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今日は、「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」全 3 回のうちの 2 回目でございます。またまた長くなりました。これを読まなくても第 3 回を読めるようにしたいと思いますので、お暇な人だけどうぞ。

1 回目をごらんになっておられない方は、どうぞ先におよみください(こちら)

「環境問題は~」の第 3 章は、地球温暖化問題にあててあります。第 1 回で指摘した点を、この章に絞って詳しく見ていくことにしましょう。

この章、実は批判しうる点はあまたあります。しかしながら、すでにウェブ上にはたくさんの批判があふれていますので、わたしがあらためてするまでもございません。興味のある方におかれましては、たとえば「武田邦彦 温暖化」などで検索してごらんになって下さい。武田さんの応援サイトと同じくらいのわりあいで批判サイトが出て参ります。いくつかを開いてみれば、詳細な指摘が見つかるでしょう。

この記事では、北極の氷をメインに、事実の指摘、というより、私が批判しようとするといかにぐだぐだになってしまうか、を見ていただいて、批判の難しさについて理解していただくと同時に、私のだめさ加減をお楽しみいただければとおもいます。いえ、楽しむ、なんていうことにはならず、いらいらが溜まること請け合いですが、それもこのブログの特徴、と思って、筆者に石などお投げにならないで頂ければ幸いです。

それでは、「環境問題は~」の第三章で、北極の氷はどのようにあつかわれているのございましょうか。見てみましょう。

まず、この章は、1984年元旦の朝日新聞の仮想記事から始まります。その記事には、2034 年の新聞に載るだろう、という但し書きもとに、海面が上昇し、巨額の費用をかけた首都移転を迫られるだろう、ということが描かれているようです。また、海面が上昇したところを写した架空の航空写真が掲載されて、今にも東京が沈没しそうな印象を与えたそう。

武田さんが、この朝日新聞の報道がきっかけとなり日本に温暖化報道の波がおしよせた、と考えているように読めました。私にはちょっと信じられませんが。

章冒頭の朝日新聞の記事から、南極の氷などに関する論評などを少しはさんで、問題の北極の氷に関する記述が出て参ります。ここでは、新聞などにみられる、極地の海氷の融解に伴う海面上昇の記事は誤報である、として、「記事には「北極の氷が溶けて海水面が上がる」と書いてあるが、北極の氷が溶けても海水面は絶対に上がらない」と一刀両断にして、その理由の説明に、「アルキメデスの原理」を用いています。

続いては、アルキメデスの原理の説明となります。武田さんは、これは、2200 年前から知られていた原理であり、「科学が軽視された中世でもアルキメデスの原理が否定されたことはない」などと述べられ、まるでこの原理を無視したり忘れたりするのは、中世人以下である、と言わんばかりでございます。その次には、コンパクトにまとまった、アルキメデスの原理の静力学、静水学的説明。分かりやすい。

さらには、図表 3-4 として、「アルキメデスの横顔が描かれたフィールズメダル」が掲載されています。フィールズ賞、数学におけるノーベル賞ともいわれる、権威のある賞でございます。そのメダルに彫りこまれたアルキメデス。彼の発見した原理がいかに重要であり、また、知れわたっているかを読者に知らしめる、まことに心憎い演出でございます。

その後、また少し南極の氷に関する論評をはさみます。ちなみに、武田さんは、南極の気温が上昇すると、南極上空の水蒸気の量が増え、故に降雪量が増加し、一方で温度が上がったとはいえ 0 度を越えることがないので、南極の氷は溶けず、結果、南極の氷が増える、つまり、海面が下る、とされるお立場。

そして、北極と南極の氷が海面上昇に与える影響について、マスコミと環境省を批判なさっておられます。

まず、IPCC 報告について触れてあります。IPCC の正統性(注意していただきたいのですが、この本において、武田さんは IPCC を批判していません) を語ったあと、IPCC は海面上昇に関して北極の氷にほとんど触れていない、南極の氷に関してはわずかながら海面を下げる方向に働くと書いてある、と述べておられます。そして、IPCC の報告書から表を持ってきて、海水面上昇は氷の融解ではなく海水の膨張による、と結論付けておられます。

一方で、マスコミや環境省は、IPCC の言っていることをねじ曲げている、とのこと。新聞報道には、沢山の温暖化問題記事があふれ、その中では「極地の氷が溶けると海面が上昇する」と述べられているそうです。環境白書にも、同様の記述があるそうです。

さて、武田さんの本によると、北極の氷のことで憤慨した正義感に燃える学生さんが、環境省に電話したそうです。IPCC は北極や南極の氷が海面の上昇に効かない、としているのに、なぜ環境省はそれと反対のことを言うのか、と電話に出たお役人を問いつめた。最近の言葉で言うと、「電突」というのでしょうか?(「電凸」?)。応対したお役人は、IPCC が北極の氷のことについて、「長かったので省略した」などとたわけた回答をした由にございます。

この学生が官僚に電話をかける部分、この章でもっとも印象深い点かと思います。若く無垢な学生が、意図的に誤解を生みだす官僚組織に怒りをぶつける。武田さんは、「筆者ぐらいの年になると「役人はそんなものだ」と飲み込むこともできるが」などとすれている様子を見せつつ、学生さんを引き立たせておられます。学生の正義感と科学的事実に真摯な姿勢役人の科学をねじ曲げて説明にならない言い訳をする卑劣な態度、この二つの対比は見事でございます。武田さんは、環境省の行いを詐欺、世論操作、粉飾、偽装と述べ、「これが犯罪でなくて何だ」と糾弾しておられます。

さて、武田さんの極地の氷、中でも主に、北極の氷に関する記述について見てきました。ここで指摘すべきは、本当は「北極の氷」が溶けると、海面が上昇する、という点かと存じます。なぜなら、他の論者の方も指摘されておりますが、グリーンランドに大量の氷があって、それは海氷ではなく陸上の氷、つまり、アルキメデスの原理と関係のない氷だからです。

すると、ここで問題になるのは、グリーンランドは北極か?ということでございます。私には、この文脈でグリーンランド北極に含めないのは違和感がございます。読者の皆様はいかがでしょうか?

地球上で氷が蓄えられているのは、「北極」と「南極」ではないでしょうか。もちろんその他には山岳氷河などもございます。しかしながら、氷が主に存在するのは「北極」と「南極」、対になっており、自然に感じます。もし、北極にグリーンランドを含めない場合、そのときは、地球上で氷が蓄えられている主な場所は、「北極」と「グリーンランド」と「南極」となるわけですが、それには私は違和感をいだきます。

あれれ、でも、北極の海氷は、面積としては大きいのですが、厚さは最大で 5 m 程度にしかならない、平均するともっともっと薄い。1000 m 単位で氷が積み上がっているグリーンランドとは比べものになりません。とすると、「南極」と「グリーンランド」とすべきでしょうか。すると、今度は不思議としっくりくるような気もして参りました。「北極」と「南極」ほど自然ではありませんが…。

うーむ、とはいえ。「グリーンランド」の氷を北極の氷としてよいか否かは、人による、または、文脈による、としか言えないのでしょうか。だから、ここでは言葉遣いに注意して、慎重に書くべきでは、と武田さんに言いたいところでございます。

グリーンランドの件に関しては、こちらのページで武田さんが反論を書いておられます。その中で、北極の氷と言った場合、ふつうは北極海に浮かぶ海氷を想像されるだろう、とのこと。一般の報道でも、北極の氷と言う場合には海氷を扱っていることが多いそうですし、また、IPCC もグリーンランドの氷床は北極と分けてあつかっている。だから、グリーンランドについて触れなくても良いのだ、と。その上、「北極の海氷」と本文中にあることをもって、グリーンランドの氷を除外しているのだ、と述べておられます。

これが理由になっているのかどうか、私にはわかりません。ただ、あまりこだわるとすでに長いこの記事がさらにながくなってしまいます。弁明になっていない、と断定することもできないので、とりあえず受け入れて先にすすみましょう。

もちろん、武田さんの言うことを受け入れた上で、グリーンランドにある陸氷のことを述べないのは、誤解を招く、グリーンランドの陸氷が溶けたら、海面が上昇することを触れておくべきだ、という批判は可能でしょう。

しかし、これには次のように反論されそうです。

確かに IPCC の予測では、現在観測されている海面上昇は海水の膨張によるものとしている (武田さんもその通り指摘している)。さらに、今後 100 年の予測においても、第 4 次報告書では、不確実性が高いとしながらも、海面上昇に対する氷の影響は小さいとしている。それを考慮しても、グリーンランドの氷のことを強調すべきなのか?

この武田さんを支持する論点については、次のように抗弁することが可能でしょう。温暖化が起きて、さらに続いたら、数百年後には、最終的には南極や北極、おやおや、ここでは北極ではなくグリーンランドとすべきですね、それらの氷が、あらら、氷というのは陸上の氷のことです、が溶けて、海面が上昇する、というのは間違い無いとおもいます。武田さんは全く述べておられませんが、過去の温暖な時期には海面が上昇していた(縄文海進など) という事実があるわけですから。

# どんどん文章がぐだぐだになってきています。申し訳ありません。

だから、IPCC の言うことにかかわらず、グリーンランドの氷が溶ければ海面が上昇する、と武田さんを批判することも可能でございましょう。それでは、これが決定打になるでしょうか?

いえいえ、そんなに甘くない、それに対しても良い反論があるのでございます。と申しますのも、現在問題になっている地球温暖化とは、おもここ数十年から 100 年程度のものなのですから。それより長いタイムスケールの海面上昇は、分けて考えるべきでございましょう。そして、当然武田さんもこのあたりの事情はご存知でございまして、氷の話ではないですが、温暖化は問題ではない、急激に変化するのが問題である、との記述がございます。

つまり、世間一般で議論している温暖化においては、グリーンランドの氷はさして影響をあたえないのです。

# あくまで IPCC の予想。IPCC はこの予想を不確実だと考えています。なお、氷については、微妙な問題がたくさんございます。いつかまとめてこの blog で勉強してみたいと思います。

ということで、グリーンランドの氷については、指摘することはできましたが、武田さんの論の中では、北極に含むべきか定かではない、北極に含めたとして、今議論されている温暖化では海水面上昇についてあまり影響なさそう、という反論が成立してしまいます。

かように武田さんへの批判は難しい。申すまでもございませんが、この北極の氷に関する点は、私以外の人もさかんに批判されていますし、武田さんも当然気づいておられまして、この点への批判は、先にも示しました彼のウェブページの記事 においてとりあげられております。そこでは、北極、グリーンランドについての論点を「小さな点」と述べておられます。

蛇足ながら書いておきますと、こちらの記事にもやはり、グリーンランドの氷が溶けると海面が上昇する、などというようなことは一言も書いてございません。

以上、「環境問題は~」の温暖化の項、北極の氷の話ついて、お話をして参りました。

武田さんを批評しようとしましたが、うまくいきませんマチガイの部分を突こうと思っても、そのすぐとなりにあるホントまで突き刺してしまいます。仮にうまくマチガイだけを突き刺すことができたとしましても、結論には大して影響を与えない、ということになってしまいそう。

上の批判の場合は、グリーンランドの氷のことを指摘しても、それを北極にふくめるかふくめないか、の言葉遣いの問題という重箱の隅への指摘になってしまう。北極に言及してグリーンランドのことを言わないのは、読者の誤解を招きかねない、という点で「マチガイ」でしょう。しかしながら、たぶん武田さん信者の心にはとどかない。また、この「マチガイ」を指摘しても、今後 100 年程度の温暖化では IPCC によると、グリーンランドの氷は影響をあたえそうにないわけで、すると武田さんのマスコミや環境省への批判はそれなりに正当。つまり、この議論において、「グリーンランドは無視できる」という「ホント」まで、「マチガイ」の指摘がひっかけてしまうのです。

どうでしょうか?非常にうまく、「マチガイ」と「ホント」がならんでいませんでしょうか?これが、先の記事で「霜降り肉」と形容したところでございます。

私の試みた批判は失敗してしまいました。それだけではなく、いろいろと考慮しないといけないことが多くて文章がぐだぐだになってしまいました。私には、武田さんの本に有効な反論を著すことが無理なようでございます。ましてや、切れ味の良い文章ベストセラーを書いて印税生活なんて夢のまた夢…

武田さんの本の批判は、実は、ウェブ上にあふれております。また、武田さんがとりあげた分野の多くで、その道の専門家たちは、武田さんの言はとるにたらないと思われているようでございます。

しかしながら、一般の読者には池田さんの意見が広く浸透しているのではないでしょうか。そして、多くの忠実な読者を獲得している模様でございます。

この読者たちには、ウェブ上の批判も専門家の説明も届かないでしょう。たとえ読んだとしても、批判者は揚げ足取りに終始して、武田さんの評判を落としたいだけだ、と思うだけでしょう。

「グリーンランドの氷?そんな細かい言葉の問題で武田さんを攻撃して、なに考えているんだろう、この人達。それに、結局温暖化しても氷のせいで海水面があがるなんてことはないんだし。」

上に書いた私の批判を読んでも、こんな風におもわれてしまいそうでございます。

もちろん、批判は重要ですので、ネット上にみられる多くの批判について、とやかく言うつもりは全くございません。ただ、今のところ、ちゃんと武田さんの信者に対して影響力があるような批判にはお目にかかっておりません。もちろん、これは全くの私見ですが…。

さて、「環境問題は~」でみられような、批判を難しくする「霜降り肉」構造は、温暖化懐疑論の本では、広く見られるような気がします。ただ、ここまでみごとに批判を難しくしている本は少ないと思います。たとえば、以前取り上げました、丸山さんの奇書がございましたが、あの本などかわいいものでございました。(
武田さんの本を越える本をご存じの方がいらっしゃったら教えて下さい。)

私見ですが、これが武田さんの本のすごさなのでございます。

またまた長くなってしまいました。第 3 回では、あらためてこの本について論じたいと思います。いったいこの本は何者なのか。そして、武田邦彦さんとはいったいどんな存在なのか、について。

今宵はここまでに致しとうござりまする。

追記

本文で取りあげた、武田さんの環境省のお役人への批判は、やりすぎかな、と思います。その点についても書いていたのですが、やはりぐだぐだになってしまったのでここでは掲載しません。ただ、「温暖化したら海面が上昇する」というのはウソと断じるのは少々無理があることと、その場合に環境白書に書かれるべき言葉遣い、つまり、お役人がよく書く、あらゆる可能性をとりあえず網羅している官僚言葉の文章においてどう表現されるべきか、という観点とを鑑みますに、環境白書の文書はそこまで非難されるべきかな、という気がします。

もちろん、武田さんもそんなことは先刻ご承知。「役人はそんなものだ」との言葉が本の中でも書かれております。それにもかかわらず、このような環境省批判を載せたのは、つまり、確信犯だということでございます。

この本と環境白書とのことについては、きちんと調べた方がいらっしゃいます。(こちらのページこちらこちらも御参考になさってください。)また、コメント覧には武田さん信者とおぼしき方が書きこまれています。こちらもおもしろいです。

追記2

続編の内容の変更にともない、若干記述を修正いたしました (2008年9月28日)

タグ 記事:環境問題はなぜウソがまかり通るのか はてなブックマーク - 批判を試みて失敗してみました --- 「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」を読んで (2/3)
2008.09.26 Fri l 読書感想文 l COM(2) TB(0) | top ▲

コメント

引用どうもです
始めまして。
こんなところに引用されていましたか……

最近も、IPCCのARと、環境白書、教科書の記述の違いの原因を、環境省のせいと断言しておられるようで、よくわからないです。
http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/41437842.html

武田さんは結局、環境省を叩きたいだけなのかなぁ、と思えてしまいます。武田さんも、もう少し調べてから、ブログ記事にされると良いと思うのですが。

onkimoさんは「道徳」の本というご結論に達されたようですね。なるほど。
そういえば、学校の「道徳」の本には、「水からの伝言」も掲載されているようですが、科学とは縁遠いようで・・・
2009.08.01 Sat l 綾波シンジ -. URL l 編集
Re: 引用どうもです
綾波様

> 始めまして。
> こんなところに引用されていましたか……

初めまして。綾波さんのブログは、これまでにも訪問させていただいておりました。よく調べておられるので、参考になります。

> 最近も、IPCCのARと、環境白書、教科書の記述の違いの原因を、環境省のせいと断言しておられるようで、よくわからないです。
> http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/41437842.html
>
> 武田さんは結局、環境省を叩きたいだけなのかなぁ、と思えてしまいます。武田さんも、もう少し調べてから、ブログ記事にされると良いと思うのですが。

おっしゃることに全く同意します。

> onkimoさんは「道徳」の本というご結論に達されたようですね。なるほど。

こんな無駄な長文系おばかブログを読んでいただき、ありがたいやら申し訳ないやら…
とにかくお礼を申し上げます。

温暖化懐疑論が科学の議論を標榜しつつ道徳の話に"堕してしまう"ことはよくあることですが、武田さんの本はその典型だと思います。

> そういえば、学校の「道徳」の本には、「水からの伝言」も掲載されているようですが、科学とは縁遠いようで・・・

「水からの伝言」が、ですか…。あらら…。

なんか、世も末、という気がしてきますね。
2009.08.01 Sat l onkimo -. URL l 編集

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