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一連の記事の第一回目はこちら
前回の記事は、こちら


毎度書いている注意書きですが、この記事も厳密性にはあまり注意を払っていません。

さて、これまでの知識を大気に適用してみよう。でも、そのまえに、前記事までに述べてきたことをかるくまとめておこう。この記事で使いやすいように。

1.「光学的距離が 1 になる距離」 d0 という目安の長さがある。おおざっぱに言って、観測者から d0 以内の距離で放射された光は観測者の目に届くが、それよりも遠いところで放射された光は、手前にある温室効果気体に吸収されて、眼には届かない。

2. 熱平衡においては、光を吸収する物ほどよく放射する(キルヒホッフの法則)

前記事では、二枚の板の間に入れた温室効果気体を使った実験について考えた。二枚の板の間が目安の長さ d0 より小さいとき、板の間隔 d を増やすと、実験装置の放つ赤外線は d に比例して強くなっていった。ところが、d0 を越えると、赤外線の強さはあまり増加しなくなり、ある値で頭打ちになった。

この実験結果は、おおざっぱに言えば、次のように解釈できる。

板の間隔 d が目安の長さ d0 より小さい場合、すべての温室効果気体が見えている。温室効果気体は光を放射しているため、d が大きくなると見えている温室効果気体の量も増え、結果、赤外線の強さは増加する。d が d0 を越えると、奥の温室効果気体が発する赤外線は、手前の温室効果気体に吸収され、眼に届かない。だから、d が増加して赤外線を発する温室効果ガスが増えるにもかかわらず、赤外線の強さの増加は頭打ちになる。

なお、赤外線の強さが頭打ちになるときの上限値は、赤外線の波長と温度のみで決まってしまい、温室効果ガスの種類には関係ない。ちょっと不思議な気がするけど、これは、「熱平衡」という状態がもつの性質だ。

「光学的厚さが 1 になる高さ」

さて、この知識と実験結果を、実際の大気に当てはめてみよう。

その場合、、ちょっと修正が必要になる。というのも、大気は高度が高くなるに従って、密度が下がるからだ。

大気の場合には、標高の低い場所の方が密度が高い。温室効果ガスとして CO2 を考えてみると、空気中の CO2 濃度が一定、たとえば、370 ppm で一定だったとしても、CO2 の単位体積あたりの量は、地表に近いほど大きくなる。

ここで、目安の高さ、H を導入しよう。H は d0 の大気中での高さ版。つまり、地表から真上を見て、ある赤外線の波長での「光学的厚さが 1 」となる、目安の高さを H とする。

なお、H は考える赤外線の波長によって異なる。以前、大気の窓の話をしたけれど、たとえば、大気の窓の波長帯の赤外線に対しては、大気はすかすかと透明で、どこまで登っても地上からの光学的厚さが 1 にならない。こんなとき、この記事では、 H が大気の外にある、という言い方をすることにしよう。

一方で、温室効果ガスによる吸収が強い波長では、H は大気の中に存在することになる。

さて、この H、温室効果ガスが倍増したらどうなるか?H が大気の中に存在する場合についての話だ。

前記事、前々記事の実験は、あらわには書いていないけど、実験ごとには温室効果ガスの濃度を変えることをあっても、一つの実験の中では、装置内での温室効果ガスの濃度は一定だとしてきた。この条件の下では、温室効果ガスの濃度と、「光学的厚さが 1 になる距離」、d0 の長さが反比例する。つまり、CO2 が倍増すると、d0 は半分になる。

大気の場合、倍増させたとき、温室効果気体が下層ほど濃いため、H は半分以下になる。

d0 の場合と違って、H は温室効果ガスの濃度に反比例しない。反比例よりも、振れ幅が大きくなるように変化する。

とはいえ、以下の議論はそんなに厳密な物ではない。H は d0 と似たような動きをすると思っていてもらっていいだろう。

温室効果ガスの濃度を倍増させてみる

さて、それでは温室効果ガスを倍増させた時、地上で感じる大気からの赤外線はどう変わるか?これまでの知識を動員して考えてみよう。これまでの知識、つまり、1)地上から見えるのは、 H よりも下にある温室効果ガスの輝きであること、および、2) 吸収するものほど放射する、というキルヒホッフの法則の二つだ。

まず、目安の高さ H が、大気の外にある波長の場合。このとき、地表にいる我々からは、大気全体の温室効果ガスが見えていることになる。

手前の温室効果ガスが遮ることがないので、温室効果ガスが 2 倍に増えると、地表から見える温室効果ガスが二倍に増えることになる。つまり、地表に届く、温室効果ガスの放つ赤外線の量が二倍に増え、結果、その波長の赤外線で見た空は、二倍明るくなる。

一方で、目安の高さ H が大気の中にある波長の場合に 温室効果ガスの濃度が 2 倍になるとどうなるか? 赤外線を放射する温室効果ガスが増えるので、赤外線が増える効果がある。だけど、高さ H が増加前よりも低くなるので、赤外線を減らす効果も考えなければならない。この二つの効果が、かなりの部分、打ち消しあうことになる。

実は、温室効果ガス濃度が増えた効果と、目安の高さ H が下がる効果はちょうど打ち消しあう。結局 H よりも下にある温室効果ガス量は変わらない。大気全体では CO2 が増えているのだけど、その増えた分は、H よりも遠いところで増えることになる。

これは、二枚の板の間隔 d が目安の長さ d0 よりも大きな時に、d を増やした場合と同じ状況だ。思い出してもらいたい。この状況で d を増やした場合、新たに加わった CO2 が出した赤外線のほとんどは、眼に届くまでに手前の CO2 に吸収されてしまい、観測される赤外線の強さはあまり変わらない。

大気の場合も同様。CO2 が増えても、結局見える範囲の CO2 の量はあまり変わらない。だから、大気中に目安の高さ H がある場合、CO2 が増えても地上で観測される赤外線の強さはあまり変わらない。


地表から出た赤外線が確率的に一度は吸収される状況では、温室効果ガスが増えても、温室効果はあまり増加しない。

飽和論

さて、考えてもらいたい。この結果と飽和論との関係を。

飽和論が言っていたこと。それは、大気の窓以外では、すでに温室効果ガスによる吸収は飽和している。そこでガスが増加しても、温室効果が強くなるわけではない、と。

温室効果ガスによる吸収が飽和している波長、というのは、地表から放たれる赤外線が大気の外に出るまでに高い確率で吸収されてしまう波長だ。ということは、つまり、そのような波長では、目安の高さ H が大気の中にある、ということになる。光学的厚さが 1 ということの意味を思い出してもらえばわかるとおもう。

ということで、飽和論を言い換えてみると…

「目安の高さ H が大気の外にある場合、温室効果ガスが増えると温室効果は増大する。H が大気の中にある場合、ガスが増えても温室効果は増大しない。」

つまり、飽和論と我々の結果は同じだ。

それでは、飽和論は正しいのか?

少し考えてほしい。飽和論は、地球表面から大気の外に出て行く赤外線に着目して、温室効果を論じている。

「温室効果って、赤外線が宇宙に出ないから熱がこもるってことでしょう?でも、現状でも赤外線が遮られていて、つまり、すでに熱がこもっている、ってことなんだから、CO2 が増えてもあんまり変わらないよね。」みたいなノリで議論しているように見える。

一方で、ここまで考えてきた CO2 の吸収、放射のメカニズムでは、地表から見た大気の輝きについて着目している。

結果は同じだけど、そこにいたる議論のプロセスはことなる。飽和論は温暖化のメカニズムをあまりにも単純化し、誤解している。

もし、メカニズムを理解してなかった場合、結果が正しければ、それは正当化されるのだろうか?

人によって立場は違うだろう。同じ結果が得られればいいじゃないか、という実用主義的な考え方もあるだろう。

でも、僕は、たとえ同じ結果が得られたとしても、プロセスをきちんとふまえた議論でなければいやだ。だから、飽和論は気に入らない

次の記事では

さて、この記事では、これまでの知識を使って議論して、飽和論と同じ結論を導いてしまった。

でも、この記事を書くに当たって、一つの重要なことを無視して書いていた。それをふまえると、H が大気の中にある場合でも、温室効果ガスの増加によって、大気からの赤外線が増加する、ということを導けるのだ。

つまり、吸収が飽和していても、温室効果ガスの増加により、温室効果が強まるのだ。

次回は、飽和論と違う結果を導いて見せよう。温室効果ガスが増加すると、どうなるのか?こうご期待。

タグ 記事:飽和論
タグ 記事:飽和論 はてなブックマーク - 温室効果のメカニズム(8) 大気に適用してみる
2009.04.17 Fri l 温暖化論概論 l COM(0) TB(0) | top ▲

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