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がっかりでした

前の記事は、書評の感想文だったけど、この記事は、「正しく知る地球温暖化」の本の感想文。

で、僕、onkimo の感想ですが、一言で言えば、がっかり。

いえ、実は期待していたんですよ。いろいろなところで見る書評ではほめられていたからね。Amazon の書評を見ると、「大科学者の祖国へのメッセージ」とか、「「アンチ-二酸化炭素犯人説」のバイブル」とか、べた褒めじゃないですか。

先の記事で取り上げた極東ブログの書評でも、褒めてあったしね。

だから、読んでみました。赤祖父さんといえば、先の記事に書いたとおり、高名な科学者。IPCC の温暖化論に対して、鋭い批判がなされているのかな、科学的に新しい刺激があるのかな、と。

でも、そんなことはなかったです。残念。

読んで分かったこと。それは、この本は、気候学と気候学者を上から目線でかる~くけなしている本だと言うこと。

何というか、

「気候学者は、観測データから明らかな温度変化にも気づいてないんじゃないかな。IPCC で温暖化予測なんて騒いで、政治家や官僚に踊らされてしまっとる。まことに情けない。まあ、わしには関係ないがな、ぶわっはっは」

てな感じの、結構力の抜けた本でした。まあ、文体には力入りまくりだったけど。

この本に関しては、もういろいろな人がいろいろな感想を述べてる。特に、前の記事でもあげておいたけど、SGW さんのレビューが、科学的な点で、私の気になったところの主だったところを網羅してくれている。

だから、ここでは、なぜ僕ががっかりしたかか、ということについて話してみよう。全体についてざっと見ていくけど、中心は、赤祖父さんの小氷期論についてだ。

まず、冒頭の、「はしがき」、「序章」から。

赤祖父さんは、自分が気候学者ではないこと、しかしながら、ご自身が所長をしていた国際北極圏研究センター(International Arctic Research Senter, IARC)で気候学者たちの仕事ぶりを見ることができたこと、だから、細分化した分野の研究に身を捧げている気候学者たちと異なり、「気候学研究の全体しか見ることができない」、つまり、広い目で気候研究を見渡せたことを強調している。

だから、「視野の狭い気候学者には見えないことがわしには見えるのじゃ。ふぉっふぉっふぉ」、と主張しているんだけど、でも、これって、実は自分があまりちゃんと調べていない、ということの言い訳なんだよねぇ。

赤祖父さん、実際はあまりやる気がない。気合いの入った言葉遣いのうらに、気候学なんて、別にどうでもいいもんね、という感じがそこはかとなく漂ってくる。

お気楽小氷期論

1 章から 5 章までは、気候システムの、特に、IPCC が無視している、と赤祖父さんが言い張る、気候システムの中の自然変動の紹介。

いろいろ書いてあって、僕が言いたいことは山ほどあるのだけど、SGW さんのレビューに任せるとして、ここでは、小氷期論について話そう。

端的に言うと、赤祖父さんは、

「二十世紀に上昇した地球の平均気温は、0.6 度らしいのう。だが、小氷期からの回復過程、っていう自然変動が、わたしの見立てだと 0.5 度ぐらいだから、二酸化炭素が増えた影響なんて、0.1 度くらいなものだよ。諸君、気にしても、しかたないぞよ!」

と言っているわけだ。でも、0.5 ℃なんて、根拠がないんだよねぇ。

赤祖父さんの温度グラフ


こちらが赤祖父さんの根拠としている図。本にあるのと同じ図を、こちら (大きめの pdf ファイルなので、時間がかかります。注意)から取ってきた。赤い線が温度(の基準年からの差)で、濃い紫色の直線が、赤祖父さんの主張する、小氷期からの回復の平均温度上昇。

なんだか、赤祖父さんが、温度の曲線をぐいっとにらんで、むう、と一息に直線を引いた感じ。「わしの科学者としての直感から、ここだと見た!」で、その直線の傾きから、100 年に 0.5 度が出てくるのですよ。このペースで小氷期から回復しており、実際の温度が上下しているのは別な(自然の)原因による、と。

赤祖父さんの小氷期論の問題点は、小氷期のメカニズムを明らかにしていないこと。

こんなこと書くと、赤祖父さんへ難癖をつけている、と思われるかもしれない。でもね、これって大事なことなんだよ。

だって、メカニズムが分からないと、どのような変動をするか、決められないでしょ。小氷期の時、地球はなぜ今より温度が低かったのか。何が小氷期を終わらせたのか。地球はどのように回復しつつあるのか?こういうことがわかってはじめて、20 世紀の温暖化が、どの程度、小氷期からの回復として説明できるのかがわかる。

逆に言うと、メカニズムに言及しない赤祖父さんの理論は何でも説明できてしまうんですよ。どんな温度上昇でも、小氷期からの回復だ、と言えてしまう。

ところで、小氷期からの"回復"、というのであれば、なにに向かって"回復"していくのか、つまりどこまで温度が上がるのかが気になるところ。

ちなみに、昨今の気温は、この 1000 年でもっとも温度が高い。温度が高かったとされる、つまり、小氷期の前にあった、中世の温暖期よりもさらに温度が高くなっている。IPCC は、この事実を人為起源温暖化論の証拠の一つに使っている。回復、というレベルを超えている、ということなんだよね。

小氷期論を唱えるなら、この点にも反論しておくべきだろう。でも、赤祖父さんはスルー。

実は、赤祖父さんが言っていることって、単に、過去に寒い時期があって、今は温度が高い、というだけなんだ。メカニズムについてふれていない、っていうのはそういうことでもある。小氷期っていうのは、ただのお飾り。

ちょっとそれは赤祖父さんに失礼な物言いではないか、と思う人もいるかもしれない。でも、赤祖父さん自身が別なところで「学者の諸君がわかりやすいかな、と思って、小氷期、と書いてみた。あんまり小氷期という言葉に意味はない」って書いているんだ。

次にあげるのは、IARC の赤祖父さんのページにあったもの。文句を言ってきた人たちに赤祖父さんが答えた文章の中から引用した。

I have been emphasizing the importance of “natural components” during the last few years, but it seems that it is too vague to be getting the attention of many climatologists, GCM scientists, and IPCC scientists. I thought that a more concrete term is needed for this purpose. This is why I used the term “Little Ice Age”. I did not talk about causes of the Little Ice Age, because it is out of my own field.



言っていることはこんな感じか。

「わしはここ数年、「自然起源の温度変化」が大事だと言ってきた。だが、それだけでは、気候学者や気候モデル屋、IPCC の奴らから曖昧だといわれて無視されそうじゃ。だから、なにかしら名前をつける必要があった。それで「小氷期」と言うことにしたのじゃ。わしは小氷期について議論したいわけではないぞ。別に専門家じゃないからな。ほっほっほ。」

お気楽 IPCC 批判

さて、赤祖父さんは、「過去に温度が低かったことを IPCC は無視しておる。こんなに証拠があるではないか。おっほん」と、山のように過去に小氷期があったという研究結果を示している。

まるで、IPCC がわざと証拠を無視しているみたい。

でもね、ちゃんと調べているんだよなー、IPCC は。第四次報告書、第一作業部会のレポートには、「古気候」についてまとめた章 (第 6 章) が含まれていて、そこにはどれだけがんばって古気候について調べたかが書いてあります。

さすがに、赤祖父さんはそのことはご存じ。そのうえで、IPCC の指導層は古気候学者の言うことを無視して結論を出した、と述べている。

だけど、IPCC の古気候の報告書をちゃんと読んでいないと批判されるべきは、赤祖父さんなんだよなぁ。

小氷期を重視するべきだ、と批判するのはいいけど、それなら、IPCC がなぜ重視していないかをちゃんと調べるべきだと思うんだ。「IPCC は、小氷期論を、温度計のデータがなかった頃の話だから不正確である、という理由で、無視しておる、まことにけしからん」ってなことを言っているけど、そんないい加減なことは書いていないんだよね。

IPCC が小氷期についてどのような意見を持っているかは、別記事で書く。簡単に言うと、いろいろなデータを、赤祖父さんが集めたのよりたくさんのデータを調べた結果、中世温暖期、小氷河期は、あることはあるけれど、そんなにくっきりとしているわけではない、という結論だ。一つ一つの古気候データとか、ヨーロッパだけ、日本だけ、とか考えると、温度がかなり低い時期があったように思えるけど、地球全体からいろいろなデータを引っ張ってきて平均してみると、そんなに激しい変化があったわけではないよ、ということ。

この本を通していえることだけど、赤祖父さんの批判って、IPCC の報告書にあんまり対応していない。まあ、結論だけは目を通しているようだ。でも、その結論が導かれた過程について何も知らないのではないか、と思ってしまう。IPCC の報告書、ちゃんと読んでいなさそう。

というより、そもそも、IPCC のことを知ろうとしていないみたい。僕には無関心がありありと感じられます。

まとめ

多くの人にとって、この本は、お得な本に感じられたのだと思う。1 章から 5 章はあたらしい科学知識が満載。6 章以降は IPCC への道徳的批判。温暖化懐疑論本によくあるパターンで、あんまり独創的な論点はないけど、歯切れが良くて、読んでいて気持ちがいい。温暖化をあおるマスコミへの批判も、時流に乗っている。

だから、この本は、大科学者が堕落した IPCC をしかりとばす、痛快な書に読めたと思う。ついでに、マスコミもしかり飛ばしている。政治家、官僚もしかり飛ばしている。気持ちいいね。

でも、僕に感じられたのは、批判対象への誠意の無さ、気候学に対するやる気の無さ、自分の理論にたいする愛情の無さ。激しい文体は、それをカバーしたいがため、に思えた。

だから、この本の感想としては、がっかり、だ。

この本、読むにつれて印象がだんだん変わってきた。だから、ちょっと前記事に書いたことを訂正しておきます。

書評の著者、finalvent さんが感じたとおり、文体を見た限りでは、この本は偽科学の本に思える。でも、僕は、この本は偽科学ではない、と前記事で書いた。その理由として、赤祖父さんが真剣であることをあげた。

でも、本当は逆だ。偽科学の人は、とにかく真剣で本気な人もいる (まあ、詐欺師も混じっていますが)。一方で、赤祖父さんはお気楽。

ま、でも、赤祖父さんの言っていることを偽科学とはおもわない、という意見は変わりませんがね。

せっかくだから、もうちょっとがんばってくれないかな。赤祖父さんは、懐疑論者の中では、一、二を争う研究能力を持っているはず。赤祖父さんがしっかりこの問題に取り組んだら、骨太な懐疑論が出てきそうな気がするんだ。

でも、やる気なんてないんだろうなあ…
はてなブックマーク - 大学者によるお気楽温暖化論批判 -- 「正しく知る地球温暖化」の感想文
2009.05.22 Fri l 読書感想文 l COM(0) TB(0) | top ▲

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