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CO2 が増えても温暖化しない、という人たち

二酸化炭素 (以下、CO2) が増えても、温暖化しない、という人の中に、こんなことを言う人たちがいるのは知っているかな?

地球温暖化論者たちは、CO2 が増えると、地球から赤外線が宇宙に逃れにくくなり、温暖化する、なんて言っている。でも、それは間違いだ。CO2 による赤外線の吸収はすでに飽和しているのだから、いまさら CO2 が増えてもこれ以上の温暖化はおこらない。

彼らが何を言っているか、わかる?ちょっと説明する必要がありそうだ。

地球は赤外線を出している。赤外線は知っているよね?電波や光(可視光線)、X 線などと同じ、電磁波の一種で、熱を伝える性質がよく知られ、利用されている。遠赤外線、とかその手の単語は日常生活でもおなじみだ。

ところで、赤外線と一口に言っても、一種類ではない。波長によって性質が異なるんだ。

ある波長の赤外線は、空気中のある種の気体に吸収される。このような波長では、赤外線は地上からダイレクトに宇宙に出て行くことができない。ちなみに、赤外線を吸収する気体が「温室効果ガス」だ。

一方、波長によっては、これらの分子の吸収にあまり引っかからない場合もある。このような赤外線は、ほとんどが地球から直接宇宙に出て行くことができる。

さて、温室効果は、二酸化炭素(以下、CO2) をはじめとする温室効果気体が、地球から出る赤外線を吸収するために起こる、と説明される。温室効果気体がなければ、ダイレクトに地球から大気の外の宇宙空間に放たれるはずの赤外線が、温室効果気体にいったん吸収され、そのあと再放射される。それで、温室効果気体がない場合に比べて、地表の温度が高くなる、というわけだ。

だけど、懐疑論者たちは、この説明を問題視する。もう二酸化炭素は十分赤外線を吸収して'飽和'しているのだから、これ以上CO2が増えても、吸収される赤外線の量は変わらない、というのだ。(この批判を、今後、「飽和論」と呼ぶことにしよう)

バケツにいくつか穴が開いていて、水が漏れている。あいている穴をふさげば漏れが減るんだけど、すでにほとんどふさがれている穴をさらに塞いでも、漏れる量は変わらないでしょ、と飽和論は言っている。

飽和論の言っていること

さて、懐疑論者の「飽和論」、実際には正しいのかな?

Wikipedia をみてみると、こんな図が貼ってある。これは、横軸に光の波長を、縦軸に、波長ごとの光の強さを描いたもの。スペクトル、と呼ばれる。
大気の透過率

http://ja.wikipedia.org/wiki/温室効果 より


「スペクトル強度」の図には、4 つのなめらかな線が引いてある。それぞれ温度の違う、ある種の理想的な物質(黒体)が放射する光を書いた線だ。このようなスペクトルを持つ放射を、黒体輻射という。一番左側にあるのが、太陽の表面温度を持つ黒体が放射するスペクトル。これは今回無視しよう。右側に固まっている 3 本のなめらかな線は、地球の表面温度を持つ黒体が放つスペクトル。地球の場合、表面温度にばらつきがあるので、温度 210K から 310 K (-63 から 37℃)の場合を示してある。大気中になにも遮るものがない場合、宇宙から地球の放射するスペクトルを観測すると、黒体輻射に似た形になるはずだ。

さて、同じ図で、青で塗りつぶしてあるところは、実際に宇宙から観測した地球のスペクトルだ。地球から放たれて大気を通ってきた光のスペクトル。黒体輻射よりも弱いことに注目してほしい。主に大気中の分子が赤外線を吸収することで、光が弱くなる。吸収が大きいところほど、黒体輻射からのずれが大きくなる。

多くの波長帯で赤外線が吸収され、大気の外では観測できないのだけど、例外的に比較的強い波長帯がある。このあたりは、分子の吸収が弱い。宇宙から地球の表面を温室効果ガスに遮られずに見ることができるので、この波長帯は「大気の窓」と呼ばれている。温暖化の話を読んでいるとたまに出会う単語だ。

さて、図には吸収率、散乱率の図も書いてある。これは、大気が、また、大気中のいろいろな分子が、地球から放射された赤外線をどれだけブロックしているかを、波長ごとに書いた図だ。CO2 について、見てほしい。複数の波長帯で赤外線をブロックしていることがわかる。そのうちのいくつかでは、地球が出す赤外線のほとんどをブロックしていることがわかるだろう。

CO2 が増えたらどうなるか?波長帯によっては、すでに CO2 による吸収は飽和している。つまり、CO2 が遮ることができる赤外線のほとんどをすでに遮っている。CO2 による吸収が飽和していないような波長帯も、すでに水蒸気など他の気体が赤外線をブロックしており、ほとんど飽和している。もしCO2 による吸収が「大気の窓」で増加したなら、新たに地球からの赤外線をブロックする効果が高いのだけど、そんなところには目立った吸収線は存在しない。

だから、CO2 が増えて吸収が増えるはずのところは、すでに'飽和'している、という点に関して、懐疑論者たちはおおむね正しい。

温室効果メカニズムを理解するのは難しい

でも、温室効果は赤外線吸収が飽和しているかどうかだけでは決まらない。飽和論に対する答えはもう出ている。たとえば、よく引用している懐疑論へのコメント。37ページの議論 21 に回答が書いてある。それによると、1) CO2 が増えることにより、赤外線の吸収、射出の回数が増えるし、また、2)吸収される波長は幅を持っており、その端の方では吸収が飽和していないから、CO2 が増えると温室効果が増えるんだ、というわけだ。ほかにも、宇宙空間に近い成層圏では飽和していないから、このあたりで CO2 が増えて吸収が増えるのだ、なんて説明もある。

懐疑論者の批判は、だから、とんちんかんなんだけど、でも、すこしだけ同情すべき点があるようにも思う。というのも、この話はいささか難しいからだ。このブログを読んでいる君、懐疑論者に対するコメントは理解できたかな?上の説明はかなりはしょってあるのだけど、でも、懐疑論へのコメントにあるもとの記述をみても、わかる人が多いとは思えない。

この手の話は、とてもむずかしく、また、良い解説がない。どうして良い解説がないのか?それは、説明には放射伝達論 (radiative transfer) という、比較的知っている人の少ない学問分野の知識が必要だからだと思う。わかりやすい解説を書ける人が少なく、また、そのノウハウが確立されていないのだ。

放射伝達論は、物理学の一つの分野として、つまり、たとえば相対性理論などと並ぶ分野として確立されても良い内容を持っている。でも、独立して、大学の物理の授業で扱われていることは少ないんじゃないかな?

そもそも放射伝達論を研究や仕事で使う機会のある人が少ない。気象関係の人を除けば、あとは、理学部では天文学を研究する人くらいではなかろうか。工学系はよく知らないけれど、リモートセンシングみたいなところと、あとは原子炉関係?ぐらいかな。

放射伝達論には特有の難しさがある。個人的には、一般相対性理論と同じくらい難しいような気がする。まあ、難しさの質は違うけど。そもそもの出発点であるアインシュタイン方程式を理解するのが難しい一般相対論と違って、放射伝達論の基礎方程式はとってもシンプル。でも、それを実際の現象に適用するまでに、いろんなテクニックが必要で、それがややこしい。そして、それをちゃんと解説している日本語の文献を、ぼくはほとんど知らない。(どんな感じの式が出てくるのか興味がある人は、たとえばこちらをみてほしい。)

僕だって、放射伝達論は難しいと思う。飽和論の間違いをクリアに説明することなんてできない。そこで、少し違う話をしよう。温室効果を、普通とは異なる観点から述べてみたい。温室効果ガスが増えることにより起こる、大気の”輝き方”の変化について、だ。

もちろんそんな説明で温室効果のメカニズムとか懐疑論者の間違いとかがきちんと理解できるわけではない。温室効果っていうのは複雑だ。

でも、温室効果についていろいろな見方を知っていた方が、おもしろいはず。だから、あと二回くらい僕の話につきあってほしい。しばらく温暖化のメカニズムについてちんたら話すので、つきあってほしい。

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タグ 記事:飽和論
タグ 記事:飽和論 はてなブックマーク - 温室効果のメカニズム概論(1) 吸収の飽和?
2009.03.08 Sun l 温暖化論概論 l COM(0) TB(0) | top ▲

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