上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
はてなブックマーク - スポンサーサイト
--.--.-- -- l スポンサー広告 | top ▲
一連の記事の第一回目はこちら
前回の記事は、こちら


毎度書いている注意書きですが、この記事も厳密性にはあまり注意を払っていません。

さて、飽和論と同じ結果が得られた、とさんざん語ってきたけど、実は、ある大切なことを無視して議論してきた。そのせいで、間違った結果が得られていたのだ。

無視してきたこと。それは、大気は下の方は暖かく、上に行くに従って温度が低い、ということ。

実験について思い出してみよう。前々回の記事に戻ってもらいたい。

あの実験では、装置の中に満たした気体は、同じ温度である、としていた。だから、d を増やすと赤外線の強さが、最初は d に比例し、長さ d0 を越えると、黒体輻射の式(もしくはプランクの式)で与えられる、温度と波長だけで決まる値のあたりで頭打ちになる、という結果が得られた。

同じ温度なので、温室効果気体は、どの場所をとっても同じだけの赤外線を放射していたのだ。

だけど、大気の場合は違う。

温室効果気体は、温度が高いほど多くの赤外線を放つ。つまり、標高の低い場所にある大気ほど、強くの赤外線を放っている。

このことが、温室効果にどう影響するのか?

前の記事で導入した、目安の高さ H。おおざっぱに言うと、地表からは H よりも下の温室効果ガスの輝きが見える。

この H は、温室効果ガスを増やすと、小さくなる。つまり、地表からは、低いところしか見えなくなる。

目安の高さ H と温室効果

図を見てほしい。

大気は、地表から上空に向かうにつれ、温度が下がっていく。図では色で表した。

そのほかに、H を記入してみた。温暖化ガスを増やす前の H を H1, 温室効果ガスを増やして、小さくなった H を H2 とする。

地表から観測される赤外線は、H 以下にある温室効果ガスが発する赤外線を足しあわせた物になる。この足しあわせた後の赤外線の強さは、ある温度の物体 (正確には「黒体」) が放っている強さと同じになる。この温度を「見かけの温度」と呼ぶことにしよう。見かけの温度は、H より下にある温室効果ガスの温度の、ある種の'平均'となっている。

地表から H1 までの気体と、H2 までの気体、平均したときの温度が高いのは、つまり、「見かけの温度」が高いのは、当然 H2 までの場合だ。H1 の方は、より冷たい上空の空気まで含んでしまうため、温度が低い。

だから、温室効果ガスが増えることによって、大気の「見かけの温度」があがることになる。つまり、大気からの赤外線が増えることになる。そう、温室効果が強くなった、ということだ。

○赤外線を感じる眼

一連の記事の最初の方に、赤外線を感じられる眼について書いた。どんな眼だったか、復習のためにざっと説明しよう。

その眼は、サーモグラフィーに似ている。サーモグラフィーは、赤外線の強さから、物体の温度を測る機械。

ただ、サーモグラフィーは対象となる物体の温度を測りたいため、空気が放射する赤外線を拾っては困る。そこで、大気の窓の波長にある赤外線を使って温度を測ろうとしている。

温室効果をとらえるため、赤外線の眼は、地球の表面温度程度の物体が放つ赤外線のスペクトルにあわせた感度を持っている。大気の窓の波長にある赤外線も、それ以外の場所の赤外線も感じることができる。

この目を使って、温室効果気体が増えたらどうなるか、考えてみよう。

まず、外に出よう。場所は原っぱ。広い原っぱで、遠くに山並みが見える。

季節は、以前、放射冷却を述べたところで扱った冬でもいいし、夏でもいいことにしよう。ただし、太陽が出ていては話がややこしくなるので、夜について考えよう。面倒くさいから月とか星とかは考えない。雲もやっかいだから、快晴の日だということにする。

この条件で、赤外線の眼で周りを見回すと、どう見えるか?

まず、地面。これは、地面の温度に対応した赤外線で輝いている。

地平線の方向を見てみると、「大気の窓」以外の波長では、大気は輝いて見える。地球の大きさに比べて薄い大気層を、横の方向に見ているので、その視線の上にある温室効果ガスは十分に多い。そのうえ、その温室効果ガス全体が同じ温度であるため、眼に届く赤外線は、ほとんど黒体輻射の式で表される、強さの上限値あたりのはずだ。一方、「大気の窓」にある波長では、赤外線はほとんど放たれていない。

そのため、窓内の波長、窓外の波長両方を感じられる眼には、大気は、両方の波長を放っている地面に比べて、弱く輝きが感じられるはずだ。

真上の方向、正確に言うと、天頂の方向を見てみる。大気層が一番薄くなるように見ているため、見えている温室効果ガスは地平線の方向を見ている場合に比べて少ない。それでも、大気の窓以外では十分な量の温室効果ガスがあるため、ガスが赤外線を放っているのが見える。

つまり、光学的厚さが 1 になる高さ H より下が見えている。温室効果ガスは、H の下の'平均'温度に対応した赤外線を放っているため、天頂方向の明るさは、地平線の方向に比べて弱い。

ということで、赤外線の眼には、こんな景色が見えるだろう。

まず、踏みしめている地面。今見えている景色の中で、一番輝いているところだ。

視線をゆっくり上げ、地平線の方向を見てみる。地面の輝きと、それより弱い大気の輝き、というコントラストで地平線が見えることになる。大気がもやもやと明るいせいで、普通の眼で見ているほどのくっきりとした線には見えないかもしれない。遠くの方に見える山も、地面と同じように輝いていて、それがぼおっとひかる大気の中に、ややかすんで横たわっている。

視線を上げていくと、大気は次第にその輝き、その明るさを減らしていく。真上の、つまり、天頂の方向を向いたとき、大気はもっとも暗く見える。

地面に仰向けに寝転がってみよう。真上を見上げる視線の方向が、もっとも暗い。そこから同心円状に空の明るさが変わっているのがわかる。でも、確かに空の高みから、赤外線が降り注いでいるのがわかる。この赤外線が、温室効果だ。

ここで、何の理由か、急に CO2 の濃度が倍増した。

すると、空が明るくなった。その理由はおわかりだろう。光学的厚さが 1 となる高さが下がり、天頂方向で見える範囲にある温室効果ガスの平均温度、つまり、大気の「見かけの温度」が上昇したからだ。

空は全体的に明るくなった。地平線の方向では明るさが変わっていないけれど、天頂に近づくほど変化の度合いが大きくなる。寝っ転がっている体には、横方向からの赤外線よりも、上からの赤外線が当たり、増えた赤外線がそのまま降り注いでくる。

寝転がった体にふりそそぐ、つまり、地面に降り注ぐ赤外線が増えた。実は、増えたといっても何倍にも増えたわけではない。多くても数 % といったところ。でも、確かに増えている。

地面に降り注ぐ、増えた赤外線。それは、着実に、地面を暖める。CO2 が無い場合に比べて、地表の温度が上がるだろう。どこまで上がるのか、それは、また別の話になる。

まとめ

これまで長々と温室効果のメカニズムについて語ってきた。

ここまで述べてきたことは、温室効果の理論の、ほんの一つの側面であって、全体ではない。ほんとうはまだまだ語り足りないことがある。

でも、飽和論の間違いを理解してもらうためには、意味があったはずだ。

懐疑論者の言うように、CO2 はすでに温室効果ガスによる赤外線の吸収が「飽和」している波長でしか、吸収の効果を示さない。だけど、これまで見てきたように、CO2 が増加すれば地表に降り注ぐ赤外線の強さは増加する。それは、CO2 の増加によって、「光学的厚さが 1 になる高さ」が下がり、地上から見える大気の「見かけの温度」があがるからだ。

だから、飽和論の言うことは間違っている。

飽和論を唱える人たちは、温室効果のメカニズムについて、そして、放射伝達理論が教えることについて、理解ができていないのだとおもう。少なくとも、彼らの論からは、放射伝達理論との関わりが見えてこない。放射伝達理論を学んでいれば出てくる結果を無視している。

今後、飽和論を読んだ時に、考えてほしい。その中に、地面に降り注ぐ赤外線に対する理解があるかどうかを。そして、肩書きを見てみてほしい。その人が、気象学者や気候学者であるかどうかを。

これで一通り話したいことはすんだのだけど、大変長くなってしまった。次回は、一連の記事のまとめをしたい。

タグ 記事:飽和論
タグ 記事:飽和論 はてなブックマーク - 温室効果のメカニズム(9) CO2 増加時の温室効果
2009.04.21 Tue l 温暖化論概論 l COM(0) TB(0) | top ▲

コメント

コメントの投稿












       

トラックバック

トラックバックURL
→http://onkimo.blog95.fc2.com/tb.php/45-5773ddd0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。