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これまで、いろいろなモデルを紹介してきた。ざっと見てみよう。

まず、最初に紹介したのは、エビちゃん。こちらは、太陽の熱を地球が赤外線としてそのまま宇宙に返した場合、地表の温度は何度になるか、を考えたモデルだ。地表の温度を考えるための、もっともシンプルなモデル。

これに、大気をかぶせたのが薄着モデル。大気が赤外線を出して地球を暖める際のエネルギーの流れを描いた、温室効果を考える上での最もシンプルなモデルだ。

そして、厚着モデル。温室効果ガスがどんどん増えて、赤外線の吸収、再放射が増えたらどうなるか、をクリアに説明する。温暖化した際に起きることの一面をくっきりと切り取ったモデルだ。

最後に、薄着モデルからすこし戻って、スケスケモデルを紹介した。大気が赤外線を一部宇宙に漏らしてしまう場合、何が起こるのかを示したモデルだ。これも、温暖化した際に起こることを映し出している。
* * *

以上に述べてきたモデル達の多くは、地球をうまく表現できていたわけではない。エビちゃんは地表の温度を低く見積もりすぎ、薄着、厚着モデルは高く見積もりすぎている。スケスケモデルだけがかなりよく地球の表面温度を再現していた。

でも、モデル達の存在価値は、地球を忠実に表現しているところにはない。前の記事にも書いたように、スケスケモデルの良さは、決して地球の気温を正確に再現しているところにあるわけではなかった。それよりも、いくつかの過程を、いくつかの物理をクリアに表現しているから、美しいと僕は言っている。

ここ、重要だからおぼえておいてほしい。モデルの価値は、物事をクリアに表現することにある。忠実さ、には重きを置かれていない。

これまで見てきたモデル達はどれも、昼と夜があることとか、緯度による気温の変化とか、地軸の傾きとか、地球の軌道が楕円である効果とか、軌道と地軸の関係であるミランコビッチの効果とか、陸と海の分布とか、赤道で大気が暖められて中緯度で降りていく効果とか、地表の河や湖や植物の葉、そして海洋から水が蒸発した後空気中で凝結して雨を降らせる効果とか、雲が赤外線を吸収する効果とか、宇宙線が雲の性質に影響を与えるスベンスマルク効果とか、いろんなものを無視している。

これらはどれも地球の気候に重要な現象、もしくは重要だと声高に叫ばれている現象だ。それらをばっさりと無視したモデルは、役に立たないのではないか?

いや、役に立つ。

無視した結果、地球の温度がぴったりと得られなくなってしまった。でも、その代わり、クリアに物理が表現された。

考えてほしい。エビちゃんにミランコビッチ効果とかスベンスマルク効果が入っていた場合を。そして、そのエビちゃんとはもはや言うことのできないごてごてと贅肉のついた、ぼんやりとした顔立ちのモデルにに大気をかぶせて薄着モデルを作った場合を。温室効果についての洞察が得られそうな気がするだろうか?

物事を理解して行くには、すくなくともある段階では忠実さよりもクリアさの方が重要なんだ。そのために大事なのが「必要十分」。プロセスを表現するために必要なものを取り込みつつ、十分以上の現象を取り込まない。

ここ、大事。モデルに求められるのは必要十分。無駄なことはばっさり切ること。

さて、いろいろ言い訳しながら書いてきたものの、僕は地表の気温を調べるとして、これまでのモデル達を紹介してきた。なのに、地球の温度がきちんと与えられていない、なんてことをしゃーしゃーと言っている。また、スケスケモデルについても、ぴったりと地球の温度を与えたことは評価しない、なんてことを言っている。

でも、こう思う人もいるのではないか。onkimo は地球と全然違って良いなんて言っている割には、実際の地球に対応する太陽定数やアルベドを使っていたではないか。地球のことを正確に表現するつもりだったんじゃないのか?

おっしゃることはごもっとも。確かに地球を念頭にモデルを作っている。なぜそんなことをする必要があるのか?

実際の地球と一致することを重要視しているわけではない。だからといって、数値を合わせることを軽視しているわけでもない。

これはあんまり説明してこなかったけど、実は、モデルが地球とどれだけずれているか、ということからも、いろいろな情報が得られたりするんだ。

ここで大事なのは、「どれだけ」ということ。それには、地球に対応する値を使ってモデルを作った方が良い。地球からはずれた値を使っていると、ずれがモデルのせいなのか変な値を使ったせいなのか、よくわからなくなるからね。

で、今まで言っていなかったけれど、「どれだけ」を調べるには、モデルが数字を返してこなければならない。より固い言い方をすると、「定量的」ということだ。ちなみに「定量的」に対する言葉は「定性的」。たとえば、「雨が降っている」というのは定性的な表現。一方で、「一時間に 5 mm の雨が降っている」というのは定量的な表現。

よく考えてみると、僕は変なことを言っているんだよね。モデルは「定量的」に作られるべき。でも、それがモデルが説明すべき対象と「定量的」に一致している必要はない。モデル達が地球の気温と一致している必要はない、というのはこの考えからだ。それよりも、「定性的」なことこそ読み取られるべきだと思う。大気があると温室効果で気温が上がる、といったようなこと。

でも、そうはいっても「定量的」なことも読み取られるべきではあると思う。なんというか、「物理のセンス」といったものを働かせる余地を作るためだ。

たとえばエビちゃんモデルが実際の地球の気温より低い答えを出した。30 度くらい低かったわけだ。これが 3 度低いだけだったら、僕はかなり満足して、他に地球の温度に大きな影響を与える効果はなさそうだと結論したと思う。もし 200 度も低かったら、太陽がエネルギー源でそれを赤外線で宇宙に捨てているというメカニズム自体を疑ったかも知れない。

それが、30 度。これから、太陽熱源、赤外線冷却という基本線は間違っていないだろうと僕は思い、そのうえで何か重要なことが欠けている、と考えた。まあ、答えを知っているからそう考えたわけだけど。

この、何度離れていたらどうである、というあたりの感覚は僕がみんなに教えることはできない、「物理のセンス」と呼ぶべきものなんだけど、定量的にモデルができていると、このセンスを働かせることができるんだ。

言いたいことが散漫になってきた。ざっくりまとめると、重要なことはこうだ。モデルの結果は、基本的には定性的に語られるべき。とはいえ、モデル自体は定量的に作られるべきで、その結果も定量的に語られる余地が必要。

* * *

さて、話題を変えよう。僕は、紹介してきたモデル達が「美しい」と述べてきた。どうしてそんなことが言えるのか?だって、地表の温度を求めるモデルで、たとえぴったり温度を与えても、それで正しいかどうかなんてわからない、と僕は言った。

実は、モデルにはそれ自身の、妥当性とか正当性とか、そういったものを証明するだけの能力はない。どうして僕がこれまでにあげてきたモデルが美しいとか言っているのか、という理由は、それらが地球の気候の一側面をクリアに表現していることを知っているからだ。

ここ、大事。モデルは自分自身の正当性を証明できない。

こんな例を考えてみよう。たとえば、地球の奥深くからもたらされる地熱は平米あたり 0.08 W のエネルギーを供給している。これを、太陽からのエネルギー 238 W の代わりに厚着モデルに入れてやって、層数を 4850 層としてみる。すると、14.5 ℃ぐらいの気温が得られる。

この、地熱を熱源とする、いわば低体温着ぶくれ厚着モデルは、かなりよく地球の気温を再現しているのだけど、これはだれだって間違っていると思うだろう。でも、どうして間違いだと言えるんだい?

それは、たぶん、あなたが日頃太陽が照ったら気温が上がって、夜になったら気温が下がって、というようなことを体験していて、地熱が重要な役割を果たしていないことを知っているから。

でもね、モデルをどれだけ細かく見てもそんなことはわからない。スケスケモデル、低体温着ぶくれモデルいずれも、結果だけ見ると、地表の気温はきちんと表されているし、一方でモデルの中には論理的な矛盾は見つからない。モデルの中をどれだけ詳しく調べても、それと自然が対応しているかどうかなんてわからない。全く対立するこの二つについて、モデルからの情報だけではどちらが正当であるかを判定できないんだ。

さて、この「モデルは自分自身の正当性を証明できない」ということから、僕がこの記事で述べるポイントの中で最も大事だと思う、そして、みんなに忘れてほしくないことが導かれる。

それは、

「モデルは答えを"知っている"ことにしか適用してはいけない

ということだ。特に大事だと思うから、改行して文字も大きくして強調してみた。

さっきの例でも、僕は地球がどんなものかある程度知っている。だから、太陽光+スケスケモデルは比較的地球のことをよく表していることがわかるし、地熱+厚着モデルが地球とかけ離れていることがわかる。

もし地球のことを知らなかったら。どちらが正しいか、なんて言うことはできない。

とはいえ、「モデルは答えを"知っている"ことにしか適用してはいけない」という表現はかなりの誤解を生みそうだ。一応言っておくけど、この手の短い言葉の常で例外がないとは言えない。それに、この "知っている" という単語、日本語でちょうど良い表現がなかったからもっとも近い"知っている" を使ったけど、本当はもっともっと微妙なニュアンスが含まれている。このシリーズ記事の中で、その辺を表現できたらいいなと思う。

もう一つ、誤解を招きかねないことをここで言っておこう。

「モデルは答えを"知っている"ことにしか適用してはいけない」と書いたけど、これは、逆に言えば、「モデルからは"知っている"答えしか出てこない」ということでもある。

たとえば、エビちゃんから薄着モデルを作ったとき。ここで、もし大気を加えたことによって地球の温度が下がってしまったら???おかしい。何かがおかしい。そう思って、僕はモデルを端から端まで眺めて間違いを探し求めただろう。そして、もし間違いが見つからなかったら、このモデルを捨てていただろう!

もう一度言っておく。「モデルからは"知っている"答えしか出てこない」。誤解をされそうな、でも、とても重要なポイントの一つである。

一つコメントを。現在研究されている段階の、まだ結論の出ていない現象について立てられたモデルはどうするのか?たとえば、最近発見された現象について立てられたモデルは正当化できないのか?

その通り。現段階では正当化できません。そして、それこそが、学問の最先端なのだよ。モデルを唱えた学者達が必死で正当化しようと、これまでの観測を調べなおしたり、新たな観測計画を立てたり、対立するモデルと差別化を図ったり、もうすこし複雑なモデルを使って調べたりする。この様な活動は、科学の、少なくとも物理系科学の重要な部分を占めている。科学者の苦しみも喜びも、ここに詰まっている。

思うままにいろんなことを書いてきた。言い足りなかったこともあるけど、ここに重要ポイントを改めてまとめておこう。

○モデルはできる限りシンプルかつクリアであるべき
○モデルに求められるのは必要十分、無駄はばっさり切ること。
○モデルの結果は定性的に語られるべき、でも、モデル自体は定量的で、物理のセンスを働かせる余地を残すべき。
○モデルは自分自身の正当性を証明できない。
○モデルは答えを"知っている"ことにしか適用してはいけない
○モデルからは"知っている"答えしか出てこない

ああ、まだまだ言い足りない。たとえば、

○モデルには適応範囲があり、それを超えて用いてはならない。
○モデルを自然と一致させる必要はないけれど、一致させようと努力することには意味がある。

なども重要だと思う。他にもありそう。ありゃ、でも、言い足りないと思っている割には、上に並べた重要事項には重なっているのもあるな。ま、いっか。

そもそもあんまりまとまりのないおばかブログなので、広い心を持って読んでいただければと思います。そして、ここの意味より雰囲気を感じ取ってもらえたら、と思います。

次の記事ではさらにほかのモデル達を紹介してみるつもり。

あと、こちらにちょっと追記があります。
タグ 記事:モデルとは はてなブックマーク - モデルとは何か (8) モデルについて心に留めておいてほしいいくつかのこと
2010.07.29 Thu l 温暖化論概論 l COM(9) TB(0) | top ▲

コメント

同じく美モデルさん希望(^^;
>モデルは答えを"知っている"ことにしか適用してはいけない
・・・それって、onkimoさんは、いわゆるベイズ推定/統計学は嫌いってこと?:-)
2010.07.31 Sat l 月・ライト -. URL l 編集
Re: 同じく美モデルさん希望(^^;
月・ライト様

コメントありがとうございます。

> ・・・それって、onkimoさんは、いわゆるベイズ推定/統計学は嫌いってこと?:-)

ベイズ推定/統計学を使ったことがないので答えにくいですが、特に嫌っているわけではありません。

ベイズ推定を使う人たちは、その対象がベイズ推定が使える対象だと"知っていて"、そして、ベイズ推定を部分とするモデルが正しいと"知っていて"使っているような気がしています。違うかな?
2010.07.31 Sat l onkimo -. URL l 編集
なんというか・・・
「答えを"知っている"」にちょっとひっかかったのです。よく読むと違うのですが。・・・無理やり、というか経験的にベイズ推定を使っているようです。:-)
2010.08.03 Tue l 月・ライト -. URL l 編集
Re: なんというか・・・
月・ライト 様

私が紛らわしい書き方をしているので、思ったことがあれば、間違いなど気にせず気が向いたら書き込んでください。消すことがあるのでそれだけご了承ください。

ベイズ推定については仕事で必要としたことがないので詳しく勉強していません。経済でよく出てくるのかな?面白い考え方だなとは思うのですが、よくわからない。
2010.08.03 Tue l onkimo -. URL l 編集
だいじょうぶです(^^;
私も勝手に書いてますw
また、「様」でなく「さん」でOKです。
統計は・・・必要になってすこしかじった程度です。
2010.08.12 Thu l 月・ライト mQop/nM.. URL l 編集
No title
ちょっと、これは痴呆が入ってきたのでは?と言っても言い過ぎともいえないくらいなので。
ここはヒトサマのブログであるので、場違いと思ったらいずれ消してくれて一向に構いません

http://takedanet.com/2010/08/post_91dc.html
>宇宙のことが私たちの生活に直接、影響があるものを二つあげます.

一つは「お化け、パワースポット、都市伝説」などで、私たちの宇宙もある場所では他の宇宙の影響を受ける場所があるかも知れません。

自分で分からないものを分かるように言ってはいけないので、「幽霊を信じますか?」と聞かれると「今の科学では分かりません」と答えています.

>これを難しい言葉では「エントロピーの増大」と言って、地球全体でおなじスピードで増えていきます.だから、誰かが節約すると、その分だけ誰かが浪費しないと地球全体の収支決算と会わないからです.

エントロピーというのはお金のようなものですから、1ヶ月に100万円を使わなければならない(貯金はできない)時には、1人が40万円なら、もう1人は60万円ということになります。

40万円使っていた節約家が30万円にすると、もう1人は無理矢理70万円使わなければならないということです。
2010.08.26 Thu l 消してもいいです -. URL l 編集
No title
知らない人(藁)のために解説すると、武田邦彦という人は今話題(藁^2)の阿久根市市長のブログでお気に入りに入ってる人です
2010.08.26 Thu l 消してもいいです -. URL l 編集
Re: No title
消してもいいです様

コメント、ありがとうございました。こちらで取り上げさせていただきました。
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100826/1282817605

後で武田さん記事のほうにこのコメントを移動するかもしれません。よろしくおねがいします。
2010.08.26 Thu l onkimo -. URL l 編集
No title
認知症はウィキペディア見てのとおり、日本語としておかしいのではないかと抵抗されています
現場で「看護婦」も当分消えないでしょう

(これこそ関係ないから消してカマワン)
2010.08.26 Thu l . -. URL l 編集

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