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この記事は三回続きの記事の二回めです。先に一回め、二回めをお読みください。


なぜ、中国が、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い(very likely)」ということを認めざるをえなかったのか?

その問いに対する私の答えは、中国が、IPCC のワーキンググループ 1 (WG1) が提示したものよりも説得力のあるレポートを提示できなかったからである。あたりまえでつまらない理由で申しわけないが。

なぜ、WG1 のレポートよりも良いものが提示できないのか。それは、中国における地球環境研究が、WG1 の立脚している研究よりも大きく劣っているからである。

なぜ研究が劣っているのか。それを考えてみよう。

地球環境研究、それも、地球温暖化につながるような研究は、かなりの大国でなければできないのだ。もちろん中国は大国だ。しかし、軍事的、政治的には以前から大国であったものの、経済的に台頭してきたのはようやく近年になってからであり、軍事よりも優先順位の劣る、しかしながら大金のかかる科学研究の面では、まだまだ、というのが実情だ。

そして、日本は、たまたま、温暖化研究ををすすめることができるだけの大国だった。そのための条件がそろっていたのだ。条件にはいろいろとあるが、人材と費用、という観点を中心にみていこう。

日本で IPCC の温暖化の科学的研究に振り向けられている人材は、博士だけで 100 人は下らないと思う。間接的にかかわっている人もカウントすると、もっと多いだろう。(ここでは博士だけに注目するが、その他に、多くの有能な支援スタッフが投じられていることも、念の為書いておく。)これだけの人材が投じられてなお、アメリカや、ヨーロッパと肩をならべる研究をしていくにはぎりぎりだ、という印象を持っている。

気象学、海洋学の博士を、温暖化研究に大量に供給できる国はそんなに多くはないと思う。そもそも、大学院で、気象学、海洋学を修める人間、というのはあまりいないから。これらの学問を履修するのは、大学で物理学を修める人間の、ほんの一部だし、そもそも開講されている大学があまり多くない。

それに、気象学、海洋学のミッションは、決して温暖化研究だけではない。懐疑論者の中には勘違いしている人も多いように思われるが、大気と海洋の科学者は、決して災厄を予想するためだけに存在しているのではない。気象学、海洋学は、地味な基礎研究が中心で、しかしながら、興味深い、多彩なテーマがあり、その多くは、温暖化研究に直接役に立つものではない。

さて、気象学、海洋学分野の研究者を育てるためには、どうしても費用がかかる。なぜか。

世界最先端の研究を遂行するために、金がかかるのだ。そうでないと、博士を育てることはできない。

観測なら、最先端の観測機器が必要だ。観測を行う場所に出向く旅費も必要だ。海洋観測や南極観測なら、船を仕立てないといけない。たとえば、南極観測の予算は、観測船の建造費を除くと年間20~30億くらいか。観測船建造費は、400億くらいするらしい。

そのほかの費用のかかる観測の例は、衛星観測だ。日本は、アメリカやヨーロッパについで、地球観測衛星を打ち上げている。いちばん馴染み深いのは、ひまわり、だろう。毎日毎日送られてくる雲の画像を、日々の天気予報で目にする。ひまわりが得たデータは、アジア、太平洋諸国に送られ、気象予測に役立てられている。

いま打ち上げられているひまわりの寿命がもうすぐきてしまう。しかし、その後継機の打ち上げに、予算がなかなかつかなかった。そろそろ開発を始めないと、現ひまわりが寿命を迎えるまでに間に合わない。結局は予算が付いて亊無きを得たのだが、関係者はやきもきしたと思う。打ち上げ費用は、140 億円ほどらしい。運用全体では400億。

理論研究にも、費用はかかる。もはや紙と鉛筆でできることはほとんど残っていないから、計算機が必要だ。気象学、大気科学の理論研究では、昨今は大型の計算機(スパコン)が使われることが非常に多い。コンピュータの進歩は早い。どんな最先端スパコンでも、5年もすれば、時代遅れになってしまう。ある意味、消耗品なのだ。高価なスパコンを、常に、十分な量だけ、備えておくことができる国は、そんなに多くないと思う。

観測機器をそろる。衛星を打ち上げる。スパコンを用意する。その他、その他。研究資源を十分に用意して、世界に遅れないようについていくいていくためには、かなりの経済力がなければならない。日本でこの分野に投じられている金額はいくらだかしらないが、毎年数百億はあるだろう。民間も全てあわせたら、1000 億を越えるかもしれない。まあ、昨今のサブプライム危機で耳にする、数兆円単位の金額にくらべたら微々たる数字だが、それでも大金であることには間違いない。こんな金額を、毎年毎年支出出来る国。研究を進めていくには、大国でなければ難しいのだ。

最先端の研究を、費用をかけて、幅広く行うこと。そうしてはじめて、大量の博士クラスの人材が供給できる。でも、それだけではない。他にも多くの条件を満たす必要がある。しっかりとした、初等、中等教育。高い大学進学率。レベルの高い大学教育、それも、できれば母国語による大学教育。その国における、気象学、海洋学研究の、長い歴史。十分な教育予算。修士や博士が活躍しうる学内外の環境。

温暖化研究を遂行するために、国家が満たすべき条件は多々ある。莫大な科学技術予算を捻出できる巨大な経済、研究開発を可能にする十分な工業的・技術的基盤、世界の最先端に制限無く触れられる自由な社会体制、研究者が研究職として長く活動できる安定した社会

改めて言うが、これらの、温暖化研究を遂行するための条件を見たせるのは、科学技術の発達した、経済規模の大きな国でなければならないのだ。現時点で、ある程度にせよ自己完結した温暖化研究を遂行できる国は、アメリカ、EU、日本ぐらいだと思う。

もちろん、他でも、大きな貢献をしている国はある。たとえば、カナダ、オーストラリアは、量的にはともかく、質的には上に述べた 3 地域に近いレベルの貢献をしている。分野によっては中心的な役割を担っている、といっても良い。これらの国は、人口的、GDP 的には大国ではないのだが、英語圏であり、アメリカや EU と、経済的、人的に深く連携を取り、資源を共有しながら研究を進めている。

いずれにせよ、上記の国は、先進国、それも、旧西側先進国だ。それ以外の国はどうだろう?

ロシアはどうだろうか?ソ連時代の、そして、たぶんロシア帝国時代から続く、科学の伝統を受け継いでいるこの国は、たしかにしっかりとした教育の基盤がある。しかし、IPCC の第一作業部会で大きな貢献をした印象はない。ソ連崩壊後の経済的な混乱がたたっているのだろう、研究環境が西側諸国に大きく劣っているイメージを、私は抱いている。たとえば、観測機器やコンピュータ資源などで、だ。

個々のロシア人、という観点では、アメリカなどに渡って素晴しい研究をしている人も多い。だが、国としてのロシア、となると、すくなくとも、IPCC 第一作業部会での発言力は、小さいのだ。

サウジアラビアはどうだろうか。産油国の雄。ありあまるオイルマネーを持ち、その気になれば、温暖化研究に大金を投じることも可能なはずだ。そして、CO2 の排出源が国家の経済的基盤であるサウジには、それをする動機がある。

しかし、不可能だと思う。サウジアラビアは、いくつかの条件に書けている。小さな人口。抑圧的な社会体制。温暖化研究をするだけの、広くてしっかりとした科学の社会基盤を整えることができない。

もちろん、サウジアラビアも IPCC に代表団を送りこんでいる。前回、IPCC の第 3 次報告書をまとめる段階で、CO2 の地球温暖化に対する影響についての議論で、大反対をした。今回の中国と同様だ。しかしながら、やはり孤立して敗れ去った。これも中国と同様、説得力のある反論を用意出来なかったのだ。

さて。中国は、温暖化研究で先進国に伍していけないのだろうか。

人材で難がある、と私は思う。

たしかに近年経済力は台頭して、大学教育に力を入れることも可能になってきた。また、かなりの予算を費して、科学技術の進行をしている。

だが、1960 年代の文化革命などを経て、中国の大学教育は一度死んだ。知識階級はさげずまれ、大学から追い出された。その傷跡を癒すのは、大変に時間がかかりそうだ。

また、抑圧された社会であることや、格差社会で、かつ社会が激動していることも、人材を育てるうえでマイナスかもしれない。自分が今の中国に生まれたとして、幸運にも良い大学に進学できた場合、周りが金持ちになっていく中、大して金にもならない気象、海洋の研究に才能を注ぎこめるだろうか?

中国が人材を得るのは難しい。

ただし、アメリカには、大量の気象学・海洋学の中国人研究者がいることは指摘しておかなければならない。中国から渡った人間がみんな引き上げたら、アメリカのこの分野はなりたたなくほど、多くの研究者がいる。

とはいえ、今の中国が、国家として、IPCC で主役を張るのは難しいのだ。

つらつらと温暖化研究の条件を考えているうちに、もっと違った陰謀論が書けそうな気がしてきた。思いついたアウトラインを書いてみたい。

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…IPCC に送りこまれる、政府の息のかかった先進国の研究者。彼らは多数の資料をたずさえ、報告書の作成を支配する。目的は、途上国の発展の妨害。さまざまな科学的事実と称する研究結果から、マジックのように生まれでた、人為起源 CO2 の増加、そして、地球温暖化。

だれもが先進国の言いなりになりそうだった。しかし、中国は立ち上がった。国益を守るため、そして、途上国の利益を代表するため。しかし…

議場での孤立。それでも戦い続ける中国。無情にも時間は経過し、援軍はあらわれない。ついに矢尽き刀折れ、妥協を強いられる。大きな屈辱。

だが、中国の戦いは、本当に終わったのだろうか?

なにしろ、悠久の歴史を持っている国だ。それも、中華世界の盟主、押しも押されぬ大国としての歴史。東洋の中心として、多くの国の上に立ってきた。

なにより待つことを知っている。臥薪嘗胆、という言葉を生みだした国だ。次回の、そして、その先の IPCC のレポートで、何を繰り出してくるのか…。

考えてほしい。非常に多くの中国系の教授が、アメリカの大学の、気象学、海洋学の分野にいるのだ。

捏造された温暖化論。先進国の陰謀。だが、中国は、当然それを、裏の裏まで熟知している。自国の人材が、敵の中心に入りこんでいるのだ。

次回の IPCC で、中国は何を仕掛けてくるのか。そして、温暖化対策の行方は。

まだ何も終わってはいない。中国の挑戦ははじまったばかりなのだ。

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陰謀論はワンパターンだと思う。論者たちは、なぜか、既存の枠組みに安住している。事実を離れて想像力の翼を伸ばしてもかまわないのに、そうしていない。せっかく、温暖化論は捏造だ、とすることによって、制限を少なくしているのだから、もっと多様な意見を書いてほしいと思う。


だが、この手の陰謀論がなぜワンパターンなのか、なんとなく、私にはわかっている。地球温暖化が捏造である、という前提が、意外に強い縛りなのだ。そのせいで、自由度が低くなってしまう。

もし西側先進国の科学者が捏造したものであるのなら、中国だって捏造して対抗すれば良い話だ。そして、自国の科学者に命じて西側の捏造を批判させ、お互いどちらが正しいかわからない状態にして、寝技に持ちこむことが出来たはずである。中国の気候学者だって、馬鹿ではない。少くとも「かなり (very) 」の文言を入れられてしまうような失態をしでかす必要はなかったはずだ。

捏造論をベースにすると、そのあたりの事情を説明することがむずかしいので、発展途上国の役割をかけなくなるのだろう。

でも、それで良いのか?

先にも書いたが、やはり懐疑論者の知的怠慢だと思う。

もっと面白い陰謀論を読ませて欲しい。
タグ 記事:膝を屈した中国 はてなブックマーク - 膝を屈した中国(3/3)
2008.11.07 Fri l 懐疑論(陰謀論系) l COM(0) TB(0) | top ▲

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