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IPCC レポート第四次報告書に記載された、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い(very likely)」という文言。

この文言は、今回のレポートのハイライトの一つだ。特に、「可能性がかなり高い(very likely)」の、「かなり(very)」。第三次報告書ではなかったこの、very という単語。

日経 Ecolomy のコラムに、近藤洋輝さんが「中国代表団が反発した、温暖化の「科学的根拠」の確実性」という記事を書いている。 IPCC に参加されている近藤さんの叙述は、会議の緊迫感を写しとってあざやかだ。

IPCC の報告書は、いくつもの文書の集合体だ。こちらのページで全体像が掴めるとおもうので、見てほしい。全体をまとめた統合報告書の他に、作業部会が 3 個あり、それぞれが出す報告書がある。近藤さんが扱っているのは、このうち、第一作業部会の出した「政策決定者向け要約」をまとめる段階でのおはなしだ。

ちなみに、第一作業部会は、自然科学的根拠を評価する部会。気象、海洋などをはじめとする地球物理学者が集って仕上げたもの。現在、地球が温暖化しているのか、将来どのように温暖化が進んでいくか、といったことを調べ、政策決定の土台を提供する作業部会である。

ここで認定された事実から、将来どのような温暖化対策を取るべきかが決定されることから、重要性のほどかわかるだろう。

IPCC の報告が最終的にまとまったのは 2007 年 11 月 17 日、ということになるとおもうが、第一作業部会の報告書はそれよりかなり早く、2007 年 2 月に報告書をまとめた。報告書が採択されたあとに、科学者達の声明「気候の安定化に向けて直ちに行動を!」 が出され、比較的大きくマスコミ報道もなされたので記憶されている読者も多いだろう。

しかしながら、この報告書は、決してすんなりと採択されたわけではない。

第一作業部会の「政策決定者向け要約」、それに盛り込まれたのが、記事冒頭に述べた、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い(very likely)」という文言だ。

この政策決定者向け要約は、重要な文章なので、些細な表現まで丁寧にチェックされる。「可能性がかなり高い (very likely)」の very も、議論の的になった。

その中心になったのが、中国だ。中国が、この「かなり」を加えることに大反対した。議事は膠着状態に陥いった。この手の会議では、もめると議事が長びいて徹夜になることもある、と聞く。第一作業部会の会合も、そのくらい大変だったのではなかろうか。

しかし、もめた、とは言っても、中国は孤独な戦いをしていたようだ。近藤さんの記事を引用しよう。

中国は特に、原因を特定する文案に関して、「観測や気候モデルにはまだまだ問題がある」として、表現に「かなり」を加えることに対して異議を唱えた。しかし、その評価は専門の科学者が評価したものであり、会議は科学者の評価をいかに適切に政策決定者に伝えるかを議論する場であるという発言や、それを支持する発言、さらに、科学者の評価を信頼すべきといった発言が相次いだ。


つまり、IPCC に参加している科学者の間では、この very を加えることにコンセンサスが得られていた。近藤さんの記事の続きを読むと、中国の他には、科学者のコンセンサスに異を唱える国もなかったようだ。

全体を、特に、科学者たちを敵にまわして、一人、戦いつづけた中国。しかし、最終的に、中国は妥協した。この very likely が 100 % の確実を意味していないことを、脚注に、「残る不確実性は、現在の科学の方法論により見積もられている」Consideration of remaining uncertainty is based on current methodologies. なんていう、よくわからない脚注をつけることで強調することを条件として。

very という単語のひとつくらい、どうでも良い、なにをそんなにむきになって、という考えかたもあるだろう。ただ、科学者達は、前回の IPCC 報告書 (第三次報告書) の時点からの研究の蓄積から、人為起源の温暖化を、より確実な事実として認識するようになってきた。第三次報告書では入れられなかった 「かなり高い」(very likely) という評価。私見によると、将来を予測することがらに使われる修飾語としては、この very likely が、事実上、確実性の高さとしては最高の部類になると思う(この評価の文言については、いつか扱いたい)。そして、だからこそ、中国もその文言を除く事に執着した。

せっかくだから、報告書にどんな文章が書かれているか、読んでいただこう。

Most of the observed increase in global average temperatures since the mid-20th century is very likely due to the observed increase in anthropogenic greenhouse gas concentrations. This is an advance since the TAR’s conclusion that “most of the observed warming over the last 50 years is likely to have been due to the increase in greenhouse gas concentrations”. Discernible human infl uences now extend to other aspects of climate, including ocean warming, continental-average temperatures, temperature extremes and wind patterns (see Figure SPM.4 and Table SPM.2). {9.4, 9.5}

(IPCC WG1 AR4 Report, Summary for Policymakers より。強調、下線は onkimo による)

20 世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの観測された増加によってもたらされた可能性が非常に高い。これは、第3 次評価報告書での「過去50 年にわたる、観測された昇温のほとんどが温室効果ガス濃度の上昇によるものであった可能性が高いとの結論を進展させるものである。識別可能な人間の影響が、気候の他の側面(海洋の温暖化、大陸規模の平均気温、極端な高低温、風の分布)にも及んでいる(図SPM-4、表SPM-1 参照)。{9.4、9.5}

(上記の文の気象庁による和訳、強調、下線は onkimo による)

事実を述べたそっけない文章だが、それでも、行間に科学者達の気持ちが読みとれないだろうか。

外野の勝手な推測だが、この very likely を書きこむことは、IPCC の科学者の悲願であり、書き込めた、という事実は、彼らにとっての誇りだったにちがいない。前回の報告書から 6 年、そのあいだにおこなわられた、さまざまな研究があった。新たな観測機器による、大気、海洋の詳細かつ広範囲な観測、より多くの間接的な証拠から作りあげた、過去の気温のより精確な変化の歴史、モデルの進化によって精密化した、雲、温室効果ガスなどの温暖化に対する影響の評価。

前回の報告書では、「可能性が高い(likely)」としか書けなかった。当時 very を入れられなかったのは、科学者達の自制心のせいであろうし、また、強い批判があったためなのかもしれない。しかし、今回は、very likely と、堂々と書きこむことができた。中国の強い反対にもかかわらず。IPCC に関った科学者の胸には、どんな気持ちが去来しただろうか。

さて、この記事の内容にとって、科学者の感情なんて本当はどうでもよいのだが、ついいろいろと書いてしまった。本当は近藤さんの記事が紹介したかっただけなのに…。ここまでは前置きで、ここからが本論だ。

でも、もう長くなってしまったので。今日はここまで。次回は、この記事では全く出てこなかった、温暖化懐疑論について触れたい。
タグ 記事:膝を屈した中国 はてなブックマーク - 膝を屈した中国(1/3)
2008.10.19 Sun l 懐疑論(陰謀論系) l COM(0) TB(0) | top ▲

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