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池田信夫さんの問題提起

去年の夏に起こった古いお話で恐縮ですが、しょせん読む人のあまりいないこの過疎ブログ、時流に乗っていない話題でも、読者の方が、がっかりされるようなことは少ないと、私、onkimo は考えております。いえ、決してそうだと断言するつもりなどありませんが。

本日のお題は、「断言」という言葉についてです。

ことの始まりは、昨年(2008年)7月の日経新聞のコラム。論説委員の塩谷さんが、中外時評という紙面上のコラムに書いた論説だったようです。私は日経サイエンスをよく買っているのですが、塩谷さんはそちらでもコラムを書かれる方。文章の歯切れが良くて、私も同意できる意見が多いのですが、たまに、そこまで言って大丈夫かな、と思うこともあり、ちょっとはらはらしたりします。でも、読む分にはおもしろいのですが。

その塩谷さん、コラムに、「日本の温暖化懐疑論は時代遅れ、もはや IPCC が昨今の地球平均気温の上昇は人間のせいだ、って断言したんだから、シロウトの懐疑論者は呼吸を止めて CO2 出すな、このボケがぁ!!!」ってなことを書きました。

これを、池田信夫さんがこちらの記事で取り上げました。池田さんというお方は経済学者で、大変著名なブロガーでいらっしゃいます。温暖化についても、懐疑論の立場に立った発言が多く、このブログでも、過去に数回取り上げました。大変歯切れの良い記事を書かれており、そこまで言って大丈夫かな、と読者としてはよく思うのですが、案の定、よく、彼の記事は各所で物議を醸しておられます。まあ、読む分には大変おもしろいので、良いのですがね。

その池田さん、ブログの記事に、「IPCC は断言なんてしてねーよ!てめぇ、レポートちゃんと読んでねーだろ。シロウトはどっちだ、このバカが。」

てな感じで噛みついています。

どちらが正しいかですが、どうもウェブ上では池田さんのが正しいと考えている方が多いようですね。普段は、池田さんから「ネットイナゴ」と忌み嫌われることの多い、はてなブックマークのコメントさんたちも、比較的池田さんに好意的。温暖化懐疑論をよく批判される人でも、塩谷さんのコメントは行き過ぎかな、と考えておられる方が多いよう。

IPCC はなんと言ったのか?

さて、あらためて、問題を明確化しておきましょう。池田さんは、塩谷さんの、「断言」という言葉に反応しておられます。IPCC はそんなこと言っていないだろう、と。

池田さんの記事から、IPCC の文章もろとも引用しましょう。

きょうの日経新聞の「中外時評」で、塩谷喜雄という論説委員が「反論まで周回遅れ」と題して、最近の温暖化懐疑論を批判している。彼によれば、IPCCは第4次報告書で人為的温暖化の進行を「断言」したのだそうだ。そんな話は初めて聞いたので、サマリーの原文を読むと、こう書かれている:

Most of the observed increase in global average temperatures since the mid-20th century is very likely due to the observed increase in anthropogenic greenhouse gas concentrations. (p.10、イタリックは原文)

イタリックの部分は気象庁訳でも「温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い」と訳されている。むしろ慎重に「断言」を避けているのだ。したがって塩谷氏のいう「ついに伝家の宝刀を抜いた」とか「石油資本のキャンペーンが失敗した」という類の話はでたらめだ。


たしかに、池田さんのおっしゃるとおり。

たしかに、池田さんの言うとおりなのだけど…

でもね、ちょっと待ってください。

まず、「very likely」と言う言葉。この言葉には、大変深い意味が込められています。それについては、以前、こちらの記事で詳しく私の考えを述べたことがあります。そちらにも書いていますが、池田さんが IPCC から引用した部分には、実は続きがあります。先ほどのところと一緒に引用してみましょう。

Most of the observed increase in global average temperatures since the mid-20th century is very likely due to the observed increase in anthropogenic greenhouse gas concentrations. This is an advance since the TAR’s conclusion that “most of the observed warming over the last 50 years is likely to have been due to the increase in greenhouse gas concentrations”. Discernible human influences now extend to other aspects of climate, including ocean warming, continental-average temperatures, temperature extremes and wind patterns (see Figure SPM.4 and Table SPM.2). {9.4, 9.5}


つまり、

20 世紀の中頃から地球の平均気温が上がってきてるけど、その原因が人間が出した温室効果ガスである、ていうことは、ベリー・ライクリー、つまり、とってもありそうなことだ。前の第 3 次報告書 (文中では TAR とあります。Third Assessment Report の頭文字)の時は、ただ、ライクリー、としか書いていなかったけど、今回はベリーがついたので、ヨロシク。それに、気候の様々な面、たとえば、海が暖まっていることとか、大陸サイズの平均気温の変化とか、極端な気温とか、風のパターンとかに、人間活動の影響は見えるようになっちゃってるんだぜ!

と述べています。

うーん、確かに断言はしていない。very likely としか言っていない。

でも、断言はしていないけども、ねぇ。TAR から FAR (第 4 次報告書のこと。Fourth Assessment Report) AR4 (第 4 次報告書のこと。Fourth Assessment Report) に行く過程で、「very」をつけ、それをわざわざ本文中で念押ししているんです。それに、次の記事ででも説明するかと思いますが、very likely というのは、このような観測からの推定としては、事実上、最高に強い言い回しです。

IPCC の文章には書いていないけど、この very をつけるに当たって、中国が大反対をしました。中国をなだめすかし、押し切ってこの very がついたんです。この辺のことは、以前に書いた記事でふれているのですが、very に軽い意味しか無ければ、だれがそこまで反対するでしょうか?

このようなことを考えると、IPCC が very likely と言うのと、「断言」するのとでは、どう違うのかな?、と思います。

そのほかに、IPCC のレポートの編集に参加した日本人科学者の有志が、レポート発表の直後行った緊急アピールも参考になるでしょう。本文中に、

この気候変化が人為的温室効果ガス排出によるものであることは、科学的に疑う余地がない。


ってかいてあるのだけど、これはどうなのかな?池田さん、この文章を見て、「断言」ではない、と主張するかな?

あ、池田さんなら断言していないと断言しちゃいそうですね…。

まあ、ともかく。このアピールに参加した日本の科学者は、地球温暖化が人間のせいだと、断言しているんですよ。そして、アピールに名を連ねているのは、レポートをまとめる作業の中心にいた人たち。彼らだけが突出した考えを持っているわけでは決してありません。

もちろん、IPCC の内部には、このような very likely という表現に反対、しかも、強烈に反対した人たち(中国とか、一部の科学者とか)もいるわけです。ただ、この very likely は、IPCC 体制側の公式見解、つまり、IPCC の意見であり、very をつけたのは、IPCC の強い意志であるわけです。

だから、very likely を取り上げて、池田さんが、IPCC は「慎重に「断言」を避けた」なんて言っているのは、ある意味本当なのだけど、「断言を避けた」では、IPCC のレポートが持つ本当の意味、読者が塩谷さんの記事を読んで知っておくべきこと、そういったものが伝わらないんだよな、と思ってしまう。

そう、僕は塩谷さんにかなり同情的。読者に分かるように伝える、という点においては、今回の場合、「断言」した、という言葉を使うのがしっくり来る、と考えます。

もちろん、僕の考えに反対の方はたくさんいらっしゃるでしょう。たぶん、問題は、科学者の言うことを一般社会にどう伝えるか、というところにある。鍵は、科学者の公式見解の言葉遣いを日常生活に出てくる言葉遣いにどう翻訳するのか、ということ。

ということで、次回もこの話を続けましょう。

お詫び: 第 4 次評価報告書の略称を FAR と書いておりました。本当は、AR4 が使われています。FAR は第 1 次評価報告書に使われているみたいですね。すみません。

タグ 記事:IPCCと断言
タグ 記事:IPCCと断言 はてなブックマーク - あなたは彼がそう断言できると私が断言したと断言すると私が断言してもよいのか
2009.05.03 Sun l 温暖化懐疑論概論 l COM(2) TB(0) | top ▲

コメント

■【主張】温室ガス中期目標 実現可能な数値にしたい―地球温暖化二酸化炭素説がいつまでも主要な学説であり続けることはあり得ない!!
こんにちは。私は、地球温暖化二酸化炭素説は、間違いだと思っていますし、日本の温室ガス削減目標は、最も低い4%に設定すべきと考えます。なぜなら、日本の省エネ技術はすでに10年くらい前から実質上世界一であり、産業構造など考えると、世界で最もco2削減に貢献しているからです。さらに、地球温暖化二酸化炭素説がいつまでも、主要な学説であり続けることはあり得ないからです。事実、昨年あたりから太陽の黒点活動が停滞しており、この影響で地球寒冷化に向かう可能性もあります。詳細は、是非私のブログをご覧なってください。
2009.05.08 Fri l yutakarlson .BcbyNME. URL l 編集
Re: ■【主張】温室ガス中期目標 実現可能な数値にしたい―地球温暖化二酸化炭素説がいつまでも主要な学説であり続けることはあり得ない!!
yutakarlson様

こんにちは。ブログ、拝見いたしました。
温暖化ガス、温室効果理論に対して揺るぎない信念をお持ちのようで持っておられるようで、すてきだと思いました。どうぞ、がんばってください。
2009.05.08 Fri l onkimo -. URL l 編集

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