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一連の記事の第一回目はこちら
前回の記事は、こちら


前の記事で述べてきたのは、散乱によって光る気体。一方で、この一連の記事の最終目的は、大気からの赤外線。赤外線の波長では、大気は自ら輝いているので、前の記事と状況が違う。

違うんだけれども、前記事で出てきた、d0、つまり、「光学的な長さが 1 になる距離」、という目安は、この記事でも使えるんだ。そして、それを使うと、やっと温暖化の話ができる。

その前に、一つだけ。散乱をとりあつかった前の話では使わなかった、でも、赤外線の「吸収と放射」を扱うこの記事では必要な、キルヒホッフの法則について話しておこう。

なお、やっぱりこの記事でも厳密さは犠牲にしてある。嘘、間違いだけは書かないように気をつけているけど、書いていることはいろいろな明記されていない条件の下でだけ成り立つ場合が多い。これらの条件は、地球大気ではおおむね成り立っているので、気にすることなく読んでもらってかまわないはずだけど、厳密な議論をしたくなったら、別な文献を参考にしてください。

キルヒホッフの法則

キルヒホッフの法則を知っているだろうか?

知っている、と言う人。もしかしたら、電気回路のキルヒホッフの法則のことを言っているんじゃないかな? 1) 任意の接点に入ってくる電流と出て行く電流は等しい、2) 閉回路で電圧を一周足しあわせるとその和は 0 になる、といったやつ。

高校物理で習い、大学入試でも出てくるから、これを知っている人は多いと思う。

でも、キルヒホッフの法則と名前がついているのは他にもある。たとえば、反応熱に関しての法則があり、そして、ここで取り上げる放射に関しての法則がある。

物理学の中でもぜんぜん違う分野におけるこれらキルヒホッフの法則だけど、同一人物が提唱した。キルヒホッフは、ドイツの物理学者で、19 世紀に活躍し、ハイデルベルグ大学の教授を務めた。ちなみに、ハイデルベルグ大学は、20 世紀に入ると多数のノーベル物理学賞受賞者を輩出する。ドイツの物理学がもっとも輝いていた時代の、その中心となる大学の一つだ。

さて、放射におけるキルヒホッフの法則とは何か。よく使っている wikipedia のページはこの記事を書いている時点では壊れているっぽいので、京都大学のページから持ってこよう。

熱力学的に平衡している媒質の吸収係数と射出係数の比は、媒質の性質に関係なく、
その温度と放射の振動数のみの関数(プランク関数という)となる。

PDF ファイルの50 ページを見てください)

これって、京大生向けのテキストなんでよね?相当に物理の経験(物理系の大学 4 年生程度の経験)がないとわからないな、こりゃ。

キルヒホッフの法則の、もうすこし平易な表現をすると、こんな感じかな。

熱平衡にある物体は、吸収すると同じだけ放射する



言っていることはわかりやすいだろう。そう、光を吸収しやすい物体は、同時に放射もしやすいんだ。なお、これは波長ごとに成り立っている。すべての物体は、ある波長の光について、吸収した分だけ、同じ波長の光を同じだけ放射する。

でも、どうだろう?言っていることはわかっても、腑に落ちない人も多いのではないかな?光をいっぱい吸収する物質の方が、より明るく光っている、ということは、日常感覚では納得できないのではないか。光を吸い込む物質ほど黒っぽいはずだ。でも、そっちの方が明るく輝いているなんて…。

しかしながら、この法則は正しい。ポイントは、「熱平衡」という言葉だ。

ちゃんと説明すると長くなるので、これはいつか別記事に書くことにする。どうしても納得できない人、このキルヒホッフの法則は、物質の性質について述べた、というよりも、「熱平衡」という状態について説明した法則だと思ってください。

身の回りにある、黒っぽい光を吸収する物質は、可視光線とのあいだにおいて、熱平衡状態にはない。だから、キルヒホッフの法則は当てはまらない。可視光線は、そもそも何千度もの温度の物体から放出されている電磁波だからだ。

一方、赤外線が地球の表面気温程度の物体が盛んに放つ電磁波だから、大気中の二酸化炭素と赤外線との関係は、熱平衡として扱って良い条件にある。だから、キルヒホッフの法則を使うことができる。

書いていてもずいぶんと気持ち悪い説明だけど、無理矢理納得するように。

散乱との共通点、相違点

さて、キルヒホッフの法則を認めると、前の記事で散乱について述べたことの多くが、吸収、放射の議論でも使えることになる。なぜなら、吸い込んだ光と同じだけの光を放射として外に出す、というのは、よく考えると、散乱に似ているからだ。

散乱は、反射の一種。当然入ってきた光と同じだけの光が出て行く。一方、吸収した物と同じだけ放射が起きる、というキルヒホッフの法則に従う物質も、入ってきた赤外線と同じだけの赤外線を出している。入ってきたと同じだけ出て行く、という点で一緒なのだ。

もちろん、違うところもある。散乱の場合は、外部に光源を求める必要があった。前の記事の実験では、霧を上から照らした。一方で、CO2 による赤外線の吸収、放射の場合、CO2 は自ら吸収、発光を行っている。

そして、ここが最大の違いなのだが、熱平衡にある物体が放射する電磁波は、温度で決まる。散乱の場合は、どのような光が入射するかで決まっていたのだけど、吸収・放射の場合は、温度が高いほど、より多くの電磁波を発することになる。

改めて脳内実験

散乱との共通点と違いを理解するために、前の記事の実験を、CO2 についてやってみよう。

co2.png

前の記事の実験装置を用意する。ただし、二枚の板の間には温室効果ガスを入れておく。いちいち温室効果ガス、と書くのはめんどくさいので、この実験では CO2 を入れたことにしよう。また、今回は霧を照らす電球はない。観測者は、以前説明した、赤外線を感じる眼をもっている。あと、装置以外は真空となっており、十分に冷やされていて、CO2 以外の赤外線源は無いものとしよう。さらに、そのほかの条件として、板の間の二酸化炭素はどこでも温度が同じだとする。

赤外線の明るさのグラフを書いてやると、霧の実験と同じような結果が得られる。二枚の板の間隔 d が小さいときは、装置はあまり赤外線を発していない。間隔 d を大きくすると、最初は d に比例して明るくなっていく。だけど、さらに d を大きくしていくと、だんだん増え方が頭打ちになってきて、最後にはほとんど増えなくなる。

吸収による上限

そして、今回も目安の長さ d0 を定義することができる。板の間隔 d が d0 よりもちいさいところでは、赤外線の強さが d に比例し、d が d0 より大きなところでは、強さがあまり変わらない。

d0 の意味は、専門用語でいうと、やはり「光学的な厚さが 1」になる間隔で、そのココロもやっぱり、「板 B から出た光線が板 A にたどり着くまでに、まあ 1 回くらい吸収されるよね」ということだ。前記事の「散乱」が「吸収」に変わっているだけの違い。

d が d0 より小さいとき、赤外線を発する CO2 の分子がほぼすべて見えている。d が d0 より大きいとき、板 A から離れた場所の CO2 分子が放つ赤外線は多くが手前の CO2 分子に吸収されてしまうので、d を増やしても明るさはあまり変わらない。これも先記事の散乱の場合の事情とほとんど同じ。

なお、d を d0 より大きくしていった場合、明るさはある値にどんどん近づいていくが、けっしてその値を超えられない、という結果になる。この明るさの上限値、じつは散乱の場合にもあったのだけど、その上限値は、散乱の場合と吸収・放射の場合では違う事情で決まることになる。

散乱の場合、前の記事では詳しく書かなかったけれど、d を増やしたときの上限は、上からの光源の光で決まってしまう。霧は、光源の光よりは明るく輝くことはできない。

吸収、発光の場合、こんどは明るさの上限が、分子による発光で決まってしまう。その上限は、波長と温度を与えると、黒体輻射の式、もしくはプランクの式、とよばれる式から計算できる。グラフで「黒体輻シャによる上限」と書いてある値がそうだ。

この上限の値は、物質によらない。CO2 の場合でも、ほかの気体の場合でも、その波長を吸収したり放射したりしているなら、物質によらず、温度だけで決まる同じ大きさになるんだ。

気体が違えば、d0 の値は変わるかもしれない。d0 が小さくて、間隔 d が 10 cm くらいでこの上限になってしまう気体もあれば、d0 が、何千、何万 m もの値になり、上限に近づくためには、さらにさらに大きな d が必要な場合もある。それでも、上限は同じ値になってしまうのだ。これも、キルヒホッフの法則と同じように、「熱平衡」の性質だと思って納得してほしい。

まとめ

またまた長くなってしまった。この記事で覚えておいてほしいところをまとめておこう。

1. 大気中の二酸化炭素と赤外線について、キルヒホッフの法則が適用できる。つまり、CO2 は吸収しただけ放射する。

2. 前の記事で霧を使って行ったのと同じ実験を CO2 が放射する赤外線について行ってみると、似たような結果が得られる。つまり、板の間隔 d が小さいときは d が大きくなるにつれ明るくなり、ある目安の長さ d0 を超えると、明るさの増加は頭打ちになる。

3. d が十分に小さいとき、赤外線を放射する CO2 全部が見えている。d が大きくなると、ガラス板から d0 より大きな距離にある CO2 の放射する赤外線は、手前の CO2 に吸収されてしまう。

4. 波長ごとの明るさの上限は、温度によって決まり、黒体輻射の式、もしくはプランクの式、と呼ばれる式で与えられる。CO2 以外の温室効果ガスを用いた場合も上限は同じ値となり、温度のみによって決まり物質によらない。

次の記事ではこれまでの知識を地球の大気に応用してみて、CO2 が大気中に増えたときにどうなるか考えてみよう。やっと本題にたどり着きそうだ。

タグ 記事:飽和論
タグ 記事:飽和論 はてなブックマーク - 温室効果のメカニズム(7) 光を吸収するほど放射する
2009.04.08 Wed l 温暖化論概論 l COM(0) TB(0) | top ▲

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