槌田さんは、温暖化問題を含む環境問題について、ある種の人達のカリスマで、非常に影響力がある人だ。
僕、onkimo も、槌田さんの本を読んだことがあって、いろいろ考えさせられた経験がある。僕はこの分野のウォッチャーでもないのでよくわからないが、環境問題に長年発言をしてきたことから、槌田さんの知名度は高いみたいだ。
知名度が高く、多くの人から信頼を受けているんだから、もう少し、慎重に発言してほしい。だって、槌田さんを信頼したばっかりに、とっても残念なことになっている温暖化懐疑論者が多いんだもの。
どういうことか。
その証拠としてあげているのが、このキーリングのグラフだ。

ちなみに、キーリングさんは、CO2 濃度の観測の第一人者。予算が少ない中、継続して濃度の観測を続け、CO2 が増加している、という動かぬ証拠を示した人だ。
このグラフを見てみると、確かに、温度の上昇に続いて、CO2 濃度の上昇がおきている。
槌田さんは、ヘンリーの法則を用いてこの現象を説明している。いわく、
地球の温度が上昇(これには温室効果ガスではない別の原因を提示している)すると、ヘンリーの法則により、海から CO2 が放出さる。これが大気中の CO2 濃度の増加の原因だ。
ということだ。
そして、産業革命以降の CO2 上昇も、これで説明できると言いたいみたい。
槌田さんのこの論については、すでにたくさんの人が批判記事を書いている。たとえば、いつもの明日香さんの pdf ファイルに出ている。また、気象学会の学会誌「天気」に、河宮さんが キーリングのグラフの一般向け解説を書いている。(この文章は、なんと、槌田さんのお仲間のウェブページで読める。反論を一緒に掲載するなんて、槌田さんは度量が大きい。)さらに、こちらの海の研究者さんのページも秀逸で、槌田さんの主張にどんなトリックが隠されているかをわかりやすく解説している。そのほかにも、hechiko さんが、この記事に始まる一連の記事で、丁寧に問題点を指摘している。
だから、いつものように、僕が特につけくわえることはないんだ。だけど、ウェブを見ていると、槌田さんの論がいろいろなところで引用されている。
僕は、槌田さんの説を引用して温暖化論を批判している人たちにたいして、
みんな、大丈夫か???
と思った。その理由をおはなししよう。
まず、ヘンリーの法則を見てみよう。前の記事でも書いたが、
水に溶ける CO2 の濃度は、空気中の CO2 の分圧に比例する。
だ。式で書くと、

ここで、C は水中の CO2 濃度。p_{CO2} は、CO2 の分圧、そして、k は比例定数だ。
さて、温度が上昇すると、比例定数 k が小さくなる。つまり、温度が上昇すると、濃度 C を小さくする方向にはたらく。これが、槌田さんが、「CO2 の増加は温暖化の結果」であることの説明。
だけど、本当は、もう一つの変数、二酸化炭素の分圧 p_{CO2} についても考えないといけない。これは、空気中の CO2 の濃度に比例するものだ。こちらの効果も考えてやっと、海水中の CO2 の濃度を説明できるんだ。
それでは、p_{CO2} はどれだけ増加したのか。まず、産業革命前の CO2 は約 260 ppm だったとされている。その一方で、現在の CO2 濃度は 370 ppm 位。たとえば、こちらのページ
これをヘンリーの法則に入れてみよう。p_{CO2} が 260 から 370 に増加したにもかかわらず、濃度 C を減少させるためには、比例定数 k を 30 % 以上へらさなければならない。
k を 30 % 減らすには、どれだけ温度を上げればいいか?槌田さんは k の温度変化の図を示している。(図中、F(t) がこの記事における k にあたる)

出典がわからないから、このグラフが正しい、という自信はない。理科年表を見た感じでは、そんなに間違えていないと思うけど…。でも、ちゃんと調べるのは面倒臭いので、こんかいはこのグラフを信じよう。それに、槌田さんはこの値をベースに議論しているのだから、いいよね。
さて、グラフを見てほしい。だいたいで構わない。0 度の水の k を 30 % 減少させるには、温度が 10 度あたりにならないといけなさそう。20 度の水の場合も、やっぱり 10 度程度上げて、30 度ぐらいにしないといけないみたい。
ということで…
CO2 の増加がヘンリーの法則で説明できる、とすると、産業革命いらい、いったい地球の気温は何度上昇したんだよ!!!
もし、今の気候が 10 度上った結果だったら、産業革命前は氷河期よりも寒い気候だったことになる。江戸時代、日本はどんな世界だったんですか???
それとも、もしかして、CO2 がこれだけ増えた、っていうことは、産業革命以後、200 年程度のあいだに温度が 10 度上昇したのだから、今後の地球温暖なんて、そんなに気にする必要無い、と言いたいのですか???
まさかね。
少くとも、ヘンリーの法則だけによる限り、産業革命以降に起きた空気中の CO2 濃度の上昇は、海洋からの CO2 の放出で説明できないんだ。
もし海洋からの放出で説明したいのなら、もっと複雑なトリックを考える必要がある。まあ、槌田さんは文章の中で深海からの海水がなんとか、ってことを書いているので、それで説明したつもりなのかもしれないけれど、それでは十分ではないんだよなぁ。多くの人が、ヘンリーの法則だと思っちゃうんだよね。
それにしても、ちょこちょこっと数値を代入したら、すぐにわかることだから、ヘンリーの法則を使った説明を信じる人なんていない、と思いたい。でも、槌田さんはとても影響力のある人。多くの人が、槌田さんの言うことをうのみにしている、もしくは、不注意に読んでしまっているみたいなんだ。
槌田さん、だめだよ~。もっと気をつけて書かなきゃ。自分の影響力を軽視してはいけないよ。
たとえば、このブログ記事。宇宙線の量で気温が変わる、ってお話につづけて、ヘンリーの法則を並べて、地球温暖化論を批判している。ごていねいに、比例定数 k のグラフまでも。
「人為的CO2での温暖化説が死ぬ瞬間です☆ 」と、星まで付けて、地球温暖化論を元気いっぱい論破しているのだけど、その元気さがイタイタしい。せっかく書いたのだから、念の為、一応式に代入してみたらよかったのに、と思う。
他には、こちらのブログ記事。こちらもヘンリーの法則を書いている。そして、
このようにちゃんと計算できるにも関わらず、温暖化によって大気が二酸化炭素の量が増えていると主張している人たちがヘンリーの法則を使ってちゃんと計算しているのを見たことがありません。グラフを見て、似てる似てないを議論しているだけです。
なんて書いている。マスコミを通じた愚民化政策にたいする批判なのかな。まあ、それはいいんだけど、まず自分でちゃんと計算してほしかった。式までがんばって書いたんだから…。とっても残念な感じ。
でも、このブログを書いている人、最初に
これから書くことは「よしぞーの考え」であって、証明結論ではありません。
言ってしまえば「よしぞーの思想」です。
これをそのまま信用することはエコ詐欺をそのまま鵜呑みにするのと同じくらい危険で馬鹿げた行為です。
という免罪符を書いておいたのはよかったね。これが書いてあるおかげで、この人のブログを読んで、内容を信頼した人がいたら、悪いのはブログの著者ではなくて、読者だ。
ヘンリーの法則って、そんなに難しいのかな?ちなみに、理系の高校生は化学でヘンリーの法則を習います。だから、それがわからない、ってことは、高校の化学のカリキュラムが理解できない、ってことなんだけど…。
まあ、僕だって偉そうなことは言えない。高校以来ずっと忘れていて、最初、ヘンリーの法則、って槌田さんのページで見たとき、なんだっけ、そりゃ、って思った。でもね、すぐに思いだしたよ。一回自転車に乗れるようになったら、しばらくブランクがあってもまた乗ることができるようなもんだ。
こんなブログを書いた人達も、高校の時、理系だったらなんの問題もなく思いだせたはずなんだけどね。そうでなても、ちょっと調べたら分ったはずなんだ。それとも、純粋文系人間、と自分を規定していて、"法則" なんて名がついているものはうけつけなかったのかな?
それにしても、この人たち、マスコミの事をうのみにしないぐらいの批判精神は持っているのに、槌田さんの言うことはそのまま信じちゃうんだよね。どれだけ槌田さんが強い影響力を持っているか、っていうことがこれでわかる。
ただし、この人たちは、素人さん。さすがにプロの物書きの人たちは、槌田さんにひっかかって、恥をさらしたりしないだろう、と思いたい。すこしウラを取れば、すぐにわかる話だからね。ヘンリーの法則なんて、ググればすぐに出てくる。
だけどね、プロでも引っかかっちゃう人がいるんだ。
池田信夫さん、って知ってるかな?ブログ界、ウェブ界では有名人。IT や、ウェブ関係の評論をたくさんなさっている。東京大学の経済学部出身で、ブログによると、NHK ではドキュメンタリーも作っていたみたい。今は上武大学の教授をやっている。本も何冊も書いていて、僕も「電波利権」ってのを読んだことがある。面白い本だった。
だから、文章のプロだ。IT に強い、ってことは、そこそこ理系にも強いんじゃないかな、と思った。だけど、それでも槌田さんに引っかかっちゃうんだよね。
このページを見てほしい。例の Keeling のグラフが出ているんだな。槌田さんにやられちゃっているよ。
池田さんは、地球温暖化問題が科学的に決着がついていない、ってことを言いたいがために、槌田さんの言っていることを引用したらしい。なにも槌田さんを引用しなくても…。もっとましなことを言っている人は何人でもいるのに、よりによってなんで槌田さんを…。
ヘンリーの法則を調べて、ちょっと式に数値を代入してみる、みたなことはできなかったのかな。まあ、池田さんにとっては難しすぎるか…。
「私は専門家でないからわからない」なんて池田さんは書いてる。これは便利な免罪符だね。プロの文章家を標榜していても、ちょっとでも難しいことがあれば、これを文章にはりつけておけば、間違えていても OK。まあ、さっきは別な免罪符を使っているシロウトさんについて話したれど、それと基本的には同じだね。
よくわからないけれど、これが日本のジャーナリズムのレベルをあらわしているのかな?それとも、池田さんだけがそうなのか?はたまた、池田さんの書くものの中で、毎日書くブログだけは特別なのか?
ははは、皮肉を書いてしまった。でも、池田さんは皮肉をいわれる筋合はないかも。彼は、槌田さんが書いたものだから、信用したんだと思う。そう思うと、池田さんも、槌田さんの被害者なんだよね。
池田さんみたいなひとは引っかかるけど、さすがにメディア、それも理系にそこそこ強いメディアはこんな失敗はあまりしないみたいだ。日経が、新聞や日経サイエンス、ウェブ上のいろいろな記事で、以前読書感想文の中でちょっと紹介した、例の地球惑星連合大会のセッションの記事を載せているんだ。温暖化懐疑論者達が声を上げはじめたって。けど、そこには槌田さんの言っていることは取りあげられていない。セッションで講演していたはずなんだけどね。
いきなり日経をここで取りあげたのは、どれかの記事で槌田さんがよく引くキーリングのグラフを見たと思ったからなんだ。だけど、どうも僕の記憶違いだったらしい。日経は、槌田さんの説を載せていなかった。
槌田さんが参加しておられる「環境問題を考える」というウェブページに、こんな記事が載っていた。槌田さんの同志である管理者さんは、日経新聞の記事を切り抜き、貼りつけている。例のセッションの記事だ。そして、その下に、管理者さんは、
気象予報士会のシンポジウムの記事、この日本地球惑星科学連合大会の記事と、他の商業各紙では掲載されない温暖化騒ぎにどちらかと言えば否定的な集会の記事を掲載する日経新聞には、目端の利いたデスクがいるようです。そろそろCO2温暖化仮説が転んだ時のための布石を打ち始めているようです。
それはともかく、少なくともこのような記事が新聞に掲載されるようになったことは、感慨深いものがあります。もしかすると、情勢が変わり始めているのかもしれません・・・。
と書いている。
この HP 管理者の近藤さんは、「目端の利いたデスク」と書かれているが、そのとおりだとおもう。記事を読んでごらん。丸山さんや赤祖父さんといった、比較的ましな懐疑論者の論だけを取りあげて、このセッションで講演したはずの槌田さんの話は完全にスルーしているのだから。よくわかっている、目端の利くデスクさんだよ。
そうだ、日経といえば、日経サイエンスには、以前、海洋酸性化の話が掲載されていた。
海洋酸性化、っていうのは、CO2 の溶ける量が増えて、海の pH が下がる、つまり、より酸性になることだ。酸性化すると、海洋の生態系が変わる可能性があるんだ。僕の聞いた話だと、炭酸カルシウムの殻を持つ植物プランクトン(海にはそんなやつらがいるんだ) のある種のものが、この酸性化に弱いらしくて、このまま空気中の CO2 濃度が上っていった時に、生きられなくなる可能性があるらしい。だからどうなる、ってことは今後の研究を待たないといけないのだけど、これは海洋生物が吸収する CO2 が変化することで、空気中に溜まる CO2 の量にも影響し、ひいては今後の温暖化の状況にも無関係ではないから、気候学者も注目しているんだ。
でも、気候学者がなぜ注目しているか、なんてことはどうでもいい。ここで言いたいことは、海水中の CO2 が増えている、っていう観測事実がある、ってこと。だれも、温度が上がったせいで海水中の CO2 が減少した、海がアルカリ化してる、なんてことは考えていない。実際、観測でも、海水中の CO2 が増えている、ってことがわかっているんだよね。
この、海水中の CO2 増加は、ヘンリーの法則をちゃんと解釈することで、説明できるんだよね。比例定数 k の変化よりも、空気中の CO2 分圧 p_{CO2} が増加する効果がおおきいってことから海中の CO2 濃度の増加は予想できる。もちろん、定量的な議論をするのはちょっとむずかしい。でも、定性的な議論をすることは可能。単純な議論でも、意外に観測事実を説明出来るんだ。
さて、理系メディアはちゃんと理解している、っていうことをわかってもらえたと思う。だから、理系のちゃんとした人は、槌田さんに引っかからない、と思いたい。
でも、残念ながら、バリバリの理系人間でも引っかかっちゃう人がいるんだよ。
丸山茂徳さん、も槌田さんの犠牲者の一人なんだ。丸山さんについては、以前、このブログで、「科学者の 9 割は「地球温暖化」CO2 犯人説はウソだと知っている、を読んで」 で、その御本の一冊を紹介した。その記事でも書いたけど、丸山さんは東工大の教授で、一流の地球物理学者。
ここで取りあげるのは、「「地球温暖化」論に騙されるな! 」。その中で、丸山さんは、例のキーリングのグラフを示している。そして、その説明として、そのものずばりの言葉こそは使っていないものの、ヘンリーの法則を用いて説明している。
丸山さんは、炭酸飲料のたとえを使っていた。空気中に炭酸飲料を放っておくと、気が抜ける。つまり、CO2 が空気中に放たれる。もっと CO2 を炭酸飲料から出そうと思ったらどうすればよいか?温めればいい。
海も同じ。気温が上昇したせいで、空気中に CO2 放出された。
ね、ヘンリーの法則で説明している。槌田さんにやられて、高校化学レベルのことを誤解していることがばれちゃった。
まあ、でも、丸山さんがひっかかるのもしかたないのかな、とも思う。ちょっと同情。
丸山さんが例に出したとおり、空気中に放っておいた炭酸飲料から、さらに気を抜くには、温めれば良い、というのは、正しいんだ。でも、それが海の場合はそうじゃない。
どうして違うのか。それは、炭酸飲料から空気中に CO2 が出ても、空気の CO2 濃度の変化が無視できるのに対して、海から CO2 が放出されたら、大気の CO2 濃度が変化してしまうからなんだ。つまり、炭酸飲料の場合は、いくら CO2 を出しても周りの条件を変えることはないのに、海は CO2 を出すことによって、自ら周りの条件を変えてしまう。
実は、ヘンリーの法則は、大学入試の化学において、重要な位置を占めている。なぜかというと、ややこしい計算問題を作ることができるからだ。
たとえば、こちらのページ。
密閉した容器の中の水に、CO2 が気体が溶けこんでいた。その容器を温めると、どうなるか?
密閉容器の問題では、水中から出てきた CO2 のせいで、水に接していた空気中の CO2 の分圧が変化する。だから、方程式を立てて解く必要がある。大学入試的には、温度を変えたことで、空気中の CO2 の分圧をボイル・シャルルの法則かなにかを用いて計算する必要があったりもするので、より複雑な問題が作りやすい。
だから、化学で大学を受験しよう、っていう理系の受験生には、ヘンリーの法則はおなじみだ。
槌田さんの間違いには、意外に大学教授よりも受験生の方が気づきやすいのかもしれないね。
とはいえ、丸山さんは、恥しい思いをしてるんじゃないかな。どうしてかというと、丸山さんは、この本のあと、ヘンリーの法則には触れていないみたいなんだ。その辺のことは、温暖化研究者の吉村じゅんさんのウェブページで議論されている。
たぶん、丸山さん、気付いちゃったんだよね。こういうことは、気づかない方が幸せなのか、それとも気付いたほうが幸せなのか…。よくわからないけど、誤解の再生産を防ぐ、っていう意味からは、気付いてくれた方が良いと思う。本人の気持ちはともかく。
ということで、いろいろ見てきたけど、世の中には槌田さんにひっかかって、高校レベルの化学がわからないことを図らずも自ら暴露してしまった人が、たくさんいるんだ。
槌田さんって、ひどいと思わない?
それでも、槌田さんが心の底から、CO2 の増加をヘンリーの法則で説明できると思っているなら、ちょっとは罪が軽いと思う。だけど、本当は、ヘンリーの法則では説明できないことを知っているんじゃないかな…。
「季刊 at」っていう雑誌に、槌田さんが寄稿した論文がある。
ここで、槌田さんは、"大気中の CO2 は、深海水から補給され、深海水に戻る" っていう節を立てている。地球の海が平衡ではない、ということを書いている。そして、
大気中の CO2 濃度は化石燃料の燃焼や森林破壊とはほとんど関係がなく、主に気温 (海面温度) が決めるとしてよいと思われる。
なんて、その節を結んでる。僕にはいまひとつ槌田さんの言いたいことが分からないから断言できないのだけど、単純なヘンリーの法則だけで説明できないことを知っているみたいに思える。だけど、その割には、海から CO2 が大気中に出てくるメカニズムをあやふやにしか説明してないんだよねぇ。
他の槌田さんの文章もそうだけど、もし槌田さんが単純に説明できないと思っていたとしても、これじゃ、ヘンリーの法則の印象がつよくて、読んだ人がのきなみ引っかかってしまうのも無理無いと思うんだ。
なお、この「季刊at」っていう雑誌は、柄谷行人さんや、上野千鶴子さんなど、日本の論壇を代表する論客の人達によって編集されているみたい。 Wikipedia の記事だと、柄谷さんが槌田さんに注目しているみたいなんだよね。
「季刊at」の at は、オルター・トレードの頭文字らしい。槌田さんの温暖化批判は、alternative、現代の科学とは一線を画している。オルター・トレードが何を意味しているのかはよく知らないけれど、もしオルタナティヴなサイエンスも指向しているのなら、の雑誌では、高校の化学なんて超越した内容が期待されているに違いない。槌田さんの論文を発表する舞台として、とてもふさわしいと思うよ。
さて、話を戻して、最後のまとめに入ろう。
こんなにたくさんの犠牲者をだしたことを考えるに、やっぱり槌田さんはひどいと思うよ。
もし、説明できないことを知っていて、もしくは、説明としてたりないことを知っていて、それでも CO2 の増加をヘンリーの法則で説明しようとしているなら、悪質だ。
もし、心の底から CO2 の増加をヘンリーの法則で説明できる、と信じているなら…。周りの人、教えてあげようよ。槌田さんは批判者の言うこと聞かないんだからさ。
槌田さんの言っていることを真に受けて、地球温暖化論を批判する人は多いんだ。そして、高校レベルの化学が分かっていないことを自ら世間に公表することになっちゃってる。シロウトのブロガーさんから、プロの文章家、果ては理系の大学教授まで、あまりにも多くの引っかかった人達を見かけて、僕の心には、「死屍累々」とか「枕を並べて討ち死に」っていう言葉がうかんだ。
季刊 at のような雑誌を読む人はともかく、多くの人は、槌田さんの議論を、オルタナティブではない、普通の科学として捉えると思う。そんな人達は、素直に槌田さんのことを信じて、足をすくわれちゃうんだ。
もうこれ以上、自分の恥をさらす犠牲者を出しちゃいけない。懐疑論者のみなさん、お互い、注意しあってね。
そして、槌田さんのお仲間の方々、もしこのブログを読んでおられたら、小さなおねがいを聞いてください。槌田さんが温暖化に反対するのはいいのですが、せめて、ヘンリーの法則を使うことだけは、止(と)めてあげて下さい。
これ以上、犠牲者を出さないために…
しかし、20で大気中の二酸化炭素濃度を380ppmとすると海水中の二酸化炭素濃度は、0.652ppmと計算されます。一方、気象庁の海水面付近の海水中の二酸化炭素濃度は320ppm程度であり、ヘンリーの法則からは到底説明できない高い値を示しています。大学の先生なら、ヘンリーの法則を出す前に観測値と合っているかすら確認せずに出すのでは、まったくの信用失墜ですね。恥さらしです。学生の論文なら落第点でしょう。
それにしても、槌田さん、近藤さんとももっと慎重に議論してもらいたいところです。qqme9839さんのおっしゃるとおりで、あのお二人は、ちょっとうかつだと思います。
# ところで、0.652 ppm と 320 ppm を比較するのは
# ちょっとまずいような気がするんですが…
# 僕の勘違いかな?
そういえば先日、槌田さんはご自身の論文が載らないからと言って、気象学会を訴えたそうですね。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090527/trl0905272004015-n1.htm
論文を掲載されないということは「著者(槌田さん)が学会の修正要求にちゃんと答えることができない」ということを意味しています。学者としてはこれは恥ずかしい話だと思います。
馬脚を現すとはまさにこのことですね。
槌田さん、気象学会を提訴って、すごいですね。ニュースを見たとき、思わず笑ってしまいました。なにをなさりたいんでしょうね??リジェクトで慰謝料がもらえるなら私なんて大金持ちだ、と書いていた人を見かけましたが、まったく同感です。
MANTA さんのブログは、よく拝見しています。普通の人が研究現場の雰囲気にふれられる、MANTA さんのようなブログを書く温暖化の研究者が増えれば、槌田さんのような人が動き回る余地が少なくなると思うのですが…。
それはそれで楽しいことです。
槌田氏のことはもうちょっとしたらブログにアップする予定です。明日か、明後日か?しかし最近忙しいので週末かも…泣
では!
すみません、MANTA さんが温暖化研究者じゃないことは知っていました。
でも、僕のコメントじゃそうは読めないですね。
自分の貧弱な文章力に orz
槌田さんのこと、期待しています。でも、お忙しいなら無理なさらずに (^o^)
たいへんおくればせながらトラックバック打たせていただきました。
# ちょっとまずいような気がするんですが…
# 僕の勘違いかな?
海水中の二酸化炭素濃度は、水に対するものと
全然違うわけですから、
新しく考察してもらわないと、槌田さんがトンデモ
と言われても、ね。
こんな過疎ブログへようこそいらっしゃいました。コメントありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
> 海水中の二酸化炭素濃度は、水に対するものと
> 全然違うわけですから、
えっと、海水と水との違いを指摘しようとしたつもりではないんですが…。やっぱり僕が何か勘違いしているのかなぁ???
海の研究者ブログにもそう書いてありました
脅威かどうかなんてわかりませんよねぇ~。人や立場に依るでしょう。
寒いのが嫌いな私の知り合いは「viva! 温暖化」と言っていました。
暑がりの私にとっては脅威です。あと、国際社会にとっても
全体としては脅威だと思います。
あらあら、怒らせてしまったようですみません。
後学のために、どのあたりが無礼に感じたかを具体的に教えていただけると幸いです。どうぞよろしく。