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今日取り上げるのは、「正しく知る地球温暖化」という本の書評です。

いえいえ、「正しく知る地球温暖化」を取り上げるわけではありません。その書評を取り上げるのです。本の方については、次の記事で。

でも、まずは、「正しく知る地球温暖化」について簡単に説明しましょう。この本は、赤祖父俊一さんが書かれました。赤祖父さんとは、世界的に知られた地球物理学者。東北大学を卒業された後アラスカに乗り込み、オーロラの研究ですばらしい仕事をされました。アラスカ大学で教鞭を執られ、その後、アラスカに設立された、国際北極圏研究センター(International Arctic Research Senter, IARC)の初代所長になられました。この IARC という機関は、北極の気候研究の中心となっています。

そんな一流の科学者が書かれた温暖化懐疑論本が、「正しく知る地球温暖化」です。このブログでも、いつか取り上げなくては、と思っていました。だけど、この記事は、本ではなく書評について。

取り上げる書評は、有名ブログ、「極東ブログ」に finalvent さんが書かれたものです。極東ブログとは、こちらのはてなキーワードに書いてあるように、社会派のブログ。ブログ論壇(そんな呼び方でいいのかな?なにぶん不案内なもので)でも有名で、他の有名ブロガー(アルファブロガー?)の方の記事にもよく引用されています。

私も何度も訪問しましたが、さまざまな論点について誠実に議論していて、いろいろと考えるヒントをいただきました。この書評も、いただいた考えるヒントの一つ。

それでは、順に見ていきましょう。

finalvent さんは、まず最初に、「評価の難しい本だ」と書かれています。そして、本の内容の紹介。赤祖父さんは、温暖化は認めているものの、それに対しての人間活動の影響は小さい、と結論づけ、IPCC に反対する。現在の温暖化は、1400 年から 1800 年頃の小氷河期とよばれる寒い時期からの回復であって、そうであるなら、21 世紀に予想される温度上昇は、大したものではない、と。

そして、finalvent さんは問うています。「ブログ文化的にいうなら、この主張はトンデモですか? 偽科学ですか? と。」

なぜ、このような問いかけがなされたのか?

記事中には、赤祖父さんの本からいくつか引用がされてあり、それに対して、「どうだろうか。アインシュタインの相対性理論は間違っているという主張者の文体とそれほど変わっていないのではないだろうか。」とか、「次の文体はおそらく陰謀論のそれと区別できないだろう。」と、感想を述べておられます。引用文を読むと、たしかにその手の怪しい本に出てくる文体にそっくりです。

この怪しい文体は、はたして「偽科学」のサインなのか?

私の答えは、否、です。「トンデモでも、偽科学でもない」と答えたいと思います。

元の本を読みましたが、私としては同意できないものの、トンデモな主張ではありませんでした。それに、真剣な意見に、「偽科学」というレッテルを貼るのは、ちょっといやな気もしますし。

でも、赤祖父さんの本の文体が怪しい、という点には同意します。このような、偽科学本に似た文体になってしまったのは、多分、理由があります。それは、偽科学を唱える人たちが直面しているのと似たような状況に、赤祖父さん自身が置かれているから。つまり、赤祖父さんが、気候学者たちとあまりコミュニケーションをとれていない、ということ。

どうして、そう思うのか。

一つには、赤祖父さんが所長をしていた IARC の気候学者たちが、だれも赤祖父さんの研究に協力していないように見える、ということが理由です。また、赤祖父さんの説が、地球科学系の査読付の論文誌に掲載された、という話も聞いていません。赤祖父さんが書かれた、として引用されている論文は、IARC のホームページのものか、なにかの研究会で発表された要旨ばかりです。たぶん、査読に通らずに落とされているのでしょう。(私の論文の渉猟が足りないだけかもしれませんが)(5/18 追記を参照してください)

とにかく、赤祖父さんの懐疑論は、気候学者たちからあまり相手にされていないのです。

相手にされていない理由は、次の記事に。早く知りたい方は、SGW さんがこちらの記事に赤祖父本の問題点をわかりやすくまとめておられるので、参考にしてください。

相手にされていない怒りが、文体に影響を与えたのでしょう。たとえば、IPCC を新興宗教にたとえて非難をぶつける、といったレトリックは、承認欲求を満たされないことに対する怒りが根にあるのだと思います。この点において、赤祖父さんは、偽科学者と同じです。唱えている論は、偽科学とは言えないのですが、状況だけ見るとそうなのです。

ブログ記事の終わりの方に、finalvent さんは、

本書は私には不思議な本である。そして、私には科学というものがなんであるのかを問い掛けてくる希有な本の一つとして書架に後20年は居座るだろう。私がその時まで生きていると仮定してのことだが。



と書かれています。

たぶん、赤祖父さんの思いが、finalvent さんの何かと共鳴したのでしょう。

私自身は、議論の粗さにちょっとげんなりしました。でも、一般の方には、そんなことなど分からないはず。一流科学者が言っていることだから、信用できる、ととらえるのは自然でしょうし、それに、赤祖父さんは読者に伝わるよう書くことに長けておられる。彼の書く懐疑論は、それなりの説得力を持ちます。

一流科学者の語る信頼できそうな理論と、信頼度を下げるような文体の共存、というのが、finalvent さんの不思議の元になっている。

思えば、温暖化懐疑論の主張者は、相対論批判などの場合とは異なり、一流科学者が多く見られるのが特徴(ただし、気候学者は見あたりませんが)。そして、頻繁に説得力のある理論と怪しい文体の共存が起こっているのがおもしろいところだと思います。なぜ、このような共存が起きるのか。私には思うところがあるので、いつか記事にするつもりです。

finalvent さんの抱いているような不思議な気持ちは、解消する必要はないのではないか、と私は考えています。温暖化なんて、普通の日本人の人生にはあまり大きな位置を占めないはずですから (日本国にとってはかなり重要な問題だと思いますが) 。だから、野次馬的に、論争の行方がどうなるのかをウォッチしていくのが楽しいかと思います。

なんといっても、懐疑論側には多彩なキャラクターがそろっていますからね。IPCC 側がおとなしいのがすこし残念なところではありますが。

20 年後。書架に並んでいた赤祖父さんの本を、finalvent さんが再び繙く日が来るのでしょうか。そのとき、地球はどうなっているのでしょう。温暖化論と懐疑論の行方は?

その時に finalvent さんが再び記事を書かれたら、是非、読んでみたいと思います。もちろん、私がその時まで生きていると仮定してのことですが。


2009/05/18 追記:

赤祖父さんは、最近の温暖化は小氷期からの回復である、という説を、学術誌には投稿していないそうです。赤祖父さんは気候学者ではないので、彼の示しているグラフなどは、過去の本や論文から引っ張ってきただけ (自分の研究ではない、ということかな?)。だから、投稿していない、とのこと。こちら (英文)を参照してください。

とういことで、「たぶん、査読に通らずに落とされているのでしょう。」というのは、私の邪推でした。2007 年 4 月時点の話なので、今では状況が変わっているかも知れませんが…
はてなブックマーク - 「正しく知る地球温暖化」の書評の感想文
2009.05.17 Sun l 読書感想文 l COM(0) TB(0) | top ▲

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