がないので、花粉や年輪の幅、サンゴの成長線などの、代理指標と呼ばれるもので、温度を推定することになります。ただ、個々の代理指標には短所もございまして、なかなか扱いが難しゅうございます。そこで、たとえば IPCC ではいくつもの代理指標を組み合わせて過去の温度変化の再現を試みているのでございます。

丸山さんは、代理指標として屋久杉の中に取り込まれた炭素の同位体比を用いられております。炭素という元素には、普通の原子の他に、一見他の炭素原子と見分けがつかないのですが、ちょっとだけ重い原子、というものが含まれております。これを同位体、と申しますが、その重い同位体の割合を調べることにより、当時の気温を推定するのでございます。

もちろんこの手法にも短所がございまして(詳しくは明日香さんたちがまとめられた「地球温暖化懐疑論へのコメント」の 38, 39 ページをご覧ください。執筆者には江守さんも入っていらっしゃいます)、江守さんがその点を突くのでございます。

「なんで一本の杉だけで古気候を解明しようとするかな?杉に含まれる炭素の同位対比なんて、周りの環境に影響されるかもしれないじゃん。そのほかにも、人間活動の影響とかもあるし、正確じゃないんじゃない?」

「それはだね、一本の木である、ということが重要で、他の木も混ぜると個体差が影響するから、とにかく一本であることが重要なんだ。過去 130 年の観測結果と比べて検証したが、IPCC の温度データとは絶対値はともかく、各地の氷河の消長と一致するから、我々のやり方がベストだ。」

「古気候古気候って、なにそれw。いつから古気候なん?」

「私にとっては昨日からが古気候だ。ところで、君たちがチューニングするとき、どの古気候データを用いてやっているのだね?」

「だからチューニングに古気候データ使わないし。現在の気候データを使って、それを再現できるようにモデルをチューニングしてるから」

「現在の気候?私にとっては昨日までのデータは古気候だ。そして、それは屋久杉の炭素同位体データでわかる。」

「ちょwww。温度計で測ったデータがあるのになんでわざわざ同位体データを使わないといけないのwwwww」

一本の杉で数千年の気候を一年単位で再現する、と、この後も丸山さんは御自身の研究計画を熱く語られ、そのデータで気候モデルをチューニングすべきだと主張されるののですが、江守さんは相手にしません。もっと気候モデルを勉強しろ、などと失礼なことを丸山さんに言い放つのでございます。

ふくらむ丸山さん、そして、終結へ

しかしながら、丸山さんはそんな批判をものともせず、信念をこんこんとお話しになります。衛星データが大事と言うけど、そうやって最近の平均気温の変化をとらえても、誤差が多すぎてお話にならない、もっと時間を長く取り、2000 年、1 万年、数十万年、数億年、そして40 億年を超える地球史を調べれてこそ、何が重要かが見えてくる、君たちの見ている気象の現象は重要だが、それでは気候の原理はわからない、と。

そして、お話は、時間のスケール、空間のスケールともにふくらみ始めます。IPCC の地球の平均気温のデータがおかしいことに気がついて、縄文杉の炭素同位体にたどり着いた、さらに調べていくと、この 2000 年間の宇宙線の照射量、太陽活動、気温の間に見事な相関関係があることがわかり、スベンスマルク説が重要であることがわかった。さらに時間を長くしていくと、もっとも大きな変動、つまり、全球凍結と、スターバーストのつながりに行き着いた、と。

スターバーストとは、銀河で星が大量に生まれることを申します。生まれたものの中には重たい星も数多く含まれ、そのような星はすぐに年老いて、次々に超新星爆発を起こすことでしょう。すると、大量の宇宙線が発生し、それが地球に降り注ぐのです。スベンスマルクの言うことが正しいならば、大量の雲ができることでしょう。それで先カンブリア時代と古生代のあいだに起こった全球凍結(Wikipedia の記事を参照)を説明できる、と丸山さんはおっしゃっているのでございます。

愚考いたしまするに、雲の素になるのは水蒸気でございまして、いくら宇宙線が降り注ごうとも、地球を凍てつかせるくらいに分厚い雲で空を覆うほどの水蒸気があるかどうかが心配ではございますが、それはともかく、スベンスマルクの言うことを拡張すれば丸山さんの言うとおりになるのでございましょう。

丸山さんは、話を、時間にして数億年の地球史に、大きさにして数万光年の銀河系全体に広げられました。100 年程度の、ちっぽけな地球の温度変化を議論する温暖化問題とは、壮大さが違います。先の記事で、ふぐのように話をふくらませた、と書きましたが、丸山さんをそんじょそこらのふぐと比較したわたくしが悪うございました。スケールの点で天と地ほどの開きがございます。

かてて加えて、丸山さんは、御自身の理論で気候と生命を含め天文学からゲノムまで統一的に説明することが可能になったと述べておられます。生物とエントロピーの関係を論じたエルヴィン・シュレディンガーや、脳のことを量子重力理論とからめて考察したロジャー・ペンローズなどの例もございますように、生命、ゲノムと、専門を超えて生物に言い及ばれますのは、偉大な物理学者の証であることは申すまでもございません。

なんと興味深い話でしょう。なんとすばらしい話でしょう。丸山さんの構想は、時空を越えて飛び回り、せせこましい分野の壁を越えて広がっていきます。そのお考えに触れた人間としては、丸山さんに魅了されないわけにはいかないのでございます。

ああ、ああ、それなのに。江守さんは「あとでゆっくり読んでおくからww」と、まったく取り合いません。地球温暖化などという小さなことを研究されておられる江守さん、丸山さんの気宇壮大なお話が理解できなかったに相違ありません。まこと、残念なことでございます。

丸山さんの所信表明演説とも言える壮大な話は、討論の終盤を飾る山場でございました。そのあとを江守さんは引き継ぐのですが、あっけなく丸山さんの持論を却下され、誠に淡々と江守さんご自身の視点で丸山さんとの討論の総括がなされました。そして、「もっと温暖化について勉強してもらわないと困るんだけど www」という趣旨のことが最後に置かれ、この討論は締めくくられたのでございます。お話の壮大さを理解できないというのは恐ろしいことで、最後に江守さんは、丸山さんを情け容赦なく切り捨ててしまわれました。

江守さんと丸山さんの討論の後半は、逐一 e-mail で行われていたようでございます。丸山さんは、たぶん、よりまとまった内容にするための準備だと理解していらっしゃったのでございましょう。しかしながら、江守さんは、「ねえねえ、この e-mail 公開しちゃいましょうよ www」とおっしゃいます。丸山さんの「この話は専門的すぎるから」というためらいを見ても、どこ吹く風、「吉田さん(この e-mail 討論の世話人)に公開するって言ってくださいよ www」と執拗に公開を迫ります。

江守さんよりもずっと年長であらせられる丸山さんは、壮大な理論を理解できない江守さんの憐れさが世間にされるのを案じたのでありましょう、親心を出して「君は今後の日本のホープなので、公開がいやならやめてもらってもかまわないよ」と優しさをお見せになったのですが、江守さんは丸山さんのお気持ちがわからなかった模様、結局、おふたりのやりとりは、丸山さんがばっさりとやられたところまで含めて、白日の下に公開されたのでございました。

まとめ

丸山さんは、雄々しく戦われたと思います。御自身の持論である、入力する古気候データが気候モデルの振る舞いを左右している、という御説を持って、江守さんと堂々と渡り合いました。太陽活動が地球の気候システムを支配している、という説を、攻撃からかばい続けました。スターバーストから全球凍結、はてはゲノムに至るまで、丸山さんの持てる知識を精一杯に披露なさり、江守さんを圧倒しようとなさいました。

しかしながら、この討論会は温暖化がテーマ。丸山さんの繰り出した武器は、少々方向性の違うものでございました。温暖化問題、というのは、この百年ぐらいに地球の温度がどのくらい変わるか、それが人類社会にどのような影響を与えるか、という、非常に卑小な問題なのです。丸山さんのような、雄大な研究者を受け入れるだけの広がりが、温暖化問題には無いのでございます。

たとえば、スターバーストの話でございますが、雄大なお話ではございますし、全球凍結に関わったのかもしれません(私にはいまひとつ信じられないのではございますが)、もちろん、地球の気候に影響を与える可能性もあるでしょう。しかしながら、この 100 年でスターバーストが起きるわけでもなく、いますぐ起きたとしても地球が宇宙線にさらされるのは少なくとも数万年先、地球温暖化へ影響を与えることはあり得ないのでございます。

温暖化問題の討論会でこのようなことをお話になることで、不利になったので苦し紛れに話題を変えた、と邪推される危険を丸山さんは冒していらっしゃいます。やはり、討論に関しては、丸山さんの負け、ということになるのではないでしょうか。もっとも、科学を進歩させるという観点から申しますと、本来、勝ち負けなどどうでもよろしいのでございますが。

壮大な構想をお持ちの丸山さんがこの負けによって温暖化の科学を嫌いになられたのではないかと心配しております。こんな、せせこましい気候学、つまらない温暖化の科学など、いやだ、と思われたのではないか、と。

しかしながら、わたくしは声を大にして申します。気候学は、そして、温暖化の科学は、決してつまらないものではございません、と。

もちろん、銀河のサイズの広がりはありません。また、地球史の中でも、最後の一瞬ともいえる短い時間のせせこましい話でございます。

しかしながら、気候システムの科学は、きちんと勉強してみると、大変豊穣な世界が広がっているのでございます。CO2 により変わる大気の温度と循環、その変化を和らげつつも一方では増幅する海洋、温度変化により新たにわき上がる雲は日傘になるのか毛布になるのか、人間の出すエアロゾルは何を引き起こすのか。

複雑に絡み合った気候システムではありますが、絡まった糸をほぐして紡ぎ直すと、美しい科学の織物が得られます。多分、現在のところ、丸山さんはこの美しさを理解されていらっしゃらない。ですが、もしその一端にでもふれることができれば、きっとスケールが大きいだけが楽しみではないことがわかると思うのでございます。

丸山さんにも、温暖化に関わってほしい、と私は考えているのでございます。その理由はもちろん、以前に申しましたとおり、丸山さんが大変おもしろいネタを提供してくださるからでございます。

ですが、一方で、丸山さんが気候学のおもしろさに目覚めたとき、とてもすばらしい温暖化懐疑論を唱えられるのではないか、と、期待して無くもございません。ご自身の分野ではすばらしい業績を残されてきた方。たのしみにしても罰は当たらないと思うのでございます。

そうして生まれ変わった丸山さんが、また江守さんと討論するのを見てみたいと思います。その時は、多分、温暖化をテーマとする討論で、スターバーストやゲノムの話をするようなとんちんかんなまねはなさらないのではないでしょうか。

丸山さん、どうぞ、また、懐疑論をお聞かせください。

追記:
さきの記事にも書いたように、江守さんと丸山さんのやりとりには若干(なんてものではなく)手が加えてあります。ぜひ、資源・エネルギー学会のホームページにあります元記事をお読みくださいませ。

あと、江守さんはここで書いたようないやらしい書き方、しゃべり方をする方ではありません。私が勝手に書いただけですので、お間違いのなきよう。くれぐれも元記事をご参照くださいませ。

タグ 記事:丸山茂徳さんがんばって
タグ 記事:丸山茂徳さんがんばって はてなブックマーク - 丸山茂徳さん、がんばって!(3)
2009.06.09 Tue l 温暖化懐疑論概論 l COM(4) TB(0) | top ▲

コメント

丸山先生は本当に専門家?
はじめまして、私はアマチュア懐疑派です。
自分のブログに明日香氏の本の批判的な感想を書いたりしています。
でも丸山氏の本の粗雑さには呆れかえります。
私は地球温暖化シミュレーションには懐疑的ですが、江守氏や住氏の仕事には期待しています。
2009.06.13 Sat l おおくぼ -. URL l 編集
Re: 丸山先生は本当に専門家?
おおくぼさん、

こんな過疎ブログの長い記事を読んでいただき、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。

懐疑派とのこと、心をとらえる懐疑論に出会われたのですね。素敵な出会いだったのだと想像します。

さて、丸山さんですが、専門家か否かは、あまり議論しても意味無いと思います。また、本が粗雑、とのことですが、それは、別に丸山さんに限ったことではなく、温暖化にまつわる多くの本で見られることですよね。私自身は、仕方のないことなのかな、と思っています。

私が丸山さんについて思っていることは、だいたい記事の本文に書いたとおりです。個人的には、丸山さんのことはけっこう好きですよ。
2009.06.14 Sun l onkimo -. URL l 編集
意味のない議論
たしかに丸山氏が専門家か、どうかを議論しても意味がないでしょう。
ただ、世間的には専門家ということで、信用する人も多いと思います。

心をとらわれるという点では、丸山氏の本には心をとらわれました。
でも丸山氏の力説する宇宙線の変化と地球の平均気温が相関するという仮説は、全く信じられません。

温暖化に関係なく、私は懐疑的な性格です。
政治などには不信感が強いし、マスコミに対してもそうです。

温暖化の懐疑論としては、山形浩生さんの翻訳している統計学者のロンボルグの本が勉強になりました。
2009.06.14 Sun l おおくぼ -. URL l 編集
Re: 意味のない議論
おおくぼさま、

コメント、ありがとうございました。

> たしかに丸山氏が専門家か、どうかを議論しても意味がないでしょう。
> ただ、世間的には専門家ということで、信用する人も多いと思います。

たしかに。ただ、一方で、そうやって信用してしまった人に、丸山さんが専門家ではない、と言い聞かせても、意味が無いかと。

> 温暖化の懐疑論としては、山形浩生さんの翻訳している統計学者のロンボルグの本が勉強になりました。

そうですか。ロンボルグの言うことを信頼なさっているのですね。
2009.06.14 Sun l onkimo -. URL l 編集

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